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2015年4月4日土曜日

郡山測定レポート(7)


2015年4月1日、郡山市薫小学校の通学路を測定しました。
同行したAさん(6歳と4歳のお子さんがいるお母さん)は、一時期、福島県外に自主避難をしていました。6歳のお子さんが4月から小学校に入学するため、放射線量の高いところを確認しておきたい、ということでした。

薫小学校の周辺は、原発事故当時も、放射線量が高いと言われていた地域。学校や公民館、公園などの除染は終わっていましたが、その後、どうなっているのか――ホットスポットファインダーで、細かく測定しました。

校門には除染前の数値として「4.5μSv/h」と書かれています。

郡山市薫小学校の校門


おそらく、測定したのは2011年だとは思いますが、例えば、2011年7月、南相馬市の特定避難勧奨地点に指定された基準値は、3.0μSv/h以上/子ども・妊婦の基準では、2.0μSv/h以上で勧奨地点に指定されているのです。
今さらながら、こういった大きな矛盾を突き付けられます。

Aさんは測定中、ずっとビデオカメラを回していました。測定に立ち会えないお子さんに、どこが高いのかを細かく教えたい、との思いです。私たちは、Aさんの住まいから学校に向けて歩き出しました。
今回、測定するにあたり、センサーの高さは地表50cmあたりをキープすることにしました。お子さんの腰のあたりです。

家の前の歩道から、0.5~0.7μSv/hを記録します。


自宅の目の前で、0.5~0.7μSv/h(地表50cm)


今まで、郡山市は通学路も含めて何度も測定に伺っているのですが、2015年になって地表50cmで歩道が0.5~0.7μSv/hもある場所というのはあまりありません。
アスファルト上であれば、0.2~0.4μSv/hまでは下がってきているのです(ただし、土の上は0.5~1μSv/hほどあるところも多く、局所的に1.5μSv/hを超えるところもあります)。

この日、測定したアスファルト上で一番高かったのが、この家の前の歩道(0.5~0.7μSv/h)だったのです。
その原因は、透水性舗装。写真のような形状のアスファルトでした。

透水性舗装


透水性舗装の上は、除染をしても線量が落ちません。
以前にもお伝えしたことがあるのですが、(郡山レポート・4)郡山市明健中学校の前にある遊歩道も、0.5~0.7μSv/hあり、その測定結果を持って、郡山市在住のNさんが郡山市長に訴えたことがありました。
訴えた結果、近くの沼(宝沢沼)の遊歩道と一緒に、緊急除染がなされました。
しかし、その後、半年後にその遊歩道の測定をしたところ、放射線量は下がっていなかったのです。

同行したAさんは、

「この歩道のところだけでも、おんぶしたい」

とつぶやいたあと、

「アスファルトをはがして、舗装しなおしてもらいたい。そのことを、市にお願いしたい」

と話していました。
また、その歩道に関しては、側溝の上を歩くほうが、被ばく量が少ないこともわかりました。透水性舗装の上を歩くより、側溝の上を歩くほうが0.3μSv/hほど低かったのです。

「ふつうは、側溝の上のほうが高い、と思いますよね・・・測ってみないと本当に分からないですね」

と、Aさん。

この道は、側溝の上のほうが放射線量が低い


学校周辺を測定したあと、近くの公園を二つ測定しました。
一つ目は学校のすぐ近くの公園。いちおう、除染が済んでいる公園です。歩き回りながら、高そうなポイントも測定しました。すべり台の下、ブランコの下、植え込みの中――測定結果は、0.1~0.2μSv/hでした。

「この公園だったら『遊んでもいいよ』と言えるかな」

とAさん。

薫小学校周辺測定結果/写真左下が公園


「震災後に、郡山市の公園で遊ばせたことはありません。室内遊び場につれて行くか、週末に県外に連れ出して遊ばせていたから・・・でも、小学生になったら、行動範囲も広がってそういうわけにもいかないだろうと思っていたから、『この公園ならいいよ』と言える場所ができてよかった・・・」

次に、自宅から一番近い公園を測定しました。Aさんは、自宅からたった数10メートルの公園に、震災後は一度も連れて来なかった、と言います。
実はこの日、測定には下の4歳のお子さんが一緒でした。元気いっぱい、動きたい盛りの男の子。

「この公園、生後3週間くらいの時に来たっきりだね。覚えてる?(笑)」

とお子さんに話しかけるAさんの声が届くか届かないかで、遊具に向かって思いっきりかけ出しました。

この公園は、除染されていたのですが、広場の真ん中だけが土の入れ替えがされただけで、公園の周囲の植え込みは1μSv/hを超えるところが数か所ありました。木の根本の苔の上では1.5μSv/hを超え、落ち葉の集まるところは0.8μSv/hありました。

木の根本の苔の上



地表10cmほどで測定。落ち葉がたまっているところ。


また、土の入れ替えがされていないところは、0.4~0.8μSv/hのところも。

「この公園は、まだ、行っていいよ、と言えないな・・・」

Aさんはそう話しました。

砂場遊びの道具を、

「数回しか使っていない。未練があって捨てられない」

と話すお母さん。逆に、

「使えなかったことが悔しいから、すぐに処分した」

というお母さん。こういった思いが、一部の地域の母親に押し付けられていることは、事実です。

公園の再除染、透水性舗装の張り替え等、子どもの生活環境について、行政には丁寧な対応をしてもらいたいと願っています。

~~~~~

今日の測定結果の一部を公開します。
1枚目は、薫小学校周辺の放射線量です。公園は、0.1~0.3.
2枚目は、薫小学校から少し離れた公園。やはり、植え込みなどの周辺が高いことがわかります。





(文責・吉田千亜)



2015年4月1日水曜日

これからの避難への支援策について――福島県中通り・浜通りの方へ


この記事を書くか書くまいか、迷っていました。けれど、これによって少しでも「避難」あるいは「避難継続」の選択肢が広がる可能性もゼロではないと思うため、UPします。
さらに、決定事項であるにもかかわらず、なぜか復興庁も国交省も「施策に対応している自治体情報は集約していない」、「集約していたとしても公表しない」という回答だったので、あえてこちらに書くことにしました。
 
なぜ、迷ったのか、ということも付記しておきます。
本来であれば、終わりの見えない原子力災害であることにかんがみて、借上住宅(みなし応急仮設)の供与期間は長く続くべきです。また、これからの避難の選択肢として、2012年12月で打ち切られてしまった借上住宅の新規受け付けも再開してほしい、という声もあり、それを求める運動も行われています。
本日(2015.3.30)福島県に問い合わせをしたところ、担当窓口の方から「この施策も、いつまでということは不明です(文書では「当分の間」とされている)。いずれなくなる可能性もあるのでは」と言われました。
施策がなくなってしまってから、「この情報がもっと早く必要だった」と思う人が出てしまうことは避けるべきです。

本題に入ります。

すでにご存じの方も多いかと思いますが、「原発事故子ども・被災者支援法」の枠組みに、「公営住宅の入居要件の緩和」というものがあります。

簡単にいうと、対象地域(福島県中通り・浜通り)の母子・父子避難世帯に対し、公営住宅に応募できるよう、収入を実際の所得の二分の一であるとみなすという施策です。

想定されるケース(該当する方)は、ふたつあります。

●ひとつ目は、すでに避難中の方。
たとえば、現在、福島県外に避難されている方が、もうしばらく避難を続けたいという場合。「いつ借上住宅が打ち切られるのかわからない」という不安を抱える状況が続くため、多少の家賃が発生しても、今避難している地域で民間の賃貸住宅よりは安く借りられる「公営住宅」に入居したい、というケースです。

●ふたつ目は、これから避難しようと考えている方。
たとえば、現在、福島県内中通り・浜通りに居住されている方で、「家賃の安い公営住宅なら、これから母子(あるいは父子)で避難をしたい」という場合(本来は、民間の賃貸住宅などで条件の合うところに無償で避難できる=借上住宅に避難できることが一番ですが、その施策は打ち切られているのが現状です)。

ふたつ目に該当する方に対しては、唯一の「避難の補助」となる施策ともいえるのです。

くり返しますが、被災者に必要な情報は、きちんと周知されるべきです。「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針にのっとって、すでに決定されている施策であり、「避難(の継続/の決定)を支える唯一のメニュー」なのです(そのメニューが本当に被災者の声を聞いたものであるか否かは別として)。
また、それを受け入れる自治体側の対応も、施策の決定に基づいてそれぞれの議会で承認されている事実です。公表していけない理由は、何もないはずです(にもかかわらず、なぜか「受け入れ自治体を集約しない」「公表もしない」と言われましたが)。

さて、この施策に基づいて公営住宅に応募するために必要な条件としては、

1)   福島県中通り・浜通り(避難指示区域=帰還困難区域・居住制限区域および避難指示解除準備区域を除く)に、平成23年3月11日時点で居住していた世帯。
2)   「居住実績証明書」をもっている(対象地域内の避難元市町村にて交付)。

 のふたつです。2)に関しては、すでに昨年(平成26年)10月1日より、発行が始まっています。

 では、この施策に基づいて、「受け入れします」と表明している自治体はいくつあるのか?わかる範囲で、以下に記しておきます。

 平成27年3月現在、
【都道府県=県営(道営)住宅】
北海道、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県、福井県、岐阜県、佐賀県、兵庫県、山口県、岡山県、徳島県、香川県、高知県、佐賀県、熊本県、大分県、鹿児島県(23道県)

【政令指定都市=市営住宅】
宮城県仙台市、埼玉県さいたま市、千葉県千葉市、新潟県新潟市、兵庫県神戸市、熊本県熊本市(6市)

※これ以外にも、全国市町村でこの運用が始まっています。「ここに避難できるかどうか?」ということは、実際に市町村窓口に問い合わせをしてみることがもっとも大切です。問い合わせをする場合には「公営住宅の担当課につないでください」というのがいちばんよいと思います。

【福島県内=市町村営住宅】
会津若松市、田村市、南相馬市、矢祭村、広野町、伊達市、鏡石町、小野町(8市町)

秋田県北秋田市では、「被災・罹災(りさい)証明書」を持参すれば、無抽選で優先入居できるという対応を決定しています(ただし、これまで実際に適用された方はいないとのことでした)。

では、この施策、どれくらい利用されているのでしょうか。じつをいうと、きわめて少ない状況となっているようです。というのも、そもそも、居住実績証明書の発行数じたいがとても少ないのです。
その発行件数は、35件にとどまっていて、福島県内に住んでいる方で発行を希望したケースは7件。福島県外に避難されている方で発行を希望したケースは28件のみなのです。
原因としては、

①  残念ながら、被災者のニーズに沿ったものとは言いがたい施策であるということ。
②  ここまでに書いてきたとおり、この情報に関して周知が足りないこと。

などが考えられるでしょう。

はたして、この記事を書いたところで、どのくらいの人に役立つ情報なのかはわかりません。ただ、原発事故の発生当時には子どもがいなかったけれど、最近になって子どもが生まれ「子どもが小さいうちは避難をしたほうがいいのではないか」と考えている方がいる、ということは耳にします。
また、原発事故当時はタイミングが合わなかったけれど、「最近になって避難をしようか、と考えている」という方のお話も聞いています。

この制度は、避難も、居住も、帰還も、どの選択も尊重するという理念をもった「原発事故子ども・被災者支援法」に基づく施策です。まずは多くの方に「知らせる」ということが、何より大切なのではないかと思います。
公表されないということで、こちらに急ぎUPしましたが、今後、復興庁や国交省のホームページ上に、「受け入れ自治体リスト」がきちんと公表されることを願います。

以下は、ホームページ上で公開されている、受け入れ側の情報です(関連情報含む)。

北海道
秋田県
茨城県
滋賀県
広島県

仙台市
木更津市
横須賀市
パブコメ 市営住宅入居要件緩和について
新潟市
新潟市
子ども・被災者支援法に係る条例改正について(入居要件緩和) 
岡山市





文責・吉田千亜

2015年3月10日火曜日

3月10日(火)発売の「女性自身」に記事を書かせていただきました。

 本日3月10日(火)発売の「女性自身」の「シリーズ人間」というコーナーに、
私たちといっしょに活動している郡山在住・根本淑栄さんの測定活動に関する記事を書かせていただきました。



根本さんの言葉を借りて、子の被ばくを心配するおかあさんたちの気持ちを伝えることができれば…という思いで書かせていただきました。

みなさま、ぜひお手にとって読んでいただけると幸いです。

 また、誌面の都合上詳しくは書けなかったのですが、根本さんと共に測定をしているママレボの吉田千亜さんや、「こどもみらい測定所」の石丸偉丈さんたち、「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」(こどけん)のメンバー、また、こどけんの活動にカンパしてくださっている方々など、多くのみなさんの協力のもとに、測定が成りたっていることを、ここで付け加えさせていただきたいと思います。

 ただ、記事中にひとつ修正点があります。

P67の土壌汚染の値を示す箇所で「平方メートルあたり」とするところを「グラムあたり」と書かれているところがありました。
こちら、正しくは「平方メートルあたり」の数値ですので、この場をかりてお詫びと訂正をさせていただきます。
お読みいただける際は、平方メートルとしてお読みいただければと存じます。
どうぞよろしくお願い致します。

和田@ママレボ

2015年3月6日金曜日

ママレボ♡ブックレットシリーズ 第1弾「子ども脱被ばく裁判」の弁護士が、ふくしまの親たちに送るメッセージ~ 怖がっていい、泣いていい、怒っていい、いつか、さいごに笑えるように――

 「ふくしま集団疎開裁判」改め「子ども脱被ばく裁判」の弁護団長、井戸謙一氏の著書を、ママレボ♡ブックレットシリーズの第1弾として発刊いたしました。
定価800円

 なぜ、いま「子ども脱被ばく裁判」をするのか。その理由を、具体的事例を示しながら、わかりやすく書いてくださっています。


 また、原告になっている母親たちの手記も収録。大手マスコミでは報道されない、福島の今を知ることができます。
 福島にお住まいの方にも、福島で起こっていることはよくわからないという県外の方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 ご購入はこちらから
  ※ママレボは、「子ども脱被ばく裁判」を応援しています。ブックレットの売上げの一部は、「子ども脱被ばく裁判」の支援金として寄付されます※************************

もくじ

ごあいさつ

Ⅰ 原発差し止め判決
  裁判官次第の仕事/まだまだ想定が甘かった

Ⅱ 国民を守ろうとしない政府や専門家
  安定ヨウ素剤を配布せず、SPEEDIも隠ぺい1/山下俊一氏の罪/ 子どもにも年間20ミリシーベ
  ルトを適用

Ⅲ 誤解だらけの100ミリ論争
  100ミリシーベルトではがんはふえない/低線量でも、がんはふえる/リスクは、がんだけでは
  ない/すべては原子力政策を続けていくため

Ⅳ 事実を知ることから、すべては始まる
  
明らかになっているチェルノブイリの健康被害/甲状腺がんが多発/放出された放射性物質
  の量は、ほんとうにチェルノブイリより少ないのか/測定されなかった甲状腺被ばく

Ⅴ ベラルーシやウクライナより劣る日本
  「チェルノブイリ法」 と 「子ども被災者支援法」

Ⅵ 「子ども被災者支援法」 の限界
   「支援」 ではなく 「賠償」 を

Ⅶ 子ども脱被ばく裁判
   矛盾した判決/ 「子ども脱被ばく裁判」 とは/なぜ、司法に訴えるのか

 
~原告のお母さんたちの声~
 
 「政府や福島県は、真実を述べてほしい」(福島市在住 高橋絵里子さん)

 「同じ境遇の母親たちの希望になりたい」(福島市在住 大山慶子さん)
 
 「裁判に勝って、子どもたちの未来にあかりをともしたい」(郡山市→岡山県笠岡市 山本紀子さん) 


あとがきに代えて

ふくしま集団疎開裁判と支援活動の歩み

2015年2月28日土曜日

放射能と薪の話(3)――ADRに訴える

使うことも、棄てることもできない。再三の訴えにも、誠意ある対応をされなかったNさんは、ADR(裁判外紛争解決手続き)に訴えることにしました。
汚染された可能性のある薪をお持ちの方にも、そうではない方にも、ぜひ読んでいただきたいレポートです。
(『ママレボ』出版局/吉田千亜)

◆原発ADR(原子力損害賠償紛争解決センター)とは?

 原発ADRとは、東京電力との直接交渉で合意できない場合や、賠償されない場合、あるいは、裁判では手続きがむずかしい場合などに利用する機関です
 原発ADRに訴えられる項目のなかには、「所有しているものの価値が下がった(あるいは、なくなった)ことの賠償」が含まれています。

Nさんは、東電に直接「薪をどうしたらいいのか」と問い合わせましたが、「薪を洗って使うのはどうか」という、とんでもない回答が来ています(放射能と薪の話1)。その後測定した結果、環境省が定める基準値の10倍以上であることがわかり、使用できないことも判明しました。そのことを訴えた行政からも、きちんとした対応がなされませんでした(放射能と薪の話2)。

 悩んだ末、Nさんは「泣き寝入りしたくない」と、原発ADRで薪の損害賠償を請求することにしました。お金の問題からではありません。これまで訴えても何もなされなかったことを、きちんと形にしようと考えたからです。

◆被害を被害と認められない仕組みこそが問題

 いちばん問題なのは、情報が公開されていないということ。薪の放射能濃度の測定値は、開示請求をしなくては、出てこなかったものです。
薪について自家消費者・販売業者含めて「40ベクレル/kgを超えるものは使用しないように、あるいは売らないように」伝えていると、福島県の林業推進課の担当者は話していました。けれど、実際のところ、周知されているとはいえません。
そもそも、測定値が公表されていないのですから、目の前にある薪の放射能について、一般の薪利用者は想像すらしないでしょう。ほとんどの利用者は、事故以前と同じように使っているようです。Nさんの近所でも、かつてと同じように使用している家庭がほとんどだといいます。

「その薪、使わないんだったらもらうよ」

と言われて困惑した、という話も聞いています。
また、良心的な販売業者のなかには、ロットごとに測定をしているところもありますが、それをうたって販売しているところはほとんどありません。
情報が公開されていないことによって、行政が周知しさえすれば避けられる住民の被ばくの可能性を放置したまま4年。しかも、徐々に忘れられています。
 あえて公表していないのではないかと指摘したくもなりますが、もしそうではないのなら、今後、きちんと測定値をホームページなどでも公表し、住民に注意を喚起しつづけてほしいものです。

 ふたつ目に問題なのは、国の定めた基準値と、東電や行政機関の対応のねじれです。
環境省が規制している数値を超えた薪が流通している可能性と、環境省が指定廃棄物として定めている8000ベクレル/kgを超える焼却灰が自宅の居間にある可能性があるにもかかわらず、東電も行政機関も、住民からの訴えに対して責任を認めようとしていませんでした。まったく筋が通りません。

◆1度目の回答は、「自主的避難等対象区域の賠償額に含まれている」

 Nさんは、自分の所有する薪の価値がなくなった、ということを訴える書類を作り、状況を説明する写真を添付、原子力損害賠償紛争解決センターに届けました。
薪の長さを測り、総量を算出します。
薪を測定するNさん


さらに、薪を購入した場合の金額を算出して賠償請求しました。その金額は、およそ100万円。

 1度目の回答は、書類の提出から1か月後にありました。そこでもまた、東電の不誠実な対応がありました。

「中間指針追補・二次追補(平成24年2月・平成24年12月)において、自主的避難等対象区域内の住民には、すでに損害賠償金として18歳以上または妊婦以外の人には一人あたり8万円、18歳以下および妊婦の方には一人あたり40万円を支払っているので、その賠償金と、薪の損害金は相殺されるため、不要ではないか」

「既に支払っている」と主張


という見解です。
 Nさんは、あきれてしまったといいます。

 「『薪は洗って使え』なんて言ったのに、今度は、あの少額の賠償金は薪だけの被害のために支払ったとでも言いたいのかな……」
 
◆2度目の回答は「いちばん安い薪の値段で計算すべき」!

 Nさんはあきらめずに、再度、自宅の薪の放射能濃度の測定値や写真を送り、交渉を続けました。

 さらに1か月後、再び東電からの回答が届きました。そこに書かれていたのも、被害者を被害者として扱わない姿勢が見て取れるものでした。
Nさんの薪は、知人が山の木を切ったときに譲り受けたものでした。東電側はそのことを指摘し、賠償する責任がないのではないか、と言ったのです。

「買っていないだろう」

「買っていないなら、損害はないだろう」


冒頭にも書きましたが、損害には「所有しているものの価値が下がった(あるいは、なくなった)ことの賠償」が含まれます。どこから入手したか、無料だったかどうかは別の話です。現に、Nさんには、薪ストーブを使用することができなくなっているという被害もあります。遠方から薪を取り寄せるという選択肢もありますが、それも、新しく発生する不必要なはずの出費です。

さらには、

「譲り受けたものであれば、販売されているものよりも劣った薪であると思う。したがって、算出するにあたり使用している1本ごとの金額は妥当でない。もっとも安い値段で計算すべき」
「質が悪いだろう」「もっと安いだろう」

「もっと安いことを考慮すべき」


と、指摘までしてきたと言います。

Nさんは、

「もう、あきらめたほうが楽なのではないか」

と泣くような思いをしながら、再び書類を提出したのです。





放射能と薪の話(4)――和解案の提示/薪だけの話ではない に続く






2015年2月24日火曜日

放射能と薪の話(2)――棄てることもできない

放射能と薪の話(1)では、公表されていない薪の汚染データについて書きました。今回は、棄てることもできない薪の現状をレポートします。
(『ママレボ』出版局/吉田千亜)

◆自前の測定の結果は、470ベクレル/kgに

 郡山市に住むNさんは、自宅の薪ストーブの灰の近くで、16マイクロシーベルト毎時という空間線量の測定値が出た日(2011年6月)以来、薪ストーブを使用することはなくなりました。しかたなく、灯油ストーブで福島の寒い冬をしのいでいます。
東京電力の担当者は「洗って使えばいいのでは」などと無責任なことを言い、市の職員は「前例がない」と言い放ちましたが、Nさんは、それでも市にかけあいつづけていました。
2014年、知人のはからいで、Nさんは自宅の薪を測定することができました。粉砕し、食品と同じやり方で測定します。
住民は、そう簡単に薪を粉砕・測定することができません。だからこそ、粉砕して測定した行政機関のもつデータはたいせつなのですが、その測定値を公表していないということは、「放射能と薪の話(1)」で、開示請求した測定データとともに詳しく述べました。

Nさんの薪の測定結果は470ベクレル/㎏。使用してよいとされる基準値、40ベクレル/kg(以下)の、10倍以上です。

Nさんの薪の測定値。470Bq/kgと100Bq/kg。
どちらも使用してよい基準値を大きく超えていた

 Nさんはその測定結果をもとに、再度市にかけあいました。きちんと数値を証明したのだから、片づけてほしいと訴えたのです。

◆少しずつゴミに混ぜて捨ててください・・・!?

 郡山市の職員は、測定値を見てふたつの選択肢を提示しました。
 ひとつは、「民間の業者を派遣する」ということ。もうひとつは、「少しずつゴミに混ぜて棄てる」ということ。
 前者は、お金がかかります。しかも、みずからお金を払って廃棄せよということです。
後者は、焼却灰の放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kgを超えると指定廃棄物として国が処分しなくてはならないので、薄めてしまいましょう、という発想です。
 Nさんは、あっけにとられたといいます。

「そんなことを言われても、どちらも選べませんよね……」

以前、記者は、いわき市在住の方からも「高濃度のゴミは、少しずつ生ゴミに混ぜて出してくださいと言われて、驚いた」という報告を受けていました。住民が「そういう問題だろうか」と疑問を抱くのも、当然です。原発から出ている汚染水の処理と、同じ発想――。
「どうしても一度に片づけたいのなら、軽トラックで、クリーンセンター(清掃センター)に持ってきてくれれば片づけます」市の職員は、最後にそう言ったそうです。

◆汚染されている大量の薪を抱えて運ぶのは、いや

 Nさんの薪置き場は、以前、空間線量を測る、ホットスポットファインダーで測定させていただいたことがあります。他の場所よりも高く、いちばん高いところでは1マイクロシーベルト毎時を超えていました。薪の表面近くでも、0.5~0.7マイクロシーベルト毎時ありました(2013年、冬)。


薪置き場の近くの放射線量(地表15cm)

 Nさんは

「もうこれ以上被ばくしたくないと思っているのに、大量にある薪をすべておなかに抱えて軽トラに載せる作業をするのは、もういやだと思った」

と言います。それは、当然のことだと思います。

「結局、市民があきらめるのを待っているんだろう」

Nさんは、こんな結論に達したといいます。
丸太を長さ40cmに切りそろえ、さらにオノで割ってこつこつ蓄えてきた薪は、もう使うことも、棄てることもさえできないのです。

◆誰のため、何のための「除染」なのだろう

 2014年の秋、Nさんのお宅に「除染」作業の順番が回ってきました。事故から3年以上たちましたが、これでも「比較的、空間線量の高い地域」として、早いほうなのだといいます。
 廃棄すらできない薪は、Nさんの敷地内に、まだありました。
 Nさんは、除染に来た業者に、

「薪を何とかしたいのですが・・・」

と相談しました。
すると、
「除染は、敷地や宅地の『地面』だけが対象であって、その上にあるものは対象ではないのでわかりません」
という、驚くべき返事が返ってきました。

「『除染』って、空間の線量を下げるためにやっていると思っていたのに、薪をどうするか決まっていないので、対応できません、と言われました。何もしなければ、薪のまわりの線量は下がらないのに……。
もう、行政も、徹底的に私たちが泣き寝入りするのを待っているとしか思えない……」

Nさんは、ここでもまた、きちんとした対応をしてもらえなかったのです。



放射能と薪の話(3) ――ADRに訴える に続く 

2015年1月31日土曜日

放射能と薪の話(1)――知らされざる薪の汚染

◆そのペレット、測ってますか?

1月26日、福島県郡山市役所がペレットストーブを設置した、という報道がありました。ファンヒーターより暖かく、燃焼効率も良いためとのことです。


このところ、福島県の薪や原木の測定結果が公表されていないということを知り、取材をしていた記者としては、「そのペレットは、測定しているのだろうか」と気になりました。
2013(平成25)年3月、秋田県で使用された、外国産の木質ペレットの焼却灰から、チェルノブイリ原発事故によるものと推察される、放射性セシウムが検出されています。使用された木質ペレットは、ヨーロッパアカマツを原料とした外国産のペレットでした。
秋田県は、その測定値を検証した結果、放射性セシウム134と137の比率から、「チェルノブイリ原発事故のもの」と推察し、測定結果とあわせて発表しています。
チェルノブイリ原発事故から29年がたついまも、とくに気を付けて測定しなくてはならない品目があるということを、あらためて考えさせられる例です。
福島原発事故からはまだ4年――。薪・材木の放射能汚染について、数回にわけてレポートします。

(ママレボ出版局/吉田千亜)


◆小さな原子炉―薪ストーブの灰が指定廃棄物レベルに

 チェルノブイリ原発事故のあと、薪ストーブはベラルーシで「小さな原子炉」と呼ばれました。汚染された薪を使用することによって汚染が広がってしまうということから、そういわれていたようです。
 福島原発事故でも同じように認識されており、「薪は40ベクレル/kg以下のものを使用するように」と、震災から半年後の2011年11月に、林野庁から通知が出ています。
 林野庁がわざわざ「薪は40ベクレル/kg以下」というのには理由があります。薪を燃やしたあとの灰に放射性セシウムが濃縮され、指定廃棄物として管理しなくてはならない8000ベクレル/kgを超えてしまうからです。燃焼により、およそ200倍になるといわれています。
灰に放射性セシウムが濃縮されることは、環境省が2012(平成24)年2月に発表した、実証実験のデータからも見てとれます。


◆公開されない「薪」と「原木」の放射能測定データ

ごく最近の、薪はどのくらいの数値なのか、ウェブで薪の測定データを検索してみました。しかし、公開されている放射能測定データのなかに、「薪」や「原木」のものが見あたりません。
 福島県の林業推進課に問い合わせをすると、「測定はしているが、公表していない」といいます。「公表する予定もない」らしいのです。
細かくしやすい食材などの放射能測定はできても、粉砕できない木材の放射能測定をすることは住民にとってむずかしいことです。せっかく測定しているにもかかわらず、なぜ公表していないのでしょうか。

◆現在も40ベクレル/kgを超える薪がある――開示請求した薪のデータから

 公表しない、というので、2014(平成26)年12月、薪と原木の測定値を開示請求しました。
 出てきたデータには、「規制値以上」という数値がいくつも並んでいました。


最近の――2014(平成26)年11月のデータですら、40ベクレル/kgを大きく超える、8500ベクレル/kg、3000ベクレル/kgという数値があるのです。


◆安心して使えるものが出荷されているのか――

 福島県庁に電話をし、現在、薪の出荷についてどういう規制がされているのか、あらためて聞いてみました。林業振興課によると、

「林野庁から薪の安全確保の方針が出ているが、規制する法的根拠がない。『出荷しないで』という『お願い』をしているという状況。食品であれば、食品衛生法の規定があるが、薪についてはない」

と話します。
震災直後から現在まで、福島県の薪の測定検体数は約300。そもそも測定じたい義務ではなく、任意です。「業者には、1ロット収穫の場所単位で測定にまわしてほしいとお願いしている」とのこと。
自家消費する方々については、

「市町村を通して、回覧板などで周知しているところ」

とのことでした。「周知しているところ」とはいっても、もうすでに震災から4年ちかくがたっているのです。


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◆薪ストーブの近くで16マイクロシーベルト/hもあった

 郡山市に住むNさんは2011年3月の地震のあと、灯油などが買えない時期に、「薪ストーブがあってよかった」と、喜んでいたといいます。それまでも、家の外の薪置き場で乾燥させた薪を使用していたので、震災直後も同じように使っていたそうです。当時は、放射能に関する知識もありませんでした。
 ある日、福島県に住む知人から「自宅の薪ストーブの灰の数値が1キログラムあたり1万ベクレルを超えた」という話を聞いて驚き、すぐに自宅の薪ストーブの近くで放射線量を測定してみたそうです。使いつづけていた薪ストーブの灰の近くは、16マイクロシーベルト/hありました。2011年6月のことです。

◆「薪を洗って使ったらどうですか?」

 Nさんは、16マイクロシーベルト/hという高い線量に驚き、郡山市の市役所に出向いて訴えました。自分たちは、室内で、無用な被ばくをしているのではないか。灰を処理するとき、危険ではないのか。薪ストーブを使用禁止にしなくてもいいのか――。
 Nさんの問いに対して、市の職員は

「そんな話は聞いたことがありません」

と、とりつく島もありませんでした。
Nさんは、めげずに東京電力にも問い合わせの電話をします。すると、窓口の職員は

「前例がないのでわからない」

と説明したあとに、こう言ったそうです。

「薪を洗って使ったらどうですか?」

「さすがに絶句しました」と、Nさん。
それらの薪は、今も使えないまま自宅敷地内に残しています。





放射能と薪のお話――棄てることもできない(2)に続く