「ママレボ通信」では、「ママレボ」の雑誌には掲載されなかった、日々の取材でのこぼれ話やレポートをアップしていく予定です。

ママレボの雑誌は、こちらからご購入できます!
http://momsrevo.jimdo.com/



2012年11月29日木曜日

メッセージ募集! ママたちが「今、政治家にのぞむこと」を教えてください!

 3.11後、初となる衆議院議員総選挙が近づいてきました。東京都民の方は、都知事選とのダブル選挙ですね。

 ふりかえれば、この1年8カ月間、ママたちは「子どもを守ろう」と必死になり、自治体や政府、学校、保育園などに対して、数々の陳情や要望を行ってきましたが、なかなか認められず大変な思いをしました。
 故郷を追われた方、家族の反対を押し切って母子避難した方、放射能リスクに対する考え方の違いから、家族や周囲との関係が壊れてしまった方など、それぞれの立場で悔しい思いをされた方も少なくないと思います。

  政治家がきちんと私たちの思いを受け止め、率先して動いてくれたらこんな思いをせずにすんだのに。子どもを守れるのに……。そんな行き場のない怒りや哀しみを抱いたのではないでしょうか。

 でも、今こそ「いのち」を守ってくれる政治家を選ぶチャンスです。

私たちひとりひとりが、「未来をつくるんだ」という気持ちで責任を持って意思表示をする必要があると思います。
 
 そこでママレボでは、この機会に「今、政治家にのぞむこと」というテーマで、ママたちの想いを募集します!(ママじゃなくても女性なら歓迎です!)

 「子どもたちの未来を第一に考えてほしい」「故郷を守りたい」「安全なエネルギーを!」などなど、ママたちが「今、政治家に望むこと」をお寄せください。

投稿はこちらから。→ http://form.mag2.com/goubouteag



 メッセージの受付締切は、12月4 日(火)まで。お寄せいただいたメッセージは、当ブログでご紹介するほか、「ママだからこそ、選挙に行こう!」キャンペーンとして、一部抜粋してチラシを作成したいと考えています。

 どしどしメッセージをお待ちしています!

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テーマ;「「今、私たちが政治家にのぞむこと」
文字数:140文字以内
送り先:Twitter @momsrevo
または、info.momsrevo@gmail.com

〆切:12月6日(木)

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2012年11月27日火曜日

「避難する権利を確立せよ!」と、国連人権理事会 特別報告者のプレス・ステートメント


先日、双葉町の井戸川町長がスイスの国連本部で開かれた人権委員会に出席し、被曝を避けることもままならず、避難の権利も認められない福島県民の窮状を訴えました。

これを受け、東日本大震災後の健康を享受する権利に関する調査」を実施するために、国連人権理事会特別報告者のアナンド・グローバー氏が11 15 日~26 日にかけて来日。ママレボも登録している「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」の代表世話人もアナンド・グローバー氏お会いして、福島のみならず北関東・首都圏まで及んでいる汚染の実態についてお伝えしたとのことです。

昨日調査を終え、アナンド・グローバー氏が日本記者クラブにて記者会見し、以下の声明を発表しましたのでご紹介いたします。


声明の中では、現在、市民団体らが政府に働きかけ、具体的に中身を詰めている「子ども原発・被災者支援法」の重要性についてもふれられており、非常に意味のある中身になっています。
正式な最終報告が出るのは来年の6月とのこと。その間も、日々被曝は進んでいくわけですから、この声明を最大限広め、子どもたちの被曝低減の一助になるよう発信を続けていきたいと思います。


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国連人権理事会 特別報告者のプレス・ステートメント

プレスリリース12-058-J 20121126

 達成可能な最高水準の心身の健康を享受する権利に関する国連人権理事会特別報告者/アナンド・グローバー/訪日期間:2012 年11 月15 日~26 日
プレス・ステートメント 2012 年11 月26 日@東京


記者の皆様、ご臨席の皆様

最初に、日本にお招きいただき、興味深く充実した会合や各地の訪問調査プログラムを円滑に進められるよう手配いただきました日本政府の皆様に、心より感謝申し上げます。今回の訪問中、政府関係者の方々、東京電力株式会社の役員の方々、医療・法律専門家の方々、そして地域や市民社会の代表者の方々にお会いしました。福島県および宮城県で地震、津波および原発事故の被害に見舞われた地域も訪問しましたが、訪問する先々で常に温かく丁重に迎えていただきました。また、政府高官の方々とも率直な意見を交換いたしました。特別報告者としてのミッションが円滑に進むよう、手配いただいた政府・関係省庁の方々のご尽力に感謝しております。この場をお借りいたしまして、貴重なお時間をいただき経験を伝えて下さった皆様全員に感謝申し上げます。

達成可能な最高水準の心身の健康を享受する権利(「健康を享受する権利」)に関する国連人権理事会特別報告者としてのミッションを説明した簡単な資料を、この会場に用意しております。
端的に申しますと、私は健康を享受する権利の実現に関して国連人権理事会および国連総会に報告・勧告する独立専門家です。国連人権理事会から任命を受けましたが、国連に雇われているわけではなく、名誉職という立場で今回の任務を遂行しています。独立専門家として、私なりの結論と提言をまとめるべく、専門的判断を下します。

本日の発表は、予備的考察の一部に限らせていただきます。詳細につきましては、2013 6 月に国連人権理事会に提示する最終報告で発表いたします。

ご臨席の皆様

今回の私のミッションは、対話と協力の精神を胸に、日本がいかに健康を享受する権利を実行しようと努めているか把握し、それを首尾よく実現させるための方策並びに立ちはだかる障害について理解することです。より具体的には、地震、津波、原発事故という三重の災害への対応に伴う課題と方策、そこから得た教訓やグットプラクティスに焦点を当てることなどを通じて、東日本大震災を経た現在の状況における、健康を享受する権利の実現に取り組んできました。

ここで本題に入る前に、まず大切なご家族を亡くされた方々に対して、心からお悔やみ申し上げます、そして地震、津波、原発事故の被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。

2011 3 11 日、東北地方を地震、津波、そして人災による原発事故が次々と襲い、日本は未曾有の原発事故に見舞われました。死者約1 8000 人、負傷者は数千人に達した この非常事態に対して、積極的にリーダーシップを発揮した日本政府に敬意を表したいと思います。

また、政府による東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会および国会による東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(NAIIC)がまとめた報告書などの様々な報告書にも留意しています。この件について活発な議論を歓迎します。

原子力発電所で事故が発生した場合の災害管理計画について近隣住民が把握していなかったのは残念なことです。実際、福島県双葉町の住民の方々は、1991 年に締結された安全協定により、東京電力の原子力発電所は安全であり、原発事故が発生するはずなどないと信じてきたのです。

独立した立場からの原子力発電所の調査、モニタリングの実施を目指し、原子力規制委員会を設立した日本政府は賞賛に値します。これにより、従来の規制枠組みに見られた「断層」、すなわち、原子力発電所の独立性と効果的なモニタリング体制の欠如ならびに、規制当局の透明性と説明責任の欠如への対応を図ることが可能になります。こうしたプロセスは強く望まれるものであり、国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の報告でも提言されています。従って、原子力規制委員会の委員長や委員は、独立性を保つだけでなく、独立性を保っていると見られることも重要です。この点については、現委員の利害の対立を開示するという方策が定着しています。日本政府に対して、こうした手順を出来るだけ早急に導入することを要請いたします。それにより、精査プロセスの独立性に関する信頼性を構築しやすくなるでしょう。

皆様、

原発事故の直後には、放射性ヨウ素の取り込みを防止して甲状腺ガンのリスクを低減するために、被ばくした近隣住民の方々に安定ヨウ素剤を配布するというのが常套手段です。私は、日本政府が被害にあわれた住民の方々に安定ヨウ素剤に関する指示を出さず、配布もしなかったことを残念に思います。にもかかわらず、一部の市町村は独自にケースバイケースで安定ヨウ素剤を配布しました。

災害、なかでも原発事故のような人災が発生した場合、政府の信頼性が問われます。従って、政府が正確な情報を提供して、住民を汚染地域から避難させることが極めて重要です。しかし、残念ながらSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)による放射線量の情報および放射性プルームの動きが直ちに公表されることはありませんでした。さらに避難対象区域は、実際の放射線量ではなく、災害現場からの距離および放射性プルームの到達範囲に基づいて設定されました。従って、当初の避難区域はホットスポットを無視したものでした。これに加えて、日本政府は、避難区域の指定に年間20 mSv という基準値を使用しました。これは、年間20 mSv までの実効線量は安全であるという形で伝えられました。また、学校で配布された副読本などの様々な政府刊行物において、年間100 mSv 以下の放射線被ばくが、がんに直接的につながるリスクであることを示す明確な証拠はない、と発表することで状況はさらに悪化したのです。

年間20 mSv という基準値は、1972 年に定められた原子力業界安全規制の数字と大きな差があります。原子力発電所の作業従事者の被ばく限度(管理区域内)は年間20 mSv(年間50 mSv/年を超えてはならない)、5 年間で累計100mSv、と法律に定められています。3 ヶ月間で放射線量が1.3 mSv に達する管理区域への一般市民の立ち入りは禁じられており、作業員は当該地域での飲食、睡眠も禁止されています。また、被ばく線量が年間2mSv を超える管理区域への妊婦の立ち入りも禁じられています。

ここで思い出していただきたいのは、チェルノブイリ事故の際、強制移住の基準値は、土壌汚染レベルとは別に、年間5 mSv 以上であったという点です。また、多くの疫学研究において、年間100 mSv を下回る低線量放射線でもガンその他の疾患が発生する可能性がある、という指摘がなされています。研究によれば、疾患の発症に下限となる放射線基準値はないのです。

残念ながら、政府が定めた現行の限界値と、国内の業界安全規制で定められた限界値、チェルノブイリ事故時に用いられた放射線量の限界値、そして、疫学研究の知見との間には一貫性がありません。これが多くの地元住民の間に混乱を招き、政府発表のデータや方針に対する疑念が高まることにつながっているのです。これに輪をかけて、放射線モニタリングステーションが、監視区域に近接する区域の様々な放射線量レベルを反映していないという事実が挙げられます。その結果、地元住民の方々は、近隣地域の放射線量のモニタリングを自ら行なっているのです。訪問中、私はそうした差異を示す多くのデータを見せてもらいました。こうした状況において、私は日本政府に対して、住民が測定したものも含め、全ての有効な独立データを取り入れ、公にすることを要請いたします。

健康を享受する権利に照らして、日本政府は、全体的かつ包括的なスクリーニングを通じて、放射線汚染区域における、放射線による健康への影響をモニタリングし、適切な処置をとるべきです。
この点に関しては、日本政府はすでに健康管理調査を実施しています。これはよいのですが、同調査の対象は、福島県民および災害発生時に福島県を訪れていた人々に限られています。そこで私は、日本政府に対して、健康調査を放射線汚染区域全体において実施することを要請いたします。これに関連して、福島県の健康管理調査の質問回答率は、わずか23%あまりと、大変低い数値でした。また、健康管理調査は、子どもを対象とした甲状腺検査、全体的な健康診査、メンタル面や生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査に限られています。残念ながら、調査範囲が狭いのです。これは、チェルノブイリ事故から限られた教訓しか活用しておらず、また、低線量放射線地域、例えば、年間100 mSv を下回る地域でさえも、ガンその他の疾患の可能性があることを指摘する疫学研究を無視しているためです。健康を享受する権利の枠組みに従い、日本政府に対して、慎重に慎重を重ねた対応をとること、また、包括的な調査を実施し、長時間かけて内部被ばくの調査とモニタリングを行うよう推奨いたします。

自分の子どもが甲状腺検査を受け、基準値を下回る程度の大きさの嚢胞(のうほう)や結節の疑いがある、という診断を受けた住民からの報告に、私は懸念を抱いています。検査後、ご両親は二次検査を受けることもできず、要求しても診断書も受け取れませんでした。事実上、自分たちの医療記録にアクセスする権利を否定されたのです。残念なことに、これらの文書を入手するために煩雑な情報開示請求の手続きが必要なのです。

政府は、原子力発電所作業員の放射線による影響のモニタリングについても、特に注意を払う必要があります。一部の作業員は、極めて高濃度の放射線に被ばくしました。何重もの下請け会社を介在して、大量の派遣作業員を雇用しているということを知り、心が痛みました。その多くが短期雇用で、雇用契約終了後に長期的な健康モニタリングが行われることはありません。日本政府に対して、この点に目を背けることなく、放射線に被ばくした作業員全員に対してモニタリングや治療を施すよう要請いたします。

報道関係者の皆様、

日本政府は、避難者の方々に対して、一時避難施設あるいは補助金支給住宅施設を用意しています。これはよいのですが、 住民の方々によれば、緊急避難センターは、障がい者向けにバリアフリー環境が整っておらず、また、女性や小さな子どもが利用することに配慮したものでもありませんでした。悲しいことに、原発事故発生後に住民の方々が避難した際、家族が別々にならなければならず、夫と母子、およびお年寄りが離れ離れになってしまう事態につながりました。これが、互いの不調和、不和を招き、離婚に至るケースすらありました。苦しみや、精神面での不安につながったのです。日本政府は、これらの重要な課題を早急に解決しなければなりません。

食品の放射線汚染は、長期的な問題です。日本政府が食品安全基準値を1kgあたり500 Bq から100 Bq に引き下げたことは称賛に値します。しかし、各5県ではこれよりも低い水準値を設定しています。さらに、住民はこの基準の導入について不安を募らせています。日本政府は、早急に食品安全の施行を強化すべきです。

また、日本政府は、土壌汚染への対応を進めています。長期的目標として汚染レベルが年間20 mSv 未満の地域の放射線レベルは1mSv まで引き下げる、また、年間2050 mSv の地域については、2013 年末までに年間20 mSv 未満に引き下げる、という具体的政策目標を掲げています。ただ、ここでも残念なのは、現在の放射線レベルが年間20 mSv 未満の地域で年間1mSv まで引き下げるという目標について、具体的なスケジュールが決まっていないという点です。更に、他の地域については、汚染除去レベル目標は、年間1 mSv を大きく上回る数値に設定されています。住民は、安全で健康的な環境で暮らす権利があります。従って、日本政府に対して、他の地域について放射線レベルを年間1mSv に引き下げる、明確なスケジュール、指標、ベンチマークを定めた汚染除去活動計画を導入することを要請いたします。汚染除去の実施に際しては、専用の作業員を雇用し、作業員の手で実施される予定であることを知り、結構なことであると思いました。しかし、一部の汚染除去作業が、住人自身の手で、しかも適切な設備や放射線被ばくに伴う悪影響に関する情報も無く行われているのは残念なことです。

また、日本政府は、全ての避難者に対して、経済的支援や補助金を継続または復活させ、避難するのか、それとも自宅に戻るのか、どちらを希望するか、避難者が自分の意志で判断できるようにするべきです。これは、日本政府の計画に対する避難者の信頼構築にもつながります。

訪問中、多くの人々が、東京電力は、原発事故の責任に対する説明義務を果たしていないことへの懸念を示しました。日本政府が東京電力株式の大多数を所有していること、これは突き詰めれば、納税者がつけを払わされる可能性があるということでもあります。健康を享受する権利の枠組みにおいては、訴訟にもつながる誤った行為に関わる責任者の説明責任を定めています。従って、日本政府は、東京電力も説明責任があることを明確にし、納税者が最終的な責任を負わされることのないようにしなければなりません。

訪問中、被害にあわれた住民の方々、特に、障がい者、若い母親、妊婦、子ども、お年寄りなどの方々から、自分たちに影響がおよぶ決定に対して発言権がない、という言葉を耳にしました。健康を享受する権利の枠組みにおいては、地域に影響がおよぶ決定に際して、そうした影響がおよぶすべての地域が決定プロセスに参加するよう、国に求めています。つまり、今回被害にあわれた人々は、意思決定プロセス、さらには実行、モニタリング、説明責任プロセスにも参加する必要があるということです。こうした参加を通じて、決定事項が全体に伝わるだけではなく、被害にあった地域の政府に対する信頼強化にもつながるのです。これは、効率的に災害からの復興を成し遂げるためにも必要であると思われます。

日本政府に対して、被害に合われた人々、特に社会的弱者を、すべての意思決定プロセスに十分に参加してもらうよう要請いたします。こうしたプロセスには、健康管理調査の策定、避難所の設計、汚染除去の実施等に関する参加などが挙げられるでしょう。

この点について、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」が2012 6 月に制定されたことを歓迎します。この法律は、原子力事故により影響を受けた人々の支援およびケアに関する枠組みを定めたものです。同法はまだ施行されておらず、私は日本政府に対して、同法を早急に施行する方策を講じることを要請いたします。これは日本政府にとって、社会低弱者を含む、被害を受けた地域が十分に参加する形で基本方針や関連規制の枠組みを定める、よい機会になるでしょう。

ご清聴ありがとうございました。



* *** *
動画はYoutube の日本記者クラブ専用チャンネルで見ることができます。
(原文はこちら http://unic.or.jp/unic/press_release/2869/

2012年11月25日日曜日

第9回 県民健康管理調査・記者会見のまとめ


 “秘密会”の存在が問題になっている「県民健康管理調査検討委員会」。第9回目となる同会が1118日、福島市にて開催されました。
 謝罪や釈明があるのか、改善策は示されるのか――。注目していた人も多かったはずですが、山下氏はじめ委員会側が発表した改善策は、以下の報道の通り中途半端なもので、県民の信頼を回復できるような内容ではありませんでした。

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【毎日新聞】

福島県:健康調査検討委 秘密会問題で山下座長が謝罪
20121118日 1836分(最終更新 1118日 1848
 東京電力福島第1原発事故を受け福島県が実施している県民健康管理調査の検討委員会が18日、福島市内で開かれた。秘密裏に事前の準備会(秘密会)を開いて意見調整するなどしていた問題が発覚して以降初めての会議で、座長の山下俊一・県立医大副学長は「委員の方々には大変ご迷惑をおかけした。心からおわびしたい」と陳謝。「きちんと議論を公開して行いたい」と述べ、会議の透明性を高める考えを示した。
 県側は、検討委の設置要綱で規定していなかった会議の原則公開や議事録作成について明文化するなどの改善策を明らかにした。このほか、原発のある同県双葉郡の医師会会長と、県臨床心理士会副会長を新たに委員に加え、県保健福祉部長は委員から退いた。県によると、今回は事前に準備会を開催していないという。
 会議後に記者会見した山下氏は「(震災後の)混乱の中で検討委を設置したので不備は仕方ないと思う」と説明。自身の責任を問われると「私の人事は県にお任せしている」と述べるにとどめた。
 また、この日の会議では、健康管理調査の一環として事故時18歳以下の住民を対象に実施している甲状腺検査で、がんの疑いがあるとして「直ちに2次検査を要する」と判定された16歳以上の女性が1人いたことが報告された。がんかどうかを詳しく調べている。
【日野行介、蓬田正志】
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 しかも、検討会終了後には、毎回開いていた記者会見もせずに立ち去ろうとする始末。マスコミ関係者や傍聴人から、「記者会見もせずに逃げるのか!」といった強い抗議があって、ようやく開かれることになるという有様でした。
 私自身はIWJのアーカイブを視聴したのですが、検討会が淡々と行われたのと対照的に、終了後の記者会見がとても中身のあるものだったので、主要な質疑をピックアップして以下にまとめてみました。改めて文字にしてみると、県の役人やお偉い先生たちが、いかに質問をはぐらかしてあいまいに答えているかがよく分かります。
 ご興味のある方は、以下の注意点に留意してご一読ください。
 
  

――記者会見の質疑まとめをお読みくださるみなさまへ――
 この「まとめ」は、たんなる文字お越しではなく、ある程度話し言葉を整理して掲載しております。発言の趣旨は十分吟味しているつもりですが、私が話し手の意図と異なる解釈をしている可能性もありますので、正確なニュアンスをお知りになりたい方はアーカイブをご試聴くださいませ。

IWJ

■質疑の回答者メンバーは以下の通り■

鈴木眞一(福島県立医科大学医学部 器官制御外科学講座教授)
大津留 晶(福島県立医科大学医学部 放射線健康管理学講座教授)
安村 誠司(福島県立医科大学医学部 公衆衛生学講座主任(教授))
佐々 恵一氏(保健福祉部健康管理調査室室長)


【甲状腺検査についての質疑】

《質疑者IWJ 満田》
まず、甲状腺検査の結果についてだが、以前から市民団体の方々が、検査の判定結果と地理的な線量の相関関係について情報開示をしてほしいと依頼しているが、これについては検討していただけたか。
また、甲状腺ガンのみならず甲状腺の機能低下についても調査してほしいと要望があがっているが、これについて何か検討されているようであれば教えていただきたい。

《回答者:鈴木》
検査の判定結果と地理的な線量の相関関係にかんする情報開示だが、国が指定している避難地域から検査がはじまっているので、その市町村ごとの集計データはあると思うが、市町村ごとに相関関係を出すとなると、かなり母数が少なくなる地域がある。そうなると、個人を想定されるようなことが起こり得る可能性もあるので、中通りから県内全部の検査が終わったところで開示できるのではないかと考えている。

2点目について。甲状腺の機能低下を調査することは、放射線の影響を知るうえで必要だという意見があるようだが、ご存じのように、甲状腺の機能低下があったからといって、それが放射線の影響かどうかは分からない。昨年、長野県の信州大学でも甲状腺機能を測ったということで話題を呼んだが、基準値を少しでも超えたからといって甲状腺機能異常ということはない。甲状腺の機能低下には、放射線の影響だけでなく、多数いろんな要因があるので、それをもって放射線の影響を見るということは無意味であり、従って一次検査では甲状腺機能は測らない。二次検査に来られたお子さんにかんしては、なんとか全員測っている。しかし、二次検査においても、甲状腺機能が低下している子どもは100人中ひとりいるかいないかくらいだ。しかも、すでに治療をされているような方以外はいなかったので、甲状腺異常は極めて少ない。そのため、一次検査で甲状腺機能を検査するということは考えていない。

《質疑者:朝日新聞社》
今回、甲状腺の二次検査を受けた方の中で、ガンとか他の悪性疾患とか、どういう内訳だったのか、二次検査の結果の詳細を教えていただきたい。また今回、「ただちに2次検査が必要」とされるC判定が出たということだが、この方はどういう状況でC判定なのか教えてほしい。

《回答者:鈴木》
 C判定の方は、郵送した通知を見て驚かれないように、まず私から直接お電話をして二次検査に来ていただくようお願いし、同時に通知も郵送した。ご本人の都合で、当日でも翌日でも来られるような体勢をつくった。
どういう方がC判定かというと、一番は二次検査を急ぐ人。急ぐ人とはどういう人かというと、悪性・良性にかかわらず治療がすぐに必要だと思われる人。一般論としては、甲状腺が巨大になっていて、症状が出やすい人。また、判定会で悪性の疑いが強いと思われた人などだ。
二次検査の結果については、資料の中にも記されているが、一名ガンが出たということだから、細胞診を実施した36人中ひとりが悪性腫瘍。残りは良性ないしは、再検査をしている。

《質疑者:福島テレビ》
C判定の方についてだが、この方の進捗状況はどうなっているのか。

《回答者:鈴木》
すでに外来にこられて二次検査をしているところ。その結果については、まだ出ていない。

《質疑者:NHK ETV
郡山で114日に開かれた甲状腺検査の説明会で、鈴木先生はセシウムによる内部被曝のデータや、事故直後に、いわき・川俣・飯舘で行った簡易サーべメーターによる甲状腺被曝調査などの数値が比較的低いことなどを根拠に、「現在行われている甲状腺検査は、甲状腺ガンの増加がないことを確認していくための検査だ」と述べていた。山下座長にお聞きしたいのだが、こういう姿勢で間違いないか。

(ママレボからの捕捉:鈴木氏は、114日に郡山で開かれた甲状腺検査説明会において、下記の資料を用いて「甲状腺への等価線量は最大で35ミリシーベルトであったため、甲状腺ガンが発症する確立は極めて低い」と説明)





《回答者:山下》
誤解がある。甲状腺の検査は、生涯やっていく必要がある。明らかなヨウ素による被曝線量は分からないため、これをもって我々がどうこういえない。だからしっかり見守っていくというスタンスでご説明したのだと思う。

《質疑者:NHK ETV
鈴木先生は、そういった説明をしていなかった。では、内部被曝線量も分からないし、初期のヨウ素による被曝についても分かっていないということか。

《回答者:山下》
原子力安全委員会で調査した1080名のデータと、いくつかのデータしかない。それらを見るとすべて50ミリシーベルト以下なので、チェルノブイリの平均被曝線量と比べて圧倒的に違う(低い)ということだけはいえる。しかし全員を調べたわけではないので、これについては分からないというのが正確なところだ。


《質疑者:NHK ETV
加えて、鈴木先生の説明資料の中に、「甲状腺ガンの増加は内部被曝100ミリシーベルト以上で増加」という記述があった。この認識はまちがいじゃないかと思うのだが。

《回答者:山下》
しきい値があるかどうかという質問だと思うが、外部被曝線量の場合は100ミリシーベルト以上で有意な差が出るということは大方認められている。内部被曝については、甲状腺等価線量がどのくらいかという議論がある。事故の前は、安定ヨウ素剤の服用基準は100ミリシーベルトだった。事故のあと、IAEAWHOの勧告を受けて、50ミリシーベルトで安定ヨウ素剤の服用すると決まった。しかし、これは決して50ミリシーベルトで甲状腺ガンになるということではない。安全域を広くとって、50ミリシーベルトで服用しようと議論されている。

《質疑者:NHK ETV
IAEAが参照している論文の中にも、99年にヤコブが発表した論文で、平均50ミリグレイ被曝した集団で、甲状腺ガンの有意な増加が認められたと書かれている。そういう点も含めて100ミリシーベルト以上でないと有意な増加はない」という説明は非常にミスリーディングな説明だと思うのだが、見解を聞かせてほしい。

《回答者:山下》
線量の評価が非常に難しい。ヤコブはウクライナの研究者だが、ドイツに移って、ずっとそのことを主張している。低線量域の被曝線量は非常にあいまいなので、IAEAは安全域をとって50ミリシーベルトとしている。

《質疑者:NHK ETV
そういった国際的にも採用されている論文がある中で、県民に対する説明として、「100ミリシーベルト以上でないと有意な増加が確認されない」というスタンスで説明することは、かえって県民からの不信を招くと思うが。

《回答者:山下》
絶対に安全とか、絶対ゼロということはないので、そういう意味できちんと見守りをしますというのが我々のメッセージだ。

《質疑者:毎日新聞》
今回、甲状腺検査の結果でC判定を受けたのは16歳以上の子どもということで良いのか。

《回答者:鈴木》
下の表を読んでいただくことそういうことになる。



《質疑者:毎日新聞》
もうすでに二次検査をされているのか。

《回答者:鈴木》
二次検査にこられて通常の検査のルートに乗っている。

《質疑者:毎日新聞》
まだガンだと正式に判明したわけじゃないということか。

《回答者:鈴木》
そういう具体的なことは教えられないし、まだ検査の途中だ。

《質疑者:毎日新聞》
検査を終えているのか終えていないのか、それを確認したい。

《回答者:鈴木》
終えていない。

《質疑者:毎日新聞》
今回の原発事故との因果関係についてどう考えているか、見解をお聞かせいただきたい。

《回答者:鈴木》
まだ検査をしている途中なので、答えようがない。我々はきちっと検査をしながら、分かったことに対して答えていく。検査もしないうちにそういうことが分かるわけはない。これからきちんと見ていくということだ。

《質疑者:IWJ
鈴木先生は、これまでの甲状腺検査の説明会で、「甲状腺ガンは症状が出るまでに時間がかかる」とか、「予後が比較的良好である」とか発言していたが、それは一般的な甲状腺ガンだと思うのだが。山下先生もいろいろ論文を出されていると思うが、チェルノブイリ等の治験から考えると、「被曝による小児甲状腺ガンは比較的進行が早い」あるいは「転移しやすくて予後については大人の場合よりも悪い」というようなことが書かれていたのだが、そのあたりについてはどうか。一般的な甲状腺ガンとは違う点や、チェルノブイリの状況などはきちんと説明すべきだと思うが。

《回答者:鈴木》
先ほど山下先生がおっしゃったように、チェルノブイリと福島は甲状腺への被曝線量が違うということもあるが、山下先生たちが発表しているように、チェルノブイリでは小児甲状腺ガンは4-5年後から急にふ増えた。進行が早くリンパ節転移や肺転移が多いのだが、それでも治療経過は良い。チェルノブイリでも当初は、いわゆる低分化ガン*が発症したといわれていたのだが、これは小児に特有で、とくにチェルノブイリの低ヨウ土地域に見られる充実型というタイプのガン、それが日本でも見られる低分化型、いわゆる非常に進行が早いガンと似ているということで当初はそれじゃないかといわれていた。しかし最近、とくに低ヨウ土の地域で発症するのではないかといわれている。最近、認識が変わってきているのではないか。

*発生した組織の細胞との類似性が少ないものを「低分化」といい、細胞の形が未熟なガンを低分化ガンという。低分化ガンほど悪性度が高くなる


【基本調査に関する質問事項】

《質疑者:IWJ
健康調査の回答率が低いということが問題になっている。以前から健康管理調査に関して、県民から山下先生ご自身に対する不満・不信があって、それが基礎調査の回答率の低さに関係しているのではないかと見るむきもある。その点に関してどう考えているか。
次に「秘密会」(準備会)について、県のほうから報告があったが、山下先生自身は座長として、準備会を今後も継続してやっていくつもりなのかという点に関して見解をうかがいたい。

《回答者:山下》
いずれも私個人に対する質問だと思うが、人事に関しては県にお任せしている。もうひとつのご質問である、県民健康調査の回答率に関しては、私自身の発言がネガティブに働いているとするならば、本当に申し訳ないと思っている。これに対しては、私の発言が要因だとすれば、県に人事をお任せしたいと思っている。

《質疑者:IWJ
私は、山下先生自身の考えを知りたいのだが。秘密会(準備会)に関しても見解を述べてほしい。

《回答者:山下》
準備会についてだが、これは県の名誉のためにも申し上げたいのだが、昨年の56月、まさに混乱の中でこういう事業を立ち上げたので、いろんな意味で運営上の不備があったということは、いたしかたなかっただろうと思っている。だが、決して結論ありきだとか、準備会を行うことでなんらかの合意があったということではないので、逆に委員の先生方に大変なご迷惑をおかけした反省をしている。そういう意味で申し訳ないと思っている。

《質疑者:IWJ
県の責任であって、山下先生の責任ではないと考えておられるということか。

《回答者:山下》
県も座長の私も同じ責任だと思っている。

《質疑者:毎日新聞》
資料の中で、今回「地域別・線量別推計」について、新たな推計結果が出ていないということだが、データの最高値を見ると県北で最高11ミリシーベルト被曝した方がいる、という認識で良いのか。つまり、川俣町山木屋地区などをのぞいたところで、最高11ミリシーベルトが出たと考えて良いのか。




《回答者:大津留》
そうだ。

《質疑者:毎日新聞》
県北というと、どのあたりかということが、非常に関心があると思うが。

《回答者:佐々》
私のほうから捕捉させていただくと、県北というと、福島から本宮まで。通常、福島県で分けている管内で、県北・県南・県中・会津・いわきという区分で集計した。

《質疑者:毎日新聞》
11ミリシーベルトは、先行調査地域以外で最高値なのかということと、この方はどういう行動パターンだったのかということを明らかにしてほしい。

《回答者:佐々》
この方については、先行調査地区以外で、新たなに推計された方に間違いなく、長時間屋外にいた方という行動記録を書かれていると報告を受けている。

《質疑者:毎日新聞》
県北在住者ということで間違いないか、避難者ではなく。

《回答者:佐々》
基本調査に関しては、311日から41日までどこにいたかということが基本になるので、県北の方ということになる。

《質疑者:毎日新聞》
被曝線量は高いのか、低いのか、見解をうかがいたいのだが。

《回答者:大津留》
もちろん県北の中で一番高いということは間違いないと思うが、この方にどのようにお知らせするかということは、ただいま検討中だ。

《質疑者:毎日新聞》
そういうことをお聞きしているわけではなく、見解をお聞きしたいのだが。11ミリシーベルトは高いのか、低いのか。我々は、この方がどういう地域でどのように生活されていたのかまったく分からないので、説明してもらわないと分からない。

《回答者:大津留》
行動に関して、事細かく把握していないのだが、線量が高い地域で屋外に長くいらっしゃったということで線量が高くなるということはあると思う。それに対する評価を求めているのか?この被曝した方に対して、どうサポートしていくかと、そういうことをお聞きになりたいのか?

《質疑者:毎日新聞》
11ミリシーベルトという値が、先行地域以外で出たということに対して、どう考えてらっしゃるのかということを知りたい。

《回答者:大津留》
他の地域もそうなのだが、線量の高い地域で仕事をしたり、移動したりしていた方は、相対的に高くなるという結果が出ていることは間違いないと思う。それをどう評価するかという点に関しては、今後検討したいと思う。

《回答者:安村》
この11ミリシーベルト被曝した方に関して、屋外での活動の際に、比較的線量の高い地域で屋外活動の時間が長かったということで数値が高くなったというふうに考えられるというところまでは分かっている。避難中であったかどうかという点については、いわゆる屋外活動というふうにご理解いただいたほうがいいと思う。統一見解ではないのだが、この線量が高いか低いかという点については、相対的に高いということは間違いないと思うが、リスクとして高いと認識しているかというと、結果的に10でも20でも50でも、起こるであろう将来的な発ガンだとか、そういうことに関するリスクとしては当然高いということにな思うので、現時点では相対的に高かったと私たちは認識しているし、これが実際にリスクとしてどうなのかとことはこれから評価しないといけない、というのが私の理解だ。

《質疑者:IWJ 岩田》
質問が3点ある。3ページ(下記の表)の実行推計線量の状況というのは、最初の4か月間のデータということで良いか。


2番目の質問。これは外部線量の推計かと思うが、放医研で内部被曝あるいは、短命核種の線量評価というのがはじまっていると思うが、これに関してどれくらい把握されているか教えてほしい
3番目の質問。この表は最初の4か月間の外部被曝積算であって、それ以後これらの方たちの積算線量の内訳というのは把握されているのか。

《回答者:大津留》
最初の4か月間のデータということで間違いない。その後は、ガラスバッチで積算するか、推計で積算するかという問題があると思うが、現存の慢性被曝に関しては、推計よりガラスバッチを優先したほうがいいんじゃないかということで、市町村でそういう調査がなされている。そのデータを基本調査のデータの中に入れていく。もちろんそれが十分かどうかは今後議論をする必要があるかもしれない。それから内部被曝のほうは、おっしゃったように放医研でシミュレーションをされているが、それをこの基本調査に入れて、より良いものにできるかどうかというのは、今検討中だ。

《質疑者:IWJ 岩田》
放医研とは別に、福島医大のほうで初期の内部被曝の評価ということはしないのか。

《回答者:大津留》
基本調査の中ではやっていない。福島医大としてもやっていない。

《質疑者:IWJ 岩田》
もう一点、4ページ(下記)の評価というところで、「これまでの疫学調査より100ミリシーベルト以下での明らかな健康影響は確認されていない」と書かれているが、ここでおっしゃっている100ミリシーベルトというのは、単位としては生涯か、年か。つまり積算ということか。




《回答者:大津留》
線量率という問題があると思うが、疫学調査がしっかりなされているものの多くは、やはり短い期間、つまり線量率が高い被曝の結果が多いと思う。慢性的な被曝でも線量率が高い被曝調査を指すことが多いので、今回の原発事故のようなゆっくりした被曝という場合に、もちろん結論は出ていないが、線量率が高いような被曝で、かつ100ミリシーベルト前後。あくまでも疫学調査としては有意差が出ないほどのリスクだということを考えると、線量率がもっと少ないところは、予想としてはもっと少なくなる。ただそれを防護の観点で、生涯の被曝線量をどのくらいにするかというのは議論があって、厚生労働省の食品安全委員会では内部被曝を生涯100ミリシーベルトにするのがいいかもしれないという意見もあるので、そこに関しては今我々がどこまでと考えているかというのは、お伝えしづらい点だ。

《質疑者:IWJ 岩田》
ひとつ関連した質問なのだが、チェルノブイリのときも補償のゾーン設定などをする際に、将来の被曝線量率がカギになっていたが、検討委員会として、初期の被曝も含めて、継続的に被曝していったときに、生涯どれくらいの被曝線量が基準になるのか、といった点に関して考えがあれば聞かせてほしい。

《回答者:山下》
それは検討委員会としての見解か?

《質疑者:IWJ岩田》
そうだ。食品安全委員会では生涯内部被曝で100ミリシーベルトという見解を出したが、県民健康管理調査としてどのようなお考えを持っていらっしゃるか。

《回答者:山下》
基本的に疫学調査では、広島・長崎の高い線量率というのを元に、100ミリシーベルト以下では非常に健康影響が考えにくいというスタンスだ。国が出していない段階でコメントできないが、ICRPやその他の機関でもずっと議論が続いている。とくに職業被曝に関しては、5年間で100ミリシーベルト、年間被曝線量も50年間働いたとして1シーベルト超さないということが職業被曝でも規定されているので、いろんな意味で議論は深まっていくと思う。今回、軽々にいくらということはいえないが、おそらく国のほうでも議論があるだろう。チェルノブイリの場合は、ご存じのように生涯被曝線量はずっと議論されているが、結論は出なかった。5年間で国が崩壊する直前に、生涯被曝線量50ミリシーベルトというのが一時提示されたが、これは結局認められていないので、一般公衆に線量限度を決めるというのは極めて困難だろうと個人的には考えている。

《質疑者:IWJ 岩田》
しかし山下先生は、リスクアドバイザーとして、医科大でリスクをアドバイスされてきている。そうなったときに、自分たちはこうした基準を持っているといったものは今現在、国と同一の見解になるか分からないが、何かしらのものを持っていないとリスクアドバイスというのは成り立たないと思うのだが。

《回答者:山下》
基本的な考え方として、基本調査で現状がだいたい分かってきたので、これをもって基本調査から詳細調査にうつる基準は議論されていくと思う。これはまだ私たち検討していないので、これからの問題だと考えている。

《質疑者:毎日新聞》
これは事務局にうかがいたいのだが、今回、準備会は開いているのかどうか。二点目は、今回から保健福祉部の菅野部長が委員から外れて事務局に専念されるということだが、どういうお考えで、委員から外れて事務局に専念することになったのか。それから三点目は、新しい委員の方、たしか109日の内部調査結果の報告の中では、放送関係者および報道関係者が新たに参加するということで、ご説明があったと思うが、今日見る限りだと、両方とも報道や放送ではないので、どういう基準、どういう経過で選ばれたのかを明らかにしなければ、どういう形で不信感を払拭しようとしているのか分からない。
あと、準備会の議事録を情報開示請求しており、それが公開されたのだが、これはホームページで公開するおつもりがあるのかどうか。正直なことをいえば、本会議よりかなり実質的な議論をしているので、公開したほうがいいと思うが、いかがか。あと最後、改善策はこれで十分だと認識されているのか、これで県民の信頼が得られると思っていらっしゃるのか。

《回答者:佐々》
部長は今不在のため、事務局を担当している私のほうから答える。ひとつめ、準備会に関しては、今回は開催していない。ふたつめは、県民健康管理調査の設置要項によると、専門的見地から広く意見を得るために検討会を設置させていただいている。その原点に立ち返って、事務局である部長は事務局の作業に徹するべきだろうという判断から、今回委員を外れたということになる。

《質疑者:毎日新聞》
部長が入っていると、議論の誘導を招きかねないという趣旨と考えて良いのか。

《回答者:佐々》
いえそういうことではなく、単純に原点に立ち返ったときに、専門的見地から広く助言をいただくと。そういう観点で、部長が委員として入っていることに、若干の問題はないのかということで外れたということだ。

《質疑者:毎日新聞》
これまでは何が問題だったということなのか?

《回答者:佐々》
事務局でもある部長が、助言をいただく場である検討委員会に入っていることに若干の違和感を抱いて整理させていただいたということだ。

《質疑者:毎日新聞》
違和感というのはどういうことか?

《回答者:佐々》
私ども県として助言をいただくところに、助言する委員として部長が入っていることがいかがかということで、整理した。

《質疑者:毎日新聞》
今の説明ではよく分からない。

《回答者:佐々》
これ以上の意味はない。検討委員会の委員の先生方から助言をいただくというのが検討委員会の趣旨なので、そこに委員として事務局である部長がいるということがなんとなくおかしいと思って抜けた。

《質疑者:毎日新聞》
では、問題があるという認識なのか。

《回答者:佐々》
問題があるということではない。検討委員会という助言をいただく場で、助言をいただく委員に自分たちの事務局の一員である部長がいるということに違和感を抱いた。それが問題といえば問題だと思うが。

《質疑者:毎日新聞》
問題だという認識だから外れたんじゃないのか。

《回答者:佐々》
違和感があるということだ。

《質疑者:毎日新聞》
違和感というのは、誰が違和感を抱いているのか。

《回答者:佐々》
私たちの違和感だ。

《質疑者:毎日新聞》
部長が委員会のメンバーから外れるという決定は、誰がしたのか。

《回答者:佐々》
決定事項は知事指名なので、決済は部長代決だ。

《質疑者:毎日新聞》
部長。では部長ご自身の判断で外れたということか。

《回答者:佐々》
当然、それもあると思う。

《質疑者:毎日新聞》
では部長みずからの判断で外れたということで認識して良いか。

《回答者:佐々》
いや、決済したということなので、外すことに適正と認めたということだと思う。
今回新たな委員の増員については、109日にいろんなイメージをお話しさせていただいたが、関係機関との協議が整ったという観点で、今回、井坂晶先生(双葉郡医師会長)と成井香苗先生(福島県臨床心理士会副会長)に入っていただいた。その他の候補として関係機関と調整した方は、まだ調整が整っていないということだ。

《質疑者:毎日新聞》
関係機関とはどこか。委員を選出する基準は何なのか。

《回答者:佐々》
先ほど放送界からという話もあったが、私どもとしては、検討会の委員としてどなたかご推薦いただけないかということで、関係機関に協議をさせていただいた。

《質疑者:毎日新聞》
どのくらいの期間で、あと何人くらい増やそうと考えているのか。そのあたりを開示してもらえないか。

《回答者:佐々》
どのくらいの期間で、あと何人くらい増やすかというのは調整をしながらすすめていきたいと考えている。

《質疑者:毎日新聞》
それは開示できないということか。関係機関といわれても分からない。
どういう機関、何団体くらいに推薦してくださいと求めているのか。それを明らかにしてください、という質問だ。

《回答者:佐々》
たとえば、今回、成井先生に関しては、最終的には臨床心理士会のほうに推薦をいただくという形になった。その経過としては、109日に発表させていただいた観点の中で、文字には入っていないが、県民の不安という観点で心理学的なアプローチをどのように確保するかというのは、ひとつの検討ではないかと考えていた。
何人かの先生がたに、どのような先生がおられますかとご相談させていただいた中で、臨床心理士会に推薦していただいたらどうかという話になった。そういうアドバイスを受けながら、内部で検討して、臨床心理士会に推薦をお願いして、今回、成井先生を推薦していただいたという経緯だ。井坂先生に関しても、やはり、双葉郡にお住まいになっていて、避難という重大な局面をみずからご経験なさっているというような立場の専門家の方がいらっしゃらないか、というようなご意見もあったので、いろいろ検討した中で、こちらについても最終的には県の医師会のほうに推薦いただいた。
透明性の確保という観点もあるが、継続して行う県民健康管理調査を、より確実に実施していくためには、さらに専門性を高めるべきだろうという観点で委員の追加、選任、増員を引き続き検討していくという形だ。

《質疑者:毎日新聞》
準備会の議事録は、本会議の議事録のようにホームページ上でアップしないのか、という質問に関してはどうか。

《回答者:佐々》
現時点で検討はしていない。

《質疑者:毎日新聞》
それはなぜか。

《回答者:佐々》
いずれ今回のご指摘を踏まえ、すべて開示できるものについてはしていくという作業をすすめていく。当該のメモについても今後の検討の中でホームページなどでの開示を含めて検討はするが、今のところそれについての具体的な見通しは立てていない。

《質疑者:毎日新聞》
今の説明だと、準備会の議事録については、ホームページへのアップは必要ないという趣旨に聞こえたが、そういう解釈でよろしいか。

《回答者:佐々》
必要ないのではなくて、今後、いろんなところで検討されるべきものだと思っている。

《質疑者:毎日新聞》
どういうところで検討されるのか?

《回答者:佐々》
県内部で。

《質疑者:毎日新聞》
県内部で検討するのか。検討委員会で検討するわけじゃないということか。

《回答者:佐々》
検討委員会ではなく、県内部で検討する。

《質疑者:毎日新聞》
今のところは考えてないと。

《回答者:佐々》
今のところは、そこまでの作業にまで至っていない。

《質疑者:毎日新聞》
改善策は十分だと思っているか、という質問に関してはどうか。

《回答者:佐々》
改善策については、当面、今のイメージで取り組んでいるところなので、随時必要性があれば改善していくことになろうと思う。

《質疑者:通販生活》
改善策に関して、外部委員を今後も増やす予定があるということだが、たとえば甲状腺検査の場合だと、この委員会では山下先生と鈴木先生が専門だと思うが、おふたりとも45年以内のガン発症に関しては、放射能由来とは考えにくいというお考えだ。しかし、同じようにチェルノブイリにかかわった専門家の中にも、「放射能由来ではないと断定しないほうがいい」という専門家もいる。そういう異なる意見を持った専門家も入れて、検査結果などをフォローしていくほうがいいと思うが、そのあたりはどう思われるか。

《回答者:佐々》
前段として、今お話しされたように山下、鈴木両先生が、急速にそういうふうに結論づけていくという印象は私は持っていないが、ご指摘の点に関してはいろいろご意見があると思うので、認識はしていく。

《質疑者:通販生活》
今後、そういうことで検討していただけると解釈して良いか。

《回答者:佐々》
私どもとしては、いろんな意見をお持ちになっているということは極めて良いことだと思うので、そういう意見が、どのような場でどのようにお寄せいただくかは検討していきたい。

《質疑者:通販生活》
検討した結果は開示していただけるのか。どういう経緯で決まったかによって、信頼に足るものか否かが変わってくるので、それは明らかにしていただきたい。
それから、もうひとつ。県民の意見を反映させるために新たな委員を追加すると書いてあるが、県民の意見を反映させるのであれば、甲状腺検査の説明会のときに県民からいろんな声があがったと思うが、その声をこういう検討会の場で議題としてとりあげていくべきだと思うが、それについてはいかがか。

《回答者:佐々》
当然、そういうこともあろうかと思う。

《質疑者:毎日新聞》
前回8回目の検討委員会の最後に、山下座長が各市町村でホールボディカウンターを実施しているので、それをデータベースとして集約してほしいとおっしゃっていたが、それはどうなったか。

《回答者:事務局》名前は不明
データベースの構築は来年度行うことになっていて、データベース等、今年度集められるものは集めようということになっている。ホールボディカウンタに関しては、まず県が実施した結果を医大に移すということを担当者レベルで話をしている。市町村については、それが行われたあとに、市町村にアプローチして医大に集約したいと考えている。


以上。

(まとめ ママレボ編集チーム 和田秀子)


※ 当日の配付資料はこちらからダウンロードできます。

(資料提供:武本泰さん)