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2015年8月7日金曜日

あと1日!「避難する状況にはない」はほんとうですか? 8月8日締め切りのパブコメに、どうぞご意見を!

福一原発の事故後、避難指示のなかった地域に住んでいる(住んでいた)住民や子どもたちに大きな影響のあるのが「原発事故子ども・被災者支援法」。これは、政府による今後の原発事故被害者への政策に影響を及ぼす、大切な法律です。

いままでは、あまり原発事故に関心のなかったという人にも、ぜひパブコメを書いていただけたら……と願いながら、これを書いています。

8月8日〆切のパブコメはこちらから


◇放射能汚染を認めない改定案

「避難指示」を受けていなくても、子どもを原発事故の影響から守りたいとの思いをもつ住民はたくさんいます。県境や行政区別に放射性物質がとどまることなどなく、広範囲にわたって放射能汚染されてしまったことは周知の事実です。
しかし、「原発事故子ども・被災者支援法」の支援対象地域は、福島県浜通り・中通りとされ、行政区で区切られているだけではなく、福島県内にしか汚染はなかったことになっています。

さらに今回の同法改定案は、「福島県内にも放射能汚染はほとんどなくなった」とでも言いかねない内容。実際、「支援対象地域は、線量が発災時とくらべ大幅に低減し」「避難する状況にはない」という表現を使っています。「低減したのだから、国として避難への手立てを考えることをやめます」という方向につながりかねません。「被災者一人ひとりが居住、移動、移動前の地域への帰還についての選択をみずからの意思によって行うことができるよう、支援する」という、この法律の基本理念を真っ向から否定するものです。

復興庁による支援法基本方針改定案の説明会が、全国各地に避難する自主避難者に対して行われましたが、そこでもくり返し「避難する状況にはない」と説明されています。



◇放射能汚染の実状はどうなっているのか

前述のとおり、「避難する状況にはない」理由として「支援対象地域は、線量が発災時とくらべ大幅に低減し」と書いてありますが、実際に支援対象地域で測定してみると、とても「低減している」とは言いがたい状況があります。

先日、福島県郡山市の住宅街を測定しました。
いまなお、事故以前の放射線量である0.03マイクロシーベルト/毎時の、数倍から数十倍の地域も多く、住宅街のなかにも、事故前の数百倍にあたる“ホットスポット”がたくさん点在しています。


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上の写真は、2015730日に測定した、郡山市大槻町のあるアパート前の側溝の放射線量です。
地表すれすれの測定ですが、4.8マイクロシーベルト/毎時あります。
この測定の数分前に、よちよち歩きの子どもとお母さんが階段から降りてきたばかりでした。

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上の写真は、2015531日に測定した、郡山市日和田の小学生の通学路です。
いたるところに1~2マイクロシーベルト/毎時を超える場所が見つかりました。
測定に同行した母親は、すぐに周辺の保護者と連絡を取りあい、測定値を共有。その後、子どもたちの通学を、交代での車送迎にしたとのことです。

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そして、「除染で線量が下がる」といわれていますが、そうとは言い切れない現状もあります。






上の写真は、2015730日に測定した、行政による除染済みの郡山市内の民家の線量です。この民家は、昨年10月に除染を行いました。

地表すれすれで測定していますが、2.6マイクロシーベルト/毎時、1.4マイクロシーベルト/毎時のところ(雨樋下)があります。庭の土+砂利のところは0.6マイクロシーベルト/毎時です。除染直後の測定値にくらべ、放射線量は上がっています。
それでも、行政による除染は一度だけで終わっています。

このような状況にありながら、原発事故からたった4年半で、「避難する状況にはない」と言ってしまっていいのか――。



◇住民に被ばくを押し付けることが「適切な対応」?

 福島県伊達市(Cエリアの除染は、スポット除染=局所的な除染しかしない)の放射線対策課の半澤氏は、電話取材に応じ、「放射線防護と原状回復(元どおりに戻すこと)は別」と話しました。
「行政が市民に、事故前よりも高い被ばくの“受忍”を強いるのか」と尋ねたところ、「予算は税金ですから」と答えました。結局は、おおかたの市民の意思しだいだと言いたいのでしょう。

他方で、復興予算の執行率は60%という報道(毎日新聞20150731)もあります。
必要なところに使われるはずの予算が、正当に使われていないために、住民に被ばくが強要されていると思わざるをえません。除染に限らず、自主避難者の応急仮設住宅のために使われる費用は、わずか年間80億円(毎日新聞20150609)という報道をみても明らかです。

615日には、自主避難者への住宅提供打ち切り(20173月まで)が発表されていますが、それに対する施策も今回の改定案では「適切に対応する」という、具体性に欠けた表現になっています。
「適切に対応する」はずの復興庁。今後、福島県が決める予定の「自主避難者への施策」に丸投げするつもりです。

先日の国会における院内集会に出席した復興庁の参事官、佐藤氏は、やはり自主避難者への避難住宅問題については、くり返し「福島県の施策で対応する」と説明していました。しかし、「福島県の施策」というのは、現状ではまったく不十分です。
「『福島県の施策で対応する』と言いますが、福島県の施策については、復興庁も先方と相談しているはずでは?」と指摘すると、「自分は担当ではないので」と弁明。「では、福島県と話し合っている担当の班はどこですか?」との追及に対して、はじめは「知らない」と言いながらも、「復興庁の被災者支援班が対応していると思う」と明らかにしています。


◇締め切りの8月8日は明日!

原発事故子ども・被災者支援法は、「基本方針を策定しようとするときは、あらかじめ、その内容に東京電力原子力事故の影響を受けた地域の住民、当該地域から避難している者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」としています。
しかし、これまで、「説明会」はあれど、市民の意思を確認される場は、ほとんどありませんでした。

自主避難者の避難住宅打ち切りの報道の際、「被災者の声を聞いてほしい」と再三求められていた「公聴会」も実現されていません。
  
唯一ともいえる、意見の届け先がパブコメ。
締め切りまであと2日を切りました。
今回の基本方針改定案について、ひとことでもいいので、どうぞご意見をお寄せください。


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Our Planet-TVさんの記事(1)「自主避難者は非科学的?〜復興庁が支援法を完全否定」

Our Planet-TVさんの記事(2)「自主避難者の支援は不要」〜規制委・田中委員長がお墨付き


(文責・吉田千亜)