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2013年12月31日火曜日

郡山測定レポート(4)

2013年も最後の日になってしまいました。
こどもみらい測定所の所長・石丸さん、郡山市在住のAさんと、ホットスポットファインダーで郡山市内を測定(2013年9月)したレポートの続きをUPします。

* * * * *

写真は、郡山市内のとある湖です。ぐるりと散歩コースが整備されていて、近くの中学生のマラソンコースになっている道路です。

湖の周辺は、0.3~0.4μSv/h。

赤→0.5μSv/h以上
オレンジ→0.4μSv/h以上
黄色→0.3μSv/h以上

です。

何度も言うようですが、0.3~0.4μSv/hは、事故前の10倍です。でも、郡山市にいると、0.3μSv/hを「低い」と感じてしまいます。「高い」「低い」という言葉を、どう遣えばいいか、迷いますが、このレポートでは、事故前よりも高ければ「高い」と考えています。

測定の結果写真を見るとよく分かるのですが、ある部分だけ線量がとくに高くなりました。白い矢印のところからです。だいたい、腰の高さで、0.5~0.7μSv/h。地表近くでは植え込み部分で1μSv/hを超えたところもありました。(ちなみに、このマラソンコースは腰の高さで測定している数値です)

じつはこの白い矢印部分から、道路の舗装が変わっているのです。


湖の周りは、アスファルトで舗装された道でした。矢印から左側は、「透水性舗装」と言われている道路で、路面に降った雨水を、舗装内の隙間から地中へ浸透させる機能を持たせていました。
つまり、表面がザラザラ、ボコボコしています。(イメージ写真を下に貼ります)



「透水性舗装」は、その名のとおり、水はけをよくするための舗装なのですが、実際は、隙間に砂、泥が詰まることから数年で機能低下が起こるという欠陥が指摘されています。その、隙間に、放射性物質が入りこんでしまったようです。
アスファルト舗装から透水性舗装にかわる境目(写真上:白い矢印)から、突然、線量が上がるのです。

もし舗装の種類によって線量に差が出るとわかれば、子どもたちが気をつけるべきポイントのひとつとして、伝えられるかもしれません。

現在、この透水性舗装の部分を含めたマラソンコースは、測定のあと、2週間かけて除染がされました。
Aさんが、この測定結果を、郡山市長に届け、その結果をみた市長が「中学生のマラソンコースの測定値」という事実を重く受け止め、緊急除染を指示したということです。

前にも書いたとおり、ホットスポットファインダーは、環境省のお墨付きをもらっている測定器です。そういった信憑性のある測定結果を、自治体に届け、要望を伝えることは、できるだけ子どもを被ばくから守る第一歩として、大切なことかもしれません。
Aさんは、「今後もチャンスがあれば、(測定結果を)届けたい」と話してくださっています。

郡山測定レポート(3)
郡山測定レポート(2) 








ママレボ@伊藤

(郡山測定レポート(5)につづく)





2013年12月14日土曜日

~汚染地に住むリスクを認め、保養・給食の安全・健康診断を徹底すべき~ OurPlanetTV 白石草さんの「ウクライナ取材報告会」のまとめ

 OurPlanetTVの白石草さんが1211日、参議院議員会館で「ウクライナ取材・帰国報告会」を開き、低線量汚染地域である「コロステン市」の学校で、どのように健康管理や保養が行われているかについて取材報告を行いました。たいへん重要な内容だったので、そのポイントを以下にまとめます。

→ 詳細は、報告会の動画をご覧ください。
→ 当日の配布資料


◇コロステン市の汚染状況

 白石さんがウクライナを訪れたのは、2013年1113日〜26日の約2週間。
コロステン市は、NHKのETV特集低線量汚染地域からの報告でも紹介されていた街として記憶されている方も多いと思います。チェルノブイリ原発から約140キロの位置にあり、人口は65千人。
 白石さんの報告によると、コロステン市の人たちが、チェルノブイリ原発事故後25年間に浴びた積算被ばく線量は、1525ミリシーベルト。つまり、年間被ばく量に換算すると1ミリシーベルトかそれ以下ということです。ちなみに事故直後のコロステン市では、毎時10マイクロシーベルトを超える線量が計測されていたそうです。事故から25年たった現在の空間線量は、0.060.1マイクロシーベルト毎時ほど。チェルノブイリ法で定められている汚染区分では第3区分(移住の権利ゾーン)にあたるエリアです。
 現在日本政府は、年間被ばく量20ミリシーベルトの場所へ住民を戻そうとしているわけですから、それと比べるとコロステン市は、線量の低い町といえるかもしれません。


◇汚染地域の学校での取り組み

 白石さんの報告によると、ウクライナは「小中高一貫教育」で、6歳〜18歳までの子どもたちが同じ学校で学んでいるそうです。
 うわさに聞いていた通り、やはり汚染地に住む子どもたちの間では「体力の低下」や「非ガン性疾患」の増加が顕著で、政府は1997年に、汚染地に住む子どもたちのための施策を閣議決定したとのこと。
 その施策は主に3つあり、ひとつ目は「授業時間の短縮」、二つ目は、「汚染されていない給食の無償配布」。三つ目は、「健康診断」です。


〜授業時間の短縮〜
 通常の学校は45分授業ですが、汚染地の学校は40分授業に短縮。小学校1年生は、さらに5分短縮して35分。短縮授業を実施するかどうかは校長の裁量によるそうですが、汚染地のほとんどの学校で導入されているとのこと。
 授業短縮を導入した背景としては、子どもたちが疲れやすかったり、頭痛を訴えたり鼻血を出すこどもが多かったりしたため政府判断で実施することになったそうです。チェルノブイリ原発事故から27年たった現在でも短縮授業は継続されています。このほか、汚染地の学校では、卒業試験や大学入試試験の免除などが実施されています。

〜 汚染されていない給食の無償配布〜
 具体的に何ベクレルの食材が使われているのかは不明ですが、汚染地の子どもには給食が無償配布され、学校を休んで給食を食べられなかった場合には、現金で至急されるそうです。

〜「健康診断」について〜
 汚染地の学校では、念に一度、子どもたちの健康診断を実施しており、健康診断の結果に問題のあった子どもは、病院で血液検査や超音波検査などを受けることができ、必要であれば治療を行うという流れになっています。
 また、学校の健康診断の結果と「ルフィエテスト」という心臓の負荷状態を調べるテストの結果によって、体育の授業がグループ分けされています。なぜ、こうしたスキームができたかというと、2年前に体育の授業中に倒れて亡くなる子どもがふえたため、こうした対応がとられることになったということです。
 体に問題のない子どもは「基本グループ」、体力のない子どもは「準備グループ」、なんらかの疾患がある子どもは「特別グループ」、障がいがあって体育の授業が受けられない子どもは「免除グループ」と4つに分けられており、白石さんが訪れた学校では、「基本グループ」が157人、準備グループが385人、特別グループが90人、免除グループが13人とのことでした。
 基本グループの子どもよりも、準備グループの子どものほうが多いということに改めてショックを受けました。

 「原発事故前は、病気の子どもは30人にひとりだけでしたが、現在はふえています。みんな疲れやすい。私が校長になってから12年間で白血病の子どもが4人、そのうち2人は死亡しました。死亡したうちのひとりは、学校の先生が子どもの肌が黄色くなっていることに気づいて検査を受けさせたところ、白血病だということがわかりました。もう一人の子どもも、背中が痛いというので検査したところ白血病でした。教師3人も若くして亡くなっています。最近は、筋肉、甲状腺、目が悪くなるなどの非ガン性の疾患がふえていて、ひとりが複数の疾患をもっているケースが多い」(コロステン市の学校の校長先生談)


  元気な子どもと、疾患を持っている子どものちがいは何か?

 次に白石さんら取材班は、学校の先生に依頼して「元気な子ども」がいる家庭と、「疾患を抱えている子ども」がいる家庭をそれぞれ紹介してもらい、取材にうかがいました。

〜疾患を抱えた子どものケース〜
 マリアさん(14歳)は、生後3ヶ月で麻痺がおこり、生まれもって肝臓や脾臓などの疾患を持っているそうです。幼少時代には、気を失って入院したこともあり、現在は糖尿病の疑いなどがあって食事制限をしています。日常生活においては、疲れやすく集中力がありません。体育の授業は特別グループで、障がい者認定を受けています。
(チェルノブイリ障がい者認定ではない)炭酸飲料やスナック菓子を食べると発作が起きるので、母親のナタリアさん(37歳)は、無農薬の野菜を使った健康的な食事をとらせるよう心がけているそうです。
 チェルノブイリ原発事故は、母親のナタリアさんが10歳のときに起こりました。ちょうどそのころ、メーデーのパレードの練習のためナタリアさんは長時間屋外にいて被ばくしてしまいました。
 ナタリアさんには、長女マリアさんのほか、18歳の長男サーシャ君がいますが、彼には重度の知的障害があり、現在はナタリアさんの母が預かって世話をしているそうです。また、ナタリアさんは2年前に3人目の子どもを妊娠したそうですが、妊娠中に大きな奇形が見つかって出産を断念されたそうです。
 ナタリアさんにお話をうかがっている最中、通訳の女性が泣き出してしまうほど辛い内容だったと白石さんは語っていました。

〜元気な子どものケース〜
 タラスくん(10歳)は、基本的に元気ですが、体育の授業は準備グループに属しています。タラスくんは視力が悪いそうで、視力回復プログラムのある保養に行くと、良くなるとのこと。
 タラスくんの母親のガリーナさんは非汚染地帯の出身で、父親のアレクサンドルさんは第3級の汚染地帯出身(ベラルーシから7キロの地点にあるオルブチ地区)ですが、原発事故のあとヨウ素材を服用したとのこと。こうしたちがいが、子どもたちの疾患に影響を及ぼしているのでしょうか。因果関係は明確にはわかりません。


  確立されているウクライナの保養スキーム

 白石さんらが取材したコロステン市外来病院の小児科医(心臓疾患専門)によると、「原発事故後は子どもたちの先天性疾患がふえている」とのことです。
 心臓疾患による一日あたりの受診者数が20人くらいで、そのうちの大半が先天性による疾患です。はっきりとした病名がつく疾患ではなく、なにやらよく分からない疾患が多いそうです。白石さんが取材中にも、発作が起きると頭のてっぺんから出血する、という奇妙な病の女の子が外来を訪れていました。

 こうした状況のなかで、重視されているのが「保養」プログラム。チェルノブイリ法に関連して、1997年に「保養の優先がある子どもに関する閣議決定」がなされ、保養プログラムがシステム化されました。
 閣議決定の具体的な中身は、(1)汚染地の被災者認定された子どもは無料で保養が受けられる。()財政は国や市が負担する。(3)日数は21日間(当初は28日間だったが短縮)、(4)保養は夏休みだけではなく一年を通して実施。(5)学校の看護師などが付き添い、学校の健康診断の結果をもとに保養先を決定。(6)親は子どもに合わせて休暇をとることができ、保養に同伴する。などが挙げられています。

 保養実施までのスキームですが、各学校で子どもたちが「健康診断」や「ルフィエテスト」を受けた結果が、学校の看護師を通して「保養先の選定委員会」に送られます。 「保養先の選定委員会」では、全国から保養受け入れの情報を一元化しており、子どもたちの健康状態に応じて保養先をマッチングさせるのだそうです。
 また、つねに外来病院から学校へ医師や看護師が派遣されており、外来病院の小児科の中にも「学校保険の部屋」が設置されていて、子どもたちの健康状態を相互的に把握できるというスキームも成り立っています。つまり、学校や外来病院、保養先の選定委員会などがすべて連携し、保養も含めた子どもの健康管理を実施しているということです。
 もともとウクライナでは、夏休みに長期保養に出るという習慣があったため、スムーズに行われているのだと思います。事故以来27年間、保養は休むことなくつづけられており、日数や対象者が若干減ってはいるものの重要な政策として位置づけられているとのことでした。

  組長や政府関係者も「保養と健康診断は絶対必要」という見解

 白石さんら取材班は、コロステン市のモスカレンコ市長や、国家戦略研究所のナスビット研究員など、汚染地域の組長や政府関係者にもインタビューしていました。
 彼らは、「子どもたちの疾患と被ばくとの因果関係には否定的」という立場だそうですが、そんな彼らでさえ「汚染地に住む」ことに対する居住リスクは十分に認識しており、「被ばくとの因果関係がよくわからないからこそ、健康診断や安全な給食の確保、保養は絶対に必要だ」という考えを持っているとのことです。

 日本政府は、「子ども被災者支援法」の成立以前にチェルノブイリへ視察に出かけ、モスカレンコ市長やナスビット研究員にもヒアリングをして報告書を作成しています。しかしこの報告書のなかでは、「汚染地での居住リスク」や「健康診断、安全な給食の提供、保養」などの必要性は盛り込まれておらず、たんに「年間被ばく量1ミリや5ミリシーベルトでの移住政策」に対する批判ばかり取り上げています。
 しかし白石さんによると、モスカレンコ市長やナスビット研究員らは、チェルノブイリ法の必要性を否定しているのではなく、「年間被ばく量が1ミリシーベルト以下の場所に住む人たちにも補償が支払われているため、本当に支援が必要な人に十分行き渡っていない」という点などからチェルノブイリ法には問題がある、と言っているようです。そのうえで、「汚染地に住む人々を補償する法体系は必要であり、特に子どもの健康管理、安全な給食の提供、保養はむしろもっと強化すべきである」という考えを持っています。

 これらのことから白石さんは、日本政府に必要なのは、「まず、汚染地での居住リスクを認めること。そのうえで、学校を軸として地域の病院や医師らが連携して、子どもたちの健康診断や保養政策を進めていく必要がある。現在のように福島県立医科大学だけで健康調査をするのはリスクが大きすぎる」と述べていました。
 現在日本では、なんの補償もないまま年間被ばく量20ミリシーベルトの場所へ住民を帰還させようとしています。移住を選ぶ権利や、住民が納得するかたちでの健康診断、保養、給食の安全も確保されないままです。
 それどころか、“風評被害”という言葉で、“実害”を覆い隠そうとし、「100ミリシーベルト以下ならリスクはない」といわんばかりの一大安全キャンペーンが繰り広げられています。
 ウクライナの事例をみれば、事故後25年の積算線量が1525ミリシーベルトの地域でさえ、事故後に生まれた子どもたちにもさまざまな疾病が生じていることがわかります。
 こうした事態を少しでも防ぐためには、汚染地域で居住するリスクを認めたうえで、しっかりした健康管理、とりわけ子どもの検診、保養、安全な給食の提供は、最低限行ってほしいと思います。
 今、子ども被災者支援法は骨抜きにされたままですが、さらなる充実を求めていく必要があると強く感じました。

 詳しくは、ぜひOur PlanetTV の動画をご覧ください。