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2014年6月20日金曜日

除染基準?毎時0.23マイクロシーベルト引き上げをめぐる問題(その2)

 環境省の主催による「除染に関する有識者との意見交換会」615日、福島市にて開催されました。参加したのは、福島市・郡山市・伊達市・相馬市、および各市の有識者です。意見交換会の後半には、各市の市長や井上環境副大臣も参加しました。


(参加者名簿)



 この日、マスコミにはフルオープンで行われましたが、一般の傍聴は認められず、朝から会場に駆けつけていた数十人の方は締め出されていました。住民にもっとも影響のあることを話し合うのに、締め出しとはおかしな話しです。



■環境省の言い訳

 レポート①でお伝えしたように、この意見交換会の目的は、4市から提出されていた除染に関する要望をもとに、今後の除染のあり方について話し合うことです。約6時間におよぶ長い会議だったので、私個人がとくに印象に残った部分を抜粋してお伝えします。

 意見交換会の冒頭で環境省の担当職員が、震災から3年を経て、「ウェザリング効果や、自然減衰などによって、原発から半径80キロ圏内の空間線量率が平均約47%下がっている」ということを説明。

さらに、除染で下げる目標については、放射性物質汚染対処特措法の基本方針で定められているように、自然減衰も含めた目標として、平成238月からの2年間で「一般公衆の年間追加被ばく量を50%低減」「子どもの年間追加被ばく量を60%低減」という数値があり、現時点で、おおむね達成されているという見解を示しました。





 そのうえで、今問題となっている毎時0.23マイクロシーベルトという数値は、除染で下げる目標値ではなく、あくまでも「汚染状況重点調査地域」を定めるための目安であると強調。「毎時0.23マイクロシーベルト」という数字が、あたかも除染で下げる目標のように伝わってしまっていることについて、「環境省の説明が十分でなかった」として陳謝しました。

 つまり早い話が、「短期間での除染の目標は達成できてるから問題ないんだけども、僕たちの説明が悪くて、みんなに毎時0.23マイクロシーベルトが除染の目標値だと勘違いさせちゃってた。ごめんね」と言いたいらしいです。
 
 たしかに“0.23”という数字は、特措法にも除染のガイドラインにも示されていません。しかし、各自治体が定める除染計画表を見てみると、多くがこの“0.23”をひとつの目安として除染に取り組んできたことがわかります。0.23が除染の基準ではないというなら、もっと早くに訂正すべきであって、今この段階になって持ち出してくること自体、「除染が進まないから基準を緩めたい」という下心が見え見えです。


■除染の効果は、どれくらいあるのか?

 続いて各市から、除染の進捗状況と除染の効果について発表がありました。

現時点で、「除染が終了」しているのは、伊達市だけ。




とはいっても、伊達市の除染は、Cエリアと呼ばれる「年間1ミリシーベルトを超える地域」については、ホットスポットを一部除染するだけで、他の市のように面的な除染はしておらず、市民から不安の声が上がっていました。伊達市の仁志田市長は、昨年の市長選の際に、「Cエリアのフォローアップ除染をする」と公約し、当選しました。が、除染基準の引き上げが行われれば、おそらくフォローアップ除染はしないつもりでしょう。いやむしろ、除染しなくてすむように、環境省に対して「基準を見直してほしい」と要望しているのだと思います。

 除染の効果については、各市から、「放射線量の高いところほど、除染の効果があらわれやすかった」という発表がありました。




それはそうでしょう。元の放射線量が高いところほど、除染による低減率は大きくなります。

 このような現状を踏まえて、伊達市の職員が資料を示しながら言った言葉はこうです。

「だから伊達市は、いち早く除染をしたんです。熱が出たときは、タミフルを飲んで
とにかく熱を下げるでしょう?熱が37度くらいまで下がったら、あとは安静にしていれば治ります。除染も同じで、ある程度下がったら、あとは余計な治療はいらないんです」
 つまり、「ある程度下がったら、除染はいらない。これからやっても意味がない」ということ。正直、このへりくつには驚きました。 


(伊達市が提出した資料から抜粋)


 さらに伊達市の放射線アドバイザー・多田順一郎氏も、「毎時1.5マイクロシーベルトの場所を、0.8マイクロシーベルトにまで下げられたことは大きな意味がある」と述べて、これ以上の除染は効果的ではない、という見解を示していました。

 しかし、毎時1.5マイクロシーベルトの場所が0.8マイクロシーベルトにまで下がったとしても、果たしてそのような場所に安心して住めるでしょうか? せめて、毎時0.23マイクロシーベルト毎時くらいまでは下げてくれよ、と思うのが一般的な心情です。

 一方で、福島市などは、明確に「法の基本方針に基づき、年間1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)以下にすることを目標とする」と、資料を示しながら説明し、除染を過疎化させるために、今後の除染方法の提案などまで行っていました。


                    (福島市が提出した資料から抜粋)




 また福島市の除染アドバイザーを務める東北大学の石井慶造氏も、1軒、1軒どれだけ線量を下げられるかだ。今は、宅地の周囲20メートル範囲しか除染していないが、周囲300メートルくらいすればもっと下げられる」と述べるなど、市によって、除染への意識や取り組み方法が大きく違うことに、いまさらながら驚かされました。


■個人線量で被ばくを管理できるか
 そして大詰めの議題は、「個人の被ばく線量」についてです。この議題については、伊達市が独自に調査した、市民52,000人の個人積算線量計のデータを元に、「空間線量率が0.23以上でも年間1ミリ程度が多数。毎時0.6マイクロシーベルトであっても、年間1.21.3ミリシーベルト程度だ」として、かならずしも0.23にとらわれる必要がないことを示唆しました。


                  (伊達市が提出した資料から抜粋)
 これに対して、下記のような意見もありました。

0.23という数値は、目安として必要だ。かりに屋外にいる時間が長くなれば被ばくも多くなるわけで、外で子どもを遊ばせたいのに、ちゅうちょしている親も多い」
(東北大学・石井氏)

住民の間には、0.23という数値が浸透してしまっている。そこまで下げてほしいと思っている住民もいることはたしか」
(福島大学・西川氏)

「追加被ばく線量1ミリシーベルトは、内部被ばくも合わせた数値。それを忘れてはいけない」
(福島県立医科大学・宍戸氏)

0.23という数値が議論されているが、これまでの治験を持ち寄って、より除染を加速するための話し合いを行うことが、この会議の趣旨ではないのか」(郡山市・職員)


 しかし、この日、懇談会の進行役を務めていた崎田裕子氏(NPO法人持続可能な社会を作る元気ネット・理事)は、「安心だとは言えないまでも、毎時0.23マイクロシーベルトを超える地域に住んでいる人でも、個人線量計で1ミリを超えていないということを知らせることは大事」と、結論を誘導するような場面がたびたび見られました。


 これに対して、オブザーバーとして参加していた福島民報の早川氏からは、「これまでの話を聞いていると、この懇談会は0.23を引き上げるためのセレモニーじゃないかと思える。環境省は、今まで0.23という数値が一人歩きするのをほうっておいたのに、なぜ今になって問題視するのか。そこを本音で話し合わないといけないのではないか。このままいくと、空間線量は自然減衰しているし、個人線量で見ても1ミリ超えていないから、今後は個人線量で管理しよう、という流れになってしまう」と釘を刺す場面もありました。

 環境省はあくまでも、「0.23の意味がきちんと伝わってなかったことは申し訳ない。個人積算線量の数値がわかってきたので、その数値を踏まえて除染をどうするかを考えたい」といったことを述べるにとどまりました。


■驚くべき多田氏の発言

 そんななか、こんな暴言も飛び出しました。伊達市の放射線アドバイザーである多田氏の発言です。

 この除染事業は、安心ということは別として、たいへん巨額の国費を使っています。巨大な国費を使うというと田中角栄総理のときの日本列島改造論は悪名が高かったわけですが、日本列島改造は、その使った国費の結果、道路が残り、橋が残り、鉄道が残った。除染の場合は、安心は別として仮置き場しか残りません。つまり新しい価値の創出というのはなにもない。そこは考えておかなきゃいけない。この4市にお住まいの方の中には、そういう意識を持っておられる方は非常に少ないと思うが、たとえば飯舘村などに行くと、元通りにしてくれ、といまだにおっしゃる方がいます。これはやっぱり、もう元通りにはなりませんということを共通の認識にする必要があります。ゼロサムの話をしているかぎり、ゴールはありません。そうじゃなくて、条件闘争です。もう元通りになりませんから、どこに落としますか、と。つまり除染というのは、事故で受けたダメージを回復させる作業。でも決して0には戻りません。そうだとすると、本当は、もう除染ではなくて、プラスの要素を付加してくださいよ、というのをそろそろはじめなければなりません。マイナスの要素を減らすことばかりに逡巡しないで、なにかプラスの要素を、この福島県に付け加えるということを考えなければいけないだろうと思っております。先ほど言いましたように、除染を支えているのは国費です。原子力損害賠償機構が東電株の売却益で除染費用をつくる話もあるんですが、私はよくわかりませんが、東電株の発行残高は1兆円を切っています。それを全部売却しても除染費用はまかなえません。みなさん給与表を見ると、2.1%復興特別所得税というのを1月からとられているのはお気づきだと思います。あれは25年続きます。そういう形で、全国民が、税金で支えています。これは子どもや孫の代までの借金です。それとあとは電気代ですね。それによって、福島の復興を支えてくださっているということを福島にお住まいの方はやっぱりきっちり考えないといけない。そのお金を、有効に使うというのが支援される立場として、支援する側の人たちに対するマナーだと思っております。そこをなにがなんでも0.23マイクロシーベルト毎時を切らなければ帰れない、それを帰らない理由にするというようなことが起こってはならないと思います。たとえば、除染費用を節約できた自治体には交付金をつけるなど、なにか策を考えたほうがいい」


 もちろん、多田氏が述べるように除染が万能でないことは間違いありません。それこそ、毎時1.5マイクロシーベルトの場所を除染して毎時0.8マイクロシーベルト」までしか下がらないなら、それはムダな除染になってしまうでしょう。
 だって、そんな場所には、長期間安心して住めませんから。

だったら、今多くの方が住むことを余儀なくなれている毎時0.5マイクロシーベルト前後の場所を、全力で除染して、0.23マイクロシーベルト以下に下げるほうが建設的です。
(もちろん0.23でも高いです)

しかし、そこに住む以上は、できるかぎり線量を下げないといけませんし、プラスの付加価値をというなら、除染で線量を下げつつ、保養・移住などの権利を与えることも必要です。必要なのは、決してインフラの整備だけではないはずです。

 また、「0.23以下に下がらないから、帰らないなんて言ってはいけない」などという発言は、避難している方々を侮辱する発言であり、論外です。


■4市町の意見

 夕方からは、4市の市長と、井上環境副大臣も加わって、それぞれの意見を述べました。以下に、市長の主な発言を載せておきます。
 印象としては、本音は別として、福島市・郡山市は、効果的に除染を進めていきたいようでした。相馬市は、正直なところよくわかりません。
 基準を緩めることに賛同して、市民からクレームがくるのをおそれているようでもあります。やはり、ここでも伊達市が突出しており、仁志田市長以上に、伊達市の放射線アドバイザーである多田氏の暴言が目立ちました。


**********


<福島市、小林市長>

福島市としては、これまで環境省が定めた0.23マイクロシーベルト毎時という基準を基本にして除染をしてきた。
もし、今後国が基準を変えると言うなら別だが、そうでないかぎり、これまでどおりの除染計画に基づいて除染を進める。また、除染を加速化していきたい。除染の有効な手法があれば取り入れたいので、国としても柔軟に対応してほしい。国のほうでも、こういう方法が効果的だというのがあれば助言してほしい。すでに、3年間除染を進めてきて、データが各自治体から上がっているので、環境省はそれをもとに判断できるはず。

<郡山市、品川市長>

市民は、「原発事故前の状態に戻してほしいと思っている」という意見が出たが、自治体も同じ気持ちだ。それが可能かどうかは別として、元に戻すための努力は永遠にしていかないといけない。また、年間追加被ばく量1ミリシーベルトという数値や、0.23マイクロシーベルトという数値は、広く市民にも認識されているが、この数字がどういう算式によって出されたものなのかは、よく知らない。説明が不十分なので、一般市民も理解できるように、きちんと示してほしい。
また、算式や数値に関しては、日本だけでなく世界的に見ても納得できるものでなくてはならない。
政府は、基準を緩めたいんじゃないのか?と誤解されないように、しっかり対応してほしい。

<相馬市、立谷市長>

定められている基準は、そもそも不可解な方程式だ。
原発事故当初、国は年間被ばく量20ミリと言って、その後文科省は学校では1ミリシーベルトと言い、その後また長期的には年間1ミリシーベルトを目指すということになった。
そこで出てきたのが0.23という数字だ。にもかかわらず、0.23も本意ではないという。いったいどういうことなのか?
長期的の「長期」とは、いったいいつまでなのか?自治体によって、スタンダードがばらばらでは困る。しっかり基準を定めてほしい。

<伊達市、仁志田市長>

国が「もう、元には戻らない(原発事故前)」ということを認めるべきだという意見が、伊達市のアドバイザー、多田から出たが、それはすなわち被ばくしているという現実を認めるべきだということだ。市民も執行者も、被ばくしているという現実を認めるべきだ。
必要な除染はするが、不必要な除染はしない。現実的ではない数値を決めるから市民は余計に不安になるんだ。
食品にしても、なぜ今100ベクレルなのか?世界には、基準を1000ベクレルにしている国もあるのに。そういうことを国が言わないと、伊達市がいくらがんばってもだめ。他の市は除染をしているのになぜしないんだ、と言われてしまう。

<環境省井上副大臣>

非常に有意義な意見をいただいた。数字の意味などが明確に伝わっていないということも含め、とりまとめて1か月以内には報告させてもらう。また、現状、個人線量計では1ミリシーベルトを超えるケースが少ないということも、合わせてアナウンスしたい。国が責任を持ってやらないといけない。


■被ばくを自己責任にしてはならない

 こうした動きに対して、東京で原発避難者などの訴訟を行っている「とすねっと」の山川幸生弁護士は、「そもそも基本的には、空間線量率のモニタリングから、行政の責任で“事前”に防護することが必要で、それを個人の責任で“事後”に防護できていたかどうかを検証する、というのは住民を放射線から保護することにつながらない。
 計測した結果、『超えてしまっていた』ではおそい。放射線防護の立場にたって考えるなら、空間線量率を用いて『この数値なら絶対に1ミリを超えないだろう』という安全サイドにたって考えるべきだ。個人線量計での管理は、被ばく環境で働く人が、その敷地内で厳重に測定しているから意味があるのであって、一般人が日々の生活で24時間正しく測定することは困難である。個人線量で管理することは、被ばくを自己責任にしてしまうことにつながる」として、警鐘を鳴らしています。


 おそらく環境省は、年間追加被ばく線量1ミリシーベルトや、毎時0.23マイクロシーベルトの数値を変えることしないと思いますが、個人線量に基づいた除染の指針を発表することになりそうです。


 そもそも、これまで除染の方法や目標が、自治体ごとにバラバラだったということもおかしいのです。
 環境省は自治体に丸投げせず、国の責任において、基準をゆるめることなく、安全側にたった除染の目標値を示してほしいと思います。   (ママレボ@和田)




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2014年6月18日水曜日

除染基準?毎時0.23マイクロシーベルト引き上げをめぐる問題(その1)

 先日から、除染の基準である「毎時0.23マイクロシーベルト」を引き上げる、という報道が何度か流れています。
 去る615日には、環境省と、福島市・郡山市・伊達市・相馬市の4市が集まり、福島市内で「除染に関する有識者との意見交換会」が開かれました。

 この意見交換会のなかでは、除染基準の見直しに加え、これまでの除染結果や、今後の除染のあり方などが話し合われました。
 この問題に関連するレポートを、2度にわけてお届けしたいと思います。
**********

 レポートの前に、「毎時0.23マイクロシーベルト」という数字が何を意味しているかについて簡単に説明しておきます。
 一般人の「追加被ばく線量」は、年間1ミリシーベルトと定められています。
しかし、原発事故後、多くの放射性物質がまき散らされ、福島をはじめ、北関東や首都圏までも、年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトを超える地域が出現しました。

 環境省は、年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトを超える地域を指定するために、毎時0.23マイクロシーベルトを超える地域を、「汚染状況重点調査地域」として指定しました。

毎時0.23マイクロシーベルトの計算式はこちら)

 今現在でも、福島県をはじめ、岩手県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県などの自治体が「汚染状況重点調査地域」に指定されています。

「汚染状況重点調査地域」は、モニタリングや除染などを行い、できるだけ被ばくを低減するよう対策をとることが求められています。そのため「汚染状況重点調査地域」に指定された自治体は、毎時0.23マイクロシーベルトを下回ることを目標に、除染などを行ってきたという経緯があります。

■ 0.23マイクロシーベルト毎時を引き上げる?

 ところが66日に、「毎時0.23マイクロシーベルトのおよそ2倍へ 国が除染目標値の引き上げを検討」という報道がありました。

 福島市・郡山市・伊達市・相馬市が、環境省に毎時0.23マイクロシーベルトの引き上げを求めているというのです。
 そこで私は、この4市に電話取材してみました。 以下がその回答の要旨です。

                      *********

(伊達市・放射能対策課 職員)

 そもそも毎時0.23マイクロシーベルトという基準は、除染で達成すべき基準ではなく「汚染状況重点調査地域」を決めるための基準だ。除染の目標については、放射性物質汚染対処特措法に、低減の目標が明記されており、その低減目標はすでに達成できている。
 伊達市ではガラスバッチを市民ひとりひとりに1年間付けていただいた結果、毎時0.40.5マイクロシーベルトくらいでも年間追加被ばく量は1ミリシーベルトを超えないことがわかった。だから環境省に、数値の見直しを求めている。


(郡山市・原子力災害対策課 職員)

毎時0.23マイクロシーベルトという数値を見直してほしいとは要望していない。今まで除染を進めてきて、いきなり除染はしませんよということは言えない。ただ、毎時0.23マイクロシーベルトという数字が、除染の基準のように考えられている傾向があるので、そうではないということは、はっきりしたほうがよい。そのあたりの認識の整理と、震災から3年経過して、除染作業の結果や、積算線量計の結果などをふまえて、今後の除染をどうしたらいいかという話し合いを進めたい。


(相馬市・放射能対策室職員)

毎時0.23マイクロシーベルトという基準を変えてほしいとは思っていない。そもそも0.23という数字は、除染のガイドラインには書かれていない。放射性物質汚染対処特措法には、子どもがいるところは60%以上の低減を目指すということになっているので、それを目標にやっているという状況だ。また、子どもたちにはガラスバッチを付けていただいて、年間追加被ばく線量1ミリシーベルトを切っているかどうかや、実際どれくらい被ばくしているかなどを調査させていただきながら、適宜、手当をしたい。

(福島市)

数値引き上げの要望はしていない。詳しくは、福島環境再生事務所のほうに問い合わせてほしい。

(環境省)

数値の引き上げなどは検討はしていない。毎時0.23マイクロシーベルトという値が除染の目標であると報道されたり、除染のガイドラインに載っているなどと書かれたりしているのだが、ガイドラインにそういうことは書かれていないし、毎時0.23マイクロシーベルトは「汚染状況重点調査地域」を指定する際の基準なので、それを今の段階で変更するということは考えていない。たしかに伊達市の市長などが、ときおり、この数値をどうにかしたほうがいいんじゃないかというような話をされている。それは伊達市が独自で個人の積算線量をはかって、それをふまえて話をしている。だから、おそらく情報の元というのは伊達市長の発言が多いのかなと思う。その他の市からも、個人の追加被ばく線量に着目してほしいだとか、そういった要望はいただいているので、それをふまえて副大臣のほうから、勉強会を設置して検討していく予定になっている。

(福島環境再生事務所)

環境省は毎時0.23マイクロシーベルトという基準を引き上げるという検討はしていない。なおかつ毎時0.23マイクロシーベルトという数値は、除染の目標ではなく、汚染状況重点調査地域という広いエリアを特定するための基準だ。それを変えるということはしない。
これまで目標として示してきたのは、放射性物質汚染対処特措法の基本方針に書かれているように、自然減衰も含めた目標として、平成238月からの2年間で「一般公衆の年間追加被ばく量を50%低減させる」「子どもの年間追加被ばく量を60%低減させる」という目標があり、現時点でそれぞれ約64%、65%低減している。

414日付けで、環境省宛に出ている4市からの要望は、以下の通り。共通する事項としては、毎時0.23マイクロシーベルトという数値が除染の基準というような認識で報道されているので、数値の意味をきちんと伝えてほしいということだ。


          4月14日付けで、4市から環境省に対して出されている要望
                           (福島環境再生事務所にヒアリング)
                      
 → 福島市から出ている要望
1.住宅除染を加速化させるための除染手法を確立してほしい
2
.個人被ばく線量や物理的減衰等を踏まえた除染作業の平準化目標を策定すること
3.除染から環境回復、復興への加速化をうながす方策を検討すること
4.独自の除染の取り組みが比較的早期にはじまり、治験やさまざまなデータを有する各自治体を中心とした勉強会を開催し、上記1.2を強力に推進すること。

→ 郡山市から出ている要望

1.除染を早期に完了させるための除染手法の標準化をはかること。
2.個人被ばく線量や物理的減衰等をふまえた除染作業の数値目標を策定すること。
3.除染から復興への加速化をうながす方策をきちんとすること。
4.治験やさまざまなデータを有する各自治体の意見を聞きながら、上記1~3を強力に推進すること。
5.除染業務委託基準を緩和してほしい。
6.個人が実施した除染費用の賠償を東京電力に強く申し入れてほしい。

→ 相馬市から出ている要望

1.平成235月に文部科学省が学校において、児童/生徒等が受ける線量について年間1ミリシーベルト以下を目指すことを発表しているが、児童・生徒等の生活全体で受ける線量の目標値について明示すること。
2.最新の治験に基づいて、年間追加被ばく線量1ミリシーベルトに対応する空間線量の推計、計算方法を考察すること。
3.長期的な目標として、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となることという場合の長期的を具体的に提示すること。

→伊達市から出ている要望

1.個人被ばく線量や物理的減衰等を踏まえ、追加被ばく線量を基本とした合理的な除染作業の数値目標を策定してほしい。
2.除染から復興への加速化をうながす方策を検討すること。
3.治験やさまざまなデータを有する各自治体の意見を聞きながら、具体的な対策を講じること。



                      *********


■伊達市が強く要望…?

 まとめますと、電話取材によって明確になったことは、以下の点です。

()そもそも、毎時0.23マイクロシーベルトという基準は、除染で下げる目標の数値ではなく、「汚染状況重点調査地域」を決めるための数字である。

()放射性物質汚染対処特措法の基本方針には、自然減衰も含めた目標として、平成238月からの2年間で「一般公衆の年間追加被ばく量を50%低減させる」「子どもの年間追加被ばく量を60%低減させる」と示されており、これはすでに達成できている。

(3)はっきりと数値の引き上げを求めているのは伊達市だけだが、他の市からも個人の追加被ばく線量に着目した除染基準を示してほしいという要望は出ている。

とくに伊達市が、毎時0.23マイクロシーベルトという基準を上げたがっている、という印象でしたが、他の市も、除染をしても毎時0.23マイクロシーベルトに下がらない場所があり、頭を抱えているのだろうと感じました。
 

ちなみに、「だて復興・再生ニュース」では、『年間1ミリシーベルト=0.23μSv/hの呪縛というタイトルで大々的に問題視しています。







次回は、615日に開かれた「除染に関する有識者との意見交換会」のレポートをお届けします。実際に意見交換会を傍聴してみて、各市の意見がはっきりと見えてきました。


ママレボ@和田



除染基準?毎時0.23マイクロシーベルト引き上げをめぐる問題(その2)


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2014年6月13日金曜日

第3回 甲状腺評価部会 傍聴レポート

 遅くなりましたが、6月10日に福島市で開催された「第3回甲状腺検査評価部会」の傍聴レポートをアップします。
 今回の部会では、とっても重大な下記2点が明らかなになりました。

1.福島県で、すでに甲状腺がんで手術しているお子さんたち51人については、「リンパ節転移」「声のかれ」などが見られた。(つまり、これまで甲状腺がんが見つかったのは「スクリーニング効果」だと言われていたが、そうではない可能性もあるということ)

2.手術した患者さんの臨床データは、福島県立医大の独占状態で、委員にも共有されていないということ。

************

 「甲状腺検査評価部会」の傍聴レポートをお届けするのは初めてなので、そもそも「甲状腺検査評価部会」とはなんなのか――、という基本的なところからご説明しておきます。

「甲状腺検査評価部会」というのは、現在、福島県で行われている「県民健康調査」のなかで、もっとも関心が集まっている“小児甲状腺がん”の問題にのみ特化して話し合うために開かれる専門家会議のことです。

いつも傍聴レポートをお届けしている「県民健康調査検討委員会」が、「甲状腺検査評価部会」の本会議にあたり、検討委員会の委員の多くが、この甲状腺検査評価部会にも参加しています。


■甲状腺がんの手術は“過剰診療”なのか?

 前回の甲状腺評価部会では、現在福島県で行われている小児甲状腺がんの手術などが “過剰診療” にあたるのではないかという点について、疫学の専門家である渋谷健司氏(東京大学大学院・医学系研究科教授)が疑問を投げかけ、激しい議論が起こりました。

 3回目も前回に引き続いて渋谷氏が、県民健康調査で甲状腺検査を担当している鈴木眞一氏(福島県立医科大学・教授)に対して、「手術をしなくても、将来悪さをしないがんまで切除しているのではないか」と疑問を投げかけ、過剰診療の可能性があることを厳しく追及しました。

 そもそも私たちにとっては「過剰診療」という言葉自体が耳慣れないのですが、過剰診療とは、処置をしなくても健康や寿命に大きな影響がないのに、わざわざ手術などの治療をして、患者に負担をかけることを意味します。
 渋谷氏いわく、韓国やアメリカなどでは、自覚症状のない患者に対して、病院で気軽に甲状腺エコー検査をするようになってから、多くの甲状腺がん患者が見つかっており、手術をしなくても寿命がまっとうできるような悪性度の低いがんであるにもかかわらず、手術で切除する例がふえて問題になっているとのこと。

 もともと甲状腺がんは、他のがんとちがって大きくなったり、転移したりしづらいということから、むしろ切除することによるQOLの低下(傷が残るとかホルモン剤を飲み続けなくてはならないなど)を問題視するむきが強いそうです。

 しかし福島県では、これまで調査した事故当時18歳以下の子ども約368000人のうち、悪性ないし悪性疑いが90人見つかっており、うち51人がすでに手術をすませています。
 渋谷氏は、細胞診をしたり、手術をしたりした90人について、「過剰診療であったのではないか」と疑問を投げかけているのです。


すでにリンパ節転移や、声のかすれがあった

 これに対して鈴木氏は、むきになって過剰診療であることを否定しました。鈴木氏の発言の趣旨は、以下のような内容でした。

「本当に必要な人だけ細胞診をしている。悪性ないし悪性疑いが出ても、通常の臨床レベルで過剰診療といわれるものまで、あえて治療しているということはない。実際は、ほとんどがリンパ節転移が見つかったり声がかすれたりしている。そういう条件があるから診療をしているので、決して過剰にはならない。通常の診療でも、通常、治療を勧められる範囲だ。子どもだからといって、心配させないためにとらなくていいものをとっているわけではない」

 この発言によって推察されることは、以下の2点です。

1)これまで福島県立医大は、すでに見つかっている小児甲状腺がんについて、「スクリーニング効果」によるものだ、という見解を示していた。しかし
、検査をしなくても近いうちに自覚症状が現れたのではないか。つまり「スクリーニング効果」ではない可能性があるのではないか。

2)チェルノブイリ原発事故の影響で甲状腺がんになった子どもたちの多くも、早い段階でリンパ節転移が見られた。
 つまり、放射線被ばくによる影響が疑われるのではないか。

こうした鈴木氏の発言は、さらにデータなどの検証が必要ではありますが、いままでの県立医大や検討委員会の見解を覆す重大な発言です。


■データ開示をこばむ、県立医大

 
「過剰診療ではありません」と繰り返す鈴木氏に対して渋谷氏が、「ならば、個人情報に抵触しない範囲で臨床データを公表してもらわないと、過剰診療ではないかという疑問がぬぐえない」といった趣旨の発言をしたところ、鈴木氏は、「個人のデータについてはお話しできない。論文で公表する」という内容の返答をしました。

 これに対して、春日文子委員(日本学術会議 副会長)からは、「データは誰のものなんでしょうか?」という問いかけがありました。
 また、清水一雄部会長(日本医科大学 名誉教授)は記者会見で、「臨床データについては、我々も知りたいし、知る義務がある。県も報告する義務がある」とコメントし、検討委員会のほうでもデータ開示を働きかけていくつもりであると述べました。

 しかし、このように重要なことを情報共有できていないまま「検討委員会」を開いていることに驚いてしまいます。
 また、鈴木氏は、ことあるごとに「県民健康調査は、県民の健康を見守るために行っている」と述べているわりには、真実を発表するのは、“論文”だと言っています。
おそらく、先に海外に発表して、県民が知らされるのはずっと後でしょう。それのどこか「見守り」なんでしょうか。

 とにかく、この日の甲状腺部会では、データ開示を求めていくことと、さらに被ばくとの関係性も追求していくことが確認され、大きく一歩前進した形になりました。


 しかしながら、私は心の中で、「スクリーニング効果ならいいな」という淡い期待を抱いていたので、その可能性が限りなく少なくなってしまったことに関して大きなショックを感じました。
 1日も早く、できるかぎりの情報を開示し、被ばくとの因果関係を究明し、真の安心・安全を提供していただきたいと思います。


 甲状腺評価部会の動画は、OurPlant-TVさんがまとめてくださっていますので、どうぞご覧ください。

リンパ節転移が多数~福島県の甲状腺がん




  ママレボ@和田

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2014年6月11日水曜日

【避難者住宅支援問題①】キビタキの会 院内集会―避難者の発言

6月9日、「キビタキの会(関東に住む原発事故避難者の団体)と、復興庁、内閣府、国交省との懇談会が開かれ、省庁関係者9名と、避難者、支援者が集まりました。

そこで聞かれた、避難者の切実な訴えを、掲載します(一部、個人情報がわかるところは編集しています)。
詳細を知れば知るほど、避難住宅の長期的な無償提供が、重要であること、また、1年で更新されることがどれだけ、生活に不安定さを与えるかが分かります。

5月28日に、平成28年3月までの応急仮設住宅の供与期間延長が発表されていますが、それだけではまったく、不十分です。提供期間の不足だけではなく、通知の不親切さも改善されなくてはなりません。

繰り返しになりますが、いま、改めて

・応急仮設住宅の「長期」の延長
・住み替えの許可
・新規受け入れの再開

が必要であることを実感します。

このことが、ひとりでも多くの人に伝わってほしいと思います。


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【原発から25~6キロ地点から関東に避難中の女性(40代)の方】

家族は、両親、娘の4人。娘は県外に進学していて、私と両親は福島県に住んでいた。
父は認知症になっていて、どこの避難所にいっても迷惑をかけるだろう、と思い、しかたなく、いったん、関東の親戚のところに避難した。

避難してから、父は認知症がすすんで、数か月後に自分のことも家族のことも認識できなくなってしまった。仕方なく、老人ホームに入ることになった。本当は、福島県に帰って老人ホームに・・・と思った。でも、施設は200~400人待ちと言われて、帰れない。
避難解除になってからは、福島県と、現在の避難先を行ったり来たりの生活になった。母は生まれも育ちも福島県。「帰りたい」一心だった。福島県内にアパートをみつけ、そこに連れて帰り、1人で生活していたが、ある日、孤独死してしまった。

娘は社会人になった。「解除したから帰りなさい」と言われているが、福島の地元ではさまざまな噂がある。最近の話題になる話は、町の雰囲気のこと。とても治安が悪いと。女性の夜の一人歩きはできない。
帰れば仕事はあるようだが、娘のことを考えると、不安がある。放射線だけではなく、治安の問題を考えると「帰ろう」という説得ができない。

事故直後、両親を親戚のところに預け、私は知人宅に避難したことによって、親戚との間にも溝ができた。現在、知人宅に3年も居候しているのも、申し訳ない。本当は娘と同居したいが、東京電力からの賠償はおととし8月で打ち切られているので、二人で住める目途はたたない。いま部屋をかりたくても、保証人もいないし、仕事もない。娘と一緒に暮らしたいだけなのに。
精神状態も不安定で、これまで、こういう場に出席できなかった。やっと体調も戻りつつあり、前向きに生活したいと思ってやっと出てきた。

私は、人様に迷惑をかけないように、かけないように、親戚や知人に頼って、きたが、それが裏目に出て、今になって本当に困っている。
お願いだから、助けてほしい。

国交省担当:「娘さんに部屋を借りてもらうのは無理?」

都営住宅に入っていたら、無料だったはず。いまから助けてほしいと思っている。

国交省担当:「私の管轄ではないが、生活保護ならある。住宅制度はないので申し訳ない」

本当はこんなことを言いたくないが、20キロ圏内は手厚い補償がいただけて、待遇がいい。私たちには何もない。この年になって、東京に住むとは思わなかった。母が孤独死をすることもなかった。

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【福島県浜通りから関東に避難中の女性(30代)の方】

私と主人と当時7か月の娘と、母と4人で生活していた。とりあえず、娘を守るために全員で、関東の兄の家にきた。だが、ずっとお世話になっているわけにもいかないので、公営住宅に2011年4月から入った。

大人3人の子ども1人で1LDKくらいの広さのところに入った。狭くて生活に支障がある、と当初から問い合わせをしていた。しかし、どこも、解決策を提示してくれなかった。「1人あたり1.5畳あればいい」とすら言われた。

冷蔵庫もキッチンに入れられなくて、普通の部屋に入れてある。
収納もなく、布団を入れられない。部屋の中に布団がたたんで置いてあって、窮屈な状態。その中で生活している。

もともと、震災のストレスがあるのに、部屋が狭いストレスもあり、母親は70歳を超えているが、1人で、福島県のほうに帰ってしまった。住みたい地域には、良い部屋はあまっていなくて、母の部屋は、学生向けのユニットバスの4畳半一間の部屋になってしまった。

復興住宅の応募もしたが、前回も今回も外れてしまった。ポイント制で、ポイントの高い順に入居できるシステムになっている。避難指示区域内の人が優先的に入るから、母のように、賃貸を借りた状態で応募していると、最初にはじかれてしまう。今回も落ちると思う。しかも、「三回目はもうない」と言われた。

三回目がないということは、今の住みたくない住居に、住み続けろということになる。もともと、母とは一緒に住んでいたからもう一度、一緒に住みたいけれど、原発事故が収束していないから、子どもを連れて福島県に戻れない。
逆に、こちらに呼ぶといっても部屋が狭くて呼べない。どうしていいのかわからない状態。

70を過ぎた母を放っておけない。
先が見えなくて不安を感じるので、一年ごとではなく、長期的に、具体的に延長期間を言ってほしい。私だけではなく、たくさんの人が部屋の間取りで困っていると思う。一度だけでもいいので、住み替えの相談窓口を開いてもらって、要望に応えられるのであれば、お話を聞いてほしい。
3年で状況が変わっている人もいるし、相談にのってほしい。

内閣府担当:それぞれ事情が違うということがわかった。お住まいの自治体の公営住宅がどういう状況なのか把握していないが、どうしても入居したいのは、避難者だけではないというところもある。その中で限られた公営住宅の活用を各都道府県で考えている。

期間については、応急仮設住宅ではなく、「本当の自分の家(と言えるべき場所)」に早く住んでもらいたい。
せめぎあいの中で、応急仮設ではなく本来の住宅に住んでいく努力―――災害救助法で長く、ということではなく、どういう風に確保していくのが大事かな、と思う。


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【福島県から娘と関東に避難中の女性(30代)の方

いまの都営住宅は6か所目の避難。娘は原発当初10か月。
私の住んでいた場所は、原発から45キロだった。「30キロ圏内は避難してください、ただちに影響ありません」と言われていた。
でも、30キロと45キロは壁があるわけではない。「どこが安全なんだろう」と思った。もう危ないから逃げないと、と思い、主人と一緒に福島を出た。

子どもは選択することができない。その選択をするのは親。「子どもを守りたい」という気持ちだけで、避難生活を、続けている。 まずは子どもの健康が第一だと思っている。

まだ、福島県は帰ろうと思える環境ではない。今でもメディアの報道を聞くと、「実はこうでした」というような後出し情報がある。そこに、小さな子どもを帰って子どもが健康に育てるのか、ということに疑問がある。

本当は福島に帰りたい気持ちは強いけれど、安全な環境で子育てをしたい、という思いのほうがより、強い。住宅の無償で長期的な提供というのは、避難者にとって、とても大きな問題。

我が家の場合、主人が福島県に残って二重生活をしているので、家賃を払い、生活費を引いたら、給料はなくなってしまう。高速料金は無料だけど、ガソリン代がかかる。水光熱費は二重にかかっているし、食事も男性一人暮らしだと、自炊できなくて、買ってくるので、割高になる。いまは貯金を切り崩して生活をしている。

一時、私もアルバイトをしていたけれど、負担がかかり、続けるのが難しくなってしまった。
貯金を切り崩していて、避難生活は、あと8か月が限界。そのあと、どうしていこうかなと思っている。そこで、住宅も打ち切られ、出ていきなさい、と言われても、どうしようもない。
東京は、主人と行き来ができるから選んだが、本当はもっと遠くに行きたい。東京は家賃がすごく高い。住宅が打ち切られたら、「帰る」という選択をしなくてはならない。

この際、主人は、20年近く続けた仕事をやめようか、と考えている。家族の話し合いをしながら、いま避難生活を続けている。

いつも、疑問に思うことがある。復興公営住宅をどうして福島県に建てているのか。
福島県は安全じゃないかもしれない福島県に、あえて戻そうとするのか。
もう一つは、「福島県と相談して」という言葉。住宅の延長についてもそうだが、福島県と各自治体と相談して、と言っているけれど、本来、これは国の問題だと思う。

どうして国から「こうしましょう」という方針を出してくれないのか。災害救助法で、延長に対しては1年ずつということが決まっているのは聞いている。ただ、方針を出すことは可能だということは聞いている。
「じゃあこうしていきましょう」「必要な人にはこれをしていきましょう」と、どうしてならないのか。

新規の受け入れも、平成24年12月で打ち切られているが、このような区切りをつけてしまったら新たに出てくる問題も大きい。


例えば、これから先、「今出たい」「やっぱりもう一度出たい」と思う人もいるかもしれないが、制度がないから出られなくなってしまう。
「避難をしたい」という思いを持っている人は、制度がないと、思い切って出られないと思うので、それをふまえて、どうか、より安全に安心に避難できるしくみを出してほしいと思う。


(キビタキの会 院内集会(2)に続く)

ママレボ@伊藤

2014年6月2日月曜日

第15回 県民健康調査検討委員会 傍聴レポート


 こちらも大変遅くなりましたが、5月19日に開かれた「第15回福島県民健康調査検討委員会」の傍聴レポートをお届けします。
 といっても、この日私は体調不良で会場にうかがえなかったため、自宅でインターネット配信を見てのレポートです。すでに、あちこちで記事があがっていますので、詳細はそちらをご覧いただくとして……、私なりに気になった点について雑感を記しておきます。

  「ベースライン調査」とは、どういうことか 

すでに報道されているように、小児甲状腺がんの人数は、調査した約
368000人のうち、悪性ないし悪性疑いが90にのぼっています。




 福島県での小児甲状腺がん検査は平成23年6月からスタート。事故当時18歳以下だった県内の子どものエコー検査が一巡するまでを「ベースライン調査」と位置づけていました。今年3月末で、会津地方の二次検査を少し残し、一巡目の検査が終了。4月2日からは、二巡目の検査を「本調査」と位置づけ、ふたたび避難区域の子どもたちから順に、甲状腺エコー検査を開始しています。

 なぜ、一巡目の調査を「ベースライン調査」、二巡目からの調査を「本調査」と呼び分けているのか――。

 福島県と検討委員会がこれまで示してきた理由は、「チェルノブイリ原発事故のときは、子どもの甲状腺がんが多発し始めたのが事故から4〜5年以降だった」ことから、事故直後からはじめた一巡目の検査では、被ばくの影響が出るとは考えられないため、子どもの基本的な甲状腺の状態を見るための「ベースライン」とする、というものです。


■被ばくの影響も除外しない、と明言

 しかし、悪性ないし悪性疑いの数がふえていくにつれ、検討委員のなかからも「ベースライン」という言葉の使い方に疑問が投げかけられ始めています。

 これまで検討委員会の公式会見は、「甲状腺がんが多く見つかっているのは、エコー検査による“スクリーニング効果”だ」とし、「福島県では、チェルノブイリで甲状腺がんが多かった0〜5歳の子どもには見つかっていないので、被ばくの影響とは考えにくい」というものでした。

 現在も、この公式会見は変わっていないのですが、委員のなかからは、この姿勢を疑問視する人も出てきています。

 座長代行を務めている清水修二氏(福島大学・人文社会学群経済経営学類・特任教授)は、この日の検討委員会のなかで、「チェルノブイリでは4〜5年たってから子どもの甲状腺がんがふえ始めたからといって、現段階で見つかっている福島の甲状腺がんが被ばくの影響とは考えにくい、と結論づけるのはいかがなものか。本格調査はこれからだと言われると、いまの調査は、最初から被ばくの影響がないと結論づけられているということになる。チェルノブイリのデータを参考にするのはよいが、判断の根拠にはしないというふうに慎重にすべきだ」と発言。
 これに対して、甲状腺検査を担当している鈴木眞一氏(福島県立医大)は、「(福島県民は)おおむね被ばく線量は高くないということはわかっているが、個人個人の線量は正確にわかっていない。今後も甲状腺検査を続けていき、その過程で明らかになった被ばくの情報と突合して、今後評価をすることになる」と述べ、個人の被ばく線量がほとんど明らかになっていない現状において、「被ばくの影響」を排除しているわけではないという趣旨の発言をしました。

 また、星座長も「重要な指摘だ」だと述べたうえで、「今年の8月には、二次検査を含めた一巡目の診調査結果が出そろう。そうなれば、これまでのようにベースラインとしてではなく、被ばく線量や地域差なども分析し、検討委員会として改めて評価する必要がある」と、発言。「現段階では、被ばくの影響は考えにくい」という見解は保持しながらも、「ベースライン」という意味合いを、改めて考えなおす必要があることを示唆しました。

 こうした委員たちの発言の変化は、県民健康調査がいつまでたっても県民の信頼を得られないことに加え、スクリーニング効果を差し引いても、予想以上に甲状腺がんが見つかっていることに対する危惧の表れではないでしょうか。


  スクリーニング効果の根拠が崩れた

 さらに記者会見では、毎日新聞の日野記者や、フリーランスの木野記者が、福島県立医大側が「スクリーニング効果」の根拠としていたロシアの「イワノフ論文」について厳しく追及。

「イワノフ論文は、福島県のケースとは年齢層も被ばく線量も大きく異なる。これではスクリーニング効果の根拠にならないのではないか」と問うと、委員の高村昇氏(長崎大学・原爆後障害医療研究所)は、「なんの論文を指しているのかわからない」と、とぼけ、異なる論文の説明をし始める場面がありました。
 さらに木野記者が、「高村さんが以前示していた2012年のイワノフ論文のことですよ!」と詰め寄ると、最終的には鈴木氏が、「イワノフ論文を引用することで、放射線の影響がそれほどないところでも、スクリーニング効果はあるということを申し上げたかっただけだ」と述べ、小児の甲状腺エコー検査に関しては、スクリーニング効果があるか否かを示す明確な論文は存在しないことを認めた形となりました。

 このような、「ごまかし」とも受け取られかねない中途半端な説明が、より一層、県民の不信を招いているのだと言わざるをえません。

 そして、ひとつ付け加えておくと、チェルノブイリでは、小児甲状腺がんの発症が事故から4〜5年たってからだった、とさかんに言われていますが、チェルノブイリでエコー検査がはじまったのは、事故から4年目以降からなのです。もし、福島県のように事故直後からエコー検査をしていたら、福島と同様に微小がんが多く見つかった可能性もあります。


■被ばくの影響を、どう「評価」するのか?

 また今後、検討委員会としてどのように被ばくの影響を“評価”するのかという点についても議題にのぼり、ここでも清水座長代行が思い切った発言をしています。

 記者会見の場で、多くの記者から「被ばくと甲状腺がんの因果関係」について質問が出たことを受け、清水座長代行は「検討委員会のなかでも、ちゃんと議論をすべきだ。我々は、ぶっつけ本番でここに座っている。数か月に一度集まって検討会を開いているだけでは、十分な評価などできない。できれば非公開で議論したい」と述べ、いずれ検討委員会として、別途協議の時間をとる必要性を示唆。これを受けて星委員長も、「その必要性は感じている。その時期が、もう迫っているのだと思う」とし、8月に一巡目の検査結果がすべて出そろうのを待って、協議する可能性を示しました。

 現時点での被ばく線量の評価は、わずか1080人の子ども(いわき・川俣・飯館)の実測値と、環境モニタリング等のシミュレーション、行動調査などからの予測といった不確実性の高いものしかなく、難航することが予測されています。また、頼みの綱となっている「行動調査」に関しても、わずか25,9という低い提出率にとどまっており、被ばくと甲状腺がんの因果関係追及は絶望的な状況です。

 一方、UNSCEAR(国連科学委員会)は、「福島原子力発電所から放出された放射性物質の量は、チェルノブイリ事故の約10分の1である」などとして、「甲状腺がんを含め、白血病や、その他の固形がんについても増加は予想されない」と、報告書のなかで早々に結論づけています。

 しかし、チェルノブイリと比べ、日本は人口密度が高いことや、避難・移住せずに低線量被ばく下で長期に生活していかざるをえないことなどから、専門家からも「過小評価だ」との批判が出ています。

 初期被ばくの推計に関する判断材料が少ないなか、事故当時、日本に滞在していた外国人の被ばく線量を測定したデータがあることが、この日の検討委員会で明らかになりました。
 記者会見で、おしどりマコさんから「海外向けのシンポジウムで、放射線医学総合研究所の栗原氏が『事故当時日本に滞在していた外国人のホールボディカウンターのデータがある』と言っていた。それはどうなったのか?」と質問したことから判明。

 この質問に対し環境省の桐生康生参事官は、「時期的にばらついていて、甲状腺のヨウ素が検出できていないものもあるが、フランスなどからそういったデータは入手している」と存在を認めました。

 そんな貴重なデータがあるなら、なぜ早く提出しないのか、疑問は募るばかりです。

 検討委員会の委員の発言が、当初の強気から少しずつ“弱気”になってきているように感じますが、8月に発表されるであろう「ベースライン調査」の評価結果を待ちたいと思います。

 また、小児甲状腺がんだけでなく、血液検査の結果についてや、福島県内で自殺者がふえていることなど、ほかにも気になる発表がありましたが、これらについては雑誌「ママレボ」内で改めて検証することにします。



 ママレボ@和田
15回福島県民健康調査検討委員会の動画と資料はこちら

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