「ママレボ通信」では、「ママレボ」の雑誌には掲載されなかった、日々の取材でのこぼれ話やレポートをアップしていく予定です。

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2014年12月31日水曜日

ママレボからのご挨拶と、最新記事のご紹介

こんにちは、ママレボの和田です。
とうとう、ことし最後の一日となってしまいました。
ママレボから皆さまへ、感謝を込めて年末のご挨拶をさせていただきたく、記事を投稿しております。

■ママレボ9号の発行につきまして

まずはお詫びからです。
12月に発行予定だった「ママレボ9号」の制作が遅れております。
ことし後半に私が体調を崩してしまったためですが、皆さまにご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。
ただいま鋭意製作中ですので、年始特大号として1月中には発行できるように取り組んでおります
いましばらくお待ちいただければ幸いです。


■ママレボ通信(ブログ)記事を更新しております!

なんとか年内にお知らせしたい…と、ここ数日、立て続けにブログを更新しております。
深刻な問題ばかりなのですが、ぜひ年末・年始のお時間があるときに、お読みいただければ幸いです。

民主主義はどこへ?――強制解除される南相馬市・特定避難勧奨地点


住民のほとんどが避難解除に反対しているにもかかわらず、12月28日に十分な説明もないまま解除されてしまいました。
こどもみらい測定所さんと、ママレボチームで、12月29日に実際に解除されてしまった南相馬の特定避難勧奨地点のお宅を
まわり、測定させていただくとともに、インタビューもさせていただきました。
ママレボ&こどみらスタッフの吉田千亜さんが、その様子をツイキャスでアップしてくれましたので、お時間のある方はぜひ
ご覧下さいませ。
ツイキャスはこちら↓




ことしの夏に、ママレボと、「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」が合同で実施したアンケート調査です。
福島のみなさんの、福島県立医大に対する不信感が浮き彫りになっております。また、保護者の方々から集まった切実な声も、
ぜひご一読いただきたいと思います。


ことし10月下旬に郡山の公園などを測定したレポートです。
福島県内の子どもたちが置かれた深刻な現状がご理解いただけると思います。

また、ママレボ&こどみらの吉田千亜さんによる詳細な測定レポートも、「こどけん」のブログにアップしております。


■環境省の専門家会議のパブコメ受付中です!

ママレボでも傍聴レポートをお送りしてきて環境省の「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」。このところ、レポートが追いついておらず申し訳ありません!
12月25日に最終の会議が開かれ、とうとう「専門家」による、中間取りまとめが発表されてしまいました。
その内容は、「関東の子どもたちには当面、検診は必要なく、福島県内についても、疫学調査として充実させていく必要はあるが、
被ばく線量の低い地域の検診については今後見直しが必要」といった縮小に傾く内容でした。

 中間とりまとめ内容はこちら→ http://www.env.go.jp/press/files/jp/25691.pdf


環境省は、この専門家によるとりまとめを受けて、「当面の施策の方向性(案)」という発表を行いました。

この案によると、関東のホットスポットの子どもたちの健康リスクはまったく無視し
あくまでも、「被ばくは少ないから問題ない」ということを刷り込む “リスクコミュニケーション”のみに力を注ぐという趣旨のことが書かれています。

ぜひ、これについて、みなさまのご意見を、下記から送っていただければと存じます。



大晦日にもかかわらず、重い内容のお知らせとなってしまい、申し訳ございません。
来年は、少しでも良い方向へむかうことを、願ってやみません。

それでは、みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください!
また来年も、ママレボをどうぞよろしくお願い致します。


ママレボ出版局 和田秀子

2014年12月28日日曜日

いまだ、あちこちに点在するホットスポットin郡山

 さる1025日、「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」のメンバーでもあり、郡山市内で塾講師を務める根本淑栄さんと、郡山市内の「平成記念郡山こどもの公園」や、市内の藤田川周辺をホットスポットファインダーで測定しました。

 また、空間線量を測定するなかで、とくに線量が高かった場所の土を、こどもみらい測定所(東京都・国分寺市)にて土壌中のセシウムを測定しましたので、そのレポートをお届けします。


除染された芝生は、0.20.3マイクロシーベルト毎時。しかし……

 「塾生が通う中学校の課外授業で、わざわざ放射線量の高い公園に行って、子どもにどんぐり拾いをさせているんです。なんでわざわざそんな被ばくさせるようなことをするんでしょうか……」

 根本さんからそんな電話を受けたのは、ことし10月中旬。
私はさっそく、ホットスポットファインダーをお借りして、根本さんとともに、その公園に、放射線量を測定しに行くことにしました。1025日(土)の秋晴れの日でした。

 課外授業が行われた公園というのは、郡山市内にある「平成記念郡山こどもの公園」。
広々とした芝生が美しく、紅葉が色づきはじめた公園には、小さな子ども連れの親子の姿が多く見られました。


 子どもたちがもっともよく遊ぶ広場の芝生周辺を、ホットスポットファインダーで測定してみたところ、0.20.3マイクロシーベルト毎時くらい。事故前の放射線量が、0.05マイクロシーベルト毎時程度であったことを考えると、けっして低くはありませんが、それでも郡山市内では、「低い」ほうに入ります。
 根本さんいわく、「芝生は除染ではがされているので、線量が低くなっている」のだとか。



移住権利ゾーンなみに汚染された公園で、学校の課外授業が

 しかし、子どもたちが学校の課外授業でどんぐり拾いをしたという場所へ行ってみると、状況はまったく異なりました。
 
 子どもたちがどんぐり拾いをした場所は、こどもの森公園の中でも端のほうに位置する「野鳥・昆虫の森」という湿地帯のようなところ。



 地面は、昨日ふった雨のせいでじめじめしており、いかにも放射性セシウムが沈着していそうな印象でした。

 まず、ホットスポットファインダーで空間線量を測定したところ、0.40.6マイクロシーベルト毎時を超える高い数値が出ました。


 もっとも空間線量が高かった場所の土を、後日、こどもみらい測定所(東京都・国分寺市)で測定していただいたところ、放射性セシウム1375,250ベクレル/キログラム。放射性セシウム1341,670ベクレル/キログラム。
 合計で6,920ベクレル/キログラムもの放射性セシウムが検出されたのです。

クリックすると拡大します


 この値は、チェルノブイリ原発事故で被害を受けたウクライナの基準に照らし合わせると、「移住権利ゾーン」に匹敵することが分かりました。

 1キログラムあたり8,000ベクレルを超えると、“指定廃棄物”として、国の管理のもと処理が必要になります。このことからも、指定廃棄物まではいかないまでも、極めて高い汚染の数値であることはお分かりいただけるでしょう。
 ちなみに、原発事故前は、放射性セシウムの濃度が100ベクレル/キログラムを超える場合は、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めることが定められていたのです。

 なぜ、このような場所で、わざわざ子どもたちを、どんぐり拾いさせねばならないのでしょうか。実際に、どんぐり拾いをした子どもに話を聞いてみると、「昨年までは、こういう課外授業はなく、ことしから始まった」ということです。
 どんぐり拾い以外にも、“森の案内人”という園内にいるガイドさんのすすめに基づき、めずらしい木の葉っぱを、ちぎって匂ったりもしたとのこと。
 「子どもたちを公園で授業させることで、『もう放射能は安全』と印象づけたいのではないか」と推測する保護者もいました。


花見でにぎわう川沿いは、ホットスポットだらけ

 またこの日は、「放射線量が高い場所がある」という知り合いからの通報があり、郡山市内の藤田川を訪れました。
 藤田川沿いには桜の木が何本も植えられており、4月になると川沿いに屋台も出て、多くの花見客でにぎわうのだとか。秋の温かな一日となったこの日も、川べりで遊ぶ親子連れの姿が散見されました。

 しかし、のどかな風景とは裏腹に、この川沿いには、高濃度に汚染された場所がありました。


 藤田川沿いに置かれているベンチの下を測定してみると、1マイクロシーベルト毎時を超えるホットスポット。



 このベンチの下の土を、こどもみらい測定所に測定をお願いしたところ、なんと、放射性セシウム134137の合算で、38,840ベクレル/キログラムも検出されてしまいました。


クリックすると拡大します


 指定廃棄物として厳重管理しなければならないレベルをはるかに超えていますし、ウクライナの基準にあてはめれば、「移住の義務ゾーン」に匹敵します。

  藤田川周辺にお住まいのKさんに話を聞くと、ときどきこのベンチで子どもたちが座っていると言います。Kさんは、以前からここにホットスポットがあることを知っており、郡山市に「除染をしてほしい」と通報したそうですが、「川沿いは国土交通省の管轄になっているから」と言って、除染をしてもらえなかったのだとか。

縦割り行政によって、子どもが被ばくから守られていない実態が浮き彫りになっています。
 あたり一面が、このような高レベル汚染というわけではなく、あくまでもマイクロホットスポットなのですが、県や国は、汚染の実態を把握した以上、早急に除染する義務があるのではないでしょうか。

  また、私たちは、テレビなどのニュースで伝えられている「復興」ばかりが、被災地の現状ではないことを知っておく必要があるでしょう。
 すぐに答えは出なくとも、こうしたリスクにさらされている子どもたちのために、「できること」を考え続け、行動していくことが必要とされています。
 

ママレボ@和田

「福島県民健康調査と体調に関するアンケート」結果 ~県立医大への不信感が浮き彫りに~

 ご報告がたいへん遅くなりましたが、201478月にかけて、「こどもたちの健康と未来を守るプロジェクト」とママレボ出版局は合同で、福島県に住む保護者(現在、避難中の方も含む)約100人に「福島県民健康調査と体調に関するアンケート」を実施しました。
 下記に、その結果を発表させていただくとともに、調査にご協力いただいた皆さまに、この場を借りて御礼申し上げます。

***********

■意外と知られていない甲状腺がんのニュース
 
まず、県民健康調査によって見つかっている子どもの甲状腺がんの人数を、福島県民ですら、半数程度しか把握していないことが、アンケート結果によって浮き彫りになりました。


 こうしたアンケートに回答してくださる時点で、ある程度、健康問題に関心が高い層であることを考慮すると、やはり認知度が低いと言わざるをえません。

 情報が伝わっていない原因はなんなのか――。

 甲状腺がんの子どもの人数を、「知っている」と答えた方に対し、「このニュースを、どのようにして知りましたか?」と質問したところ、「新聞から」(20%)、「テレビから」(19%)と答えた方が、いずれも2割程度だったのに比べると、「インターネットから」と答えた方が35%と比較的高く、既存のマスメディアだけ見ている人には、情報が伝わりづらいことが分かりました。



 と、同時に、検査の実施主体である福島県や県立医大側が、積極的な情報発信を怠っているのでは?という問題点も浮かび上がってきます。

 また、このニュースを知っている方で、「悪性ないし、悪性疑い90人」(平成26331日時点)という数字について、「多いと思った」(65%)「やや多いと思った」(11%)を合わせると、76%にものぼり、結果を深刻に受け止めていることが分かりました。




■エコー検査の方法や説明に納得できない人が約7

 さらに問題なのは、福島県立医大によって行われている甲状腺検査の方法に「あまり納得できなかった」(35%)「まったく納得できなかった」(34%)と解答した方が、合わせて7割近くにものぼっている点です。


 その理由としては、「その場で説明がない」(39%)、検査時間が短い(40%)などで、とくに、「検査結果の通知を郵送するだけで、口頭で説明がない」ことに不満を持っている方が92%にものぼるなど、検査態勢が、県民に寄り添ったものになっていないことが浮き彫りになっています。





 また、県民健康調査の在り方に関する要望や意見を自由回答で記入してもらったところ、

「医大だけで対応できないことは理解している。医大の職員のみ、安定ヨウ素剤を飲ませている状況では、穏やかに話を聞きましょうなどとは無理です」

「原発事故の影響を認め、きちんと調査・検査すべき。福島は安全とうたい、県民に刷り込んでいる」

「エコー検査は、その場で説明できるはずだし、してほしい。エコー画像は個人情報なのだから、個人に渡すべきだ。次の検査までの間隔が空きすぎる」

 といった意見のほか、検査で、お子さんがB判定だったという保護者からは、
「医大の医師だけがエコー写真を眺め、結論だけを説明。患者側は唖然となる。今まで子どもは、普通の生活をしていたのに……。寄り添う姿勢がまったくなく、悔しい思いとなった」
などという意見が出ていました。


■血液検査などを含む検査態勢の充実を

 原発事故後の、お子さんや保護者自身の体調変化については、「疲れやすくなった」「咳がよく出るようになった」「視力が急激に落ちた」「心身が出やすくなった」などの回答が多く、また今後、定期的に子どもに受けさせたい、あるいは自分自身も受けたい検査に関しては、「甲状腺エコー検査」(38%/23%)のほか、「血液検査」(33%/26%)「心電図」(16%/16%)などがあがっていました。






 現在、県民健康調査では、原発20キロ圏内の帰還困難区域などに住んでいた方しか、血液検査等の検査が実施されていません。
 また、この方々に対して実施された「平成 23 年度 県民健康管理調査 健康診査 評価」(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/6456.pdf)という資料の35ページを見ると、「白血球数減少、好中球数減少、リンパ球数減少の割合に、年齢区分や性による大きな偏りはなかった。」と記されており、いずれも正常値より減少していることが指摘されています。
 その後の経過はどうか、また他地域の人たちはどうなのか等は不明のままです。
 血液検査の白血球分画は、被ばくの影響を調べるためには欠かせない項目ですので、実施の検討が急がれます。 

 いずれにせよ、県立医大の対応も含め、現在の県民健康調査の在り方については、県民の意見をしっかりとヒアリングしたうえでの早急な改善が求められています。

 この問題については、まもなく発行予定のママレボ最新号で特集しておりますので、ご期待ください。
 
アンケートの詳細は、下記よりダウンロードしていただけます。


ママレボ@和田秀子



 

民主主義はどこへ?――強制解除される南相馬市・特定避難勧奨地点

今日、20141228日に、南相馬市の特定避難勧奨地点が強制解除されます。いまだに10マイクロシーベルト毎時を超えるホットスポットが点在する南相馬市は、帰還困難・居住制限・避難指示解除準備区域・特定避難勧奨地点が混在する地域です。自主的な避難も含め、今なお2万人以上が避難しています。

201410月に指定解除の方針を発表した政府に対し、説明会で発言した住民のすべてが反対意見だったため、10月内の解除はいったん延期されていました。
その2か月後の1221日、南相馬市で行われた住民説明会で、一方的に解除することが告げられました。



◆撤回要請集会―「補償の問題ではない。行政区長には、住民を守る責任がある」

住民説明会から5日後の20141226日、参議院会館にて、南相馬市特定避難勧奨地点、指定解除の撤回要請集会が緊急に開かれました。民主的ではないやり方での指定解除に反対し、避難勧奨の継続と新たな地域指定を求める集会です。署名も2094筆分が提出されました。それまでにも、1210筆の地域住民の署名、1595筆のネット署名を提出しています。
この日、南相馬市を朝6時に出発し、駆けつけたのは、行政区長、民生委員、避難中のお母さんなど、8名の住民の方々でした。


12月26日の院内集会。メディアも多くかけつけた。


南相馬市原町区の元行政区長でもある、遠藤八郎さんは

「われわれは、孫に『古き良き日本』を教えたかったのに、いまは『原発は恐ろしい、放射能は危険だ』ということを教えなくてはならなくなった」

と話しました。
同じく元行政区長の佐藤光孝さんは

「『安心だから避難指示を解除する』という一方で、『(放射能が危険だから)枯草は燃やしてはならない』という。そこも矛盾しているのではないか。山の仕事も、孫のために残そうとも思わなくなった。30年後を夢見ているが、なんだかはかない」

と胸の内を吐露。
また、大谷地区の行政区長の藤原保正さんは

「応急仮設住宅の供与の延長をまだまだしてくれなければ、帰還せざるを得なくなる。
補償だけの問題じゃないんですよ。補償がほしくて言っているんじゃないんです。住民の命を守る行政区長に、我々に責任があるんです」


と訴えました。

新潟の避難先から会場に駆けつけた杉由美子さんは、以前は、南相馬市原町区で酪農を営んでいました。

「農業を勉強している長男が、いつかどこかで私たち親を呼んで一緒に酪農できたらいいね、と話してくれている。解除と言われると、どう生活していっていいのか不安でいっぱい。まだ教育にお金がかかる子どももいるので、どうしていいのかわからない」

と涙ながらに訴えました。

10月の指定解除通告から、2か月で何が変わったのか

14時からは、内閣府から原子力災害対策本部被災者支援チーム参事官補佐の清水英路氏と課長補佐の阪本裕子氏が参加し、署名を受け取りました。受け取ったあと、あらためて1228日に解除する方針であることを説明。
ICRP(国際放射線防護委員会)も住民の意見を聞くように、と言っているのではないか」という住民の指摘に対し、「説明させていただいております」と返答。最初の解除の発表があった10月からの2か月間に、ボランティアによる「清掃活動」を行い、指定世帯80戸に「個別訪問」をして、説明してきたのだと、釈明しました。

要請文と署名が手渡された


それに対し、南相馬市原町区の林マキコさんは

「清掃なんかで線量は下がらない。掃除だったら私のほうが上手ですよ」

と指摘。
また、80世帯への個別訪問に対しても、藤原保正さんは

「指定世帯が152戸あるうちの80戸だけまわって賛同を得たという判断はおかしい。賛同が何世帯何人いたのか、はっきり答えてほしい」

と詰め寄りました。
それに対し、阪本裕子氏は

「全世帯の個別訪問に同行したわけではないからわからないが、全員が反対であったわけではない。住民説明会では10世帯くらいは賛成していた」
「息子がお金をもらうことに慣れてしまってダメになるという話も聞いたことがある」

と答えました。
会場からは怒りの声、あきれたような溜息がもれました。

◆「反対されている方も多くいると思っています」

「今の時点で、住民の理解を得られていると思いますか?」という再三の質問に対し、の清水英路氏が

「反対されている方も多くいると思っている」

と答えた場面がありました。

「それならば、民主主義ではない」

と南相馬・避難勧奨地域の会の世話人、小澤洋一さんが強く詰め寄りました。
「ここはガス抜きの場ではない。撤回してほしいんです」という声もあがりましたが、清水氏からは、「不安を解消します」「ご理解いただきたい」という言葉が繰り返されるばかりでした。
前出の行政区長の藤原さんも

「何のフォローもなくこのまま推し進めるのであれば、法的に訴えざるをえない」

とも話します。

◆ほんとうに被ばくの健康影響がないなら、念書にサインしてほしい

集会の終盤、たまりかねたように小澤洋一さんは、

「南相馬市における指定解除の責任について、念書にサインしてほしい」

と訴えました。
念書とは、住民に健康被害があった場合に責任をとる、というもの。たしかに、年間20ミリシーベルト以下の被ばくでは、健康被害は考えにくい、だから解除する、という政府見解を、清水英路氏は何度も口にしていました。

「きょうは責任者として来ているのだから、南相馬市の住民に対して特定の官僚が責任をとることを、ここに署名してください」
「もし、それができないのであれば、ここで待っているからサインできる人を呼んできてください」

と切実に訴えます。

小澤さんが用意した念書が手渡された


それに対し、清水氏は、

「署名はできない」
「内閣府という組織として来ている」
「責任者のアポはとっていないから今すぐに対応することはむずかしい」

などと回答。
国際環境NGO、FoE Japanの満田夏花氏も

「おふたりは政府を背負ってきていて、年間被ばく量20ミリシーベルト以下はだいじょうぶだと。その責任をとれないということであれば、解除の撤回をしてください」

と訴えましたが、聞き入れられませんでした。

◆「あなたは、誰のために仕事してるんですか」

南相馬・避難勧奨地域の会では、1010日から再三にわたって公開質問状を提出しています。それに対して、たった一枚の文書も届いていないそうです。そのことに対し、小澤さんは

「せめて、質問に対して、文書での回答があってから、解除の話があると思っていた。いちばん汚いやり方だと思う。」

と述べました。

「せめていつ回答をもらえるのか、もう、(きょう、答えてもらうのは)それだけでいいです」

と、小澤さん。それについても、

「文書の回答と念書についてはお約束はできません。ただ、ご説明はしていきたいと思います」

と、最後まで、その一点張りでした。
たまりかねて、要請に立ち会っていた桑原豊さん(元放射線管理者・浪江町)が

「あなたは、誰のために仕事しているんですか」

と、静かに問いかけました。

年の瀬にも関わらず、たくさんの方が詰めかけた


満田氏も

「住民の理解を得るといって、政策を押し切っているんです。受け止めて、あなた方の上の方を説得して、何とかしてください」

と、訴えました。

「われわれ南相馬市の8行政区のためだけにやっているわけではない。国は、これから3.8マイクロシーベルト毎時を下回ったら切る、ということをやってくるだろう。だから、福島県民のこれからのためにも、なんとかしたいという思いがある」

と、藤原保正さんは話してくれました。


【お知らせ】
1229日、南相馬市特定避難勧奨地点に、測定に伺います。こどもみらい測定所のアカウントから、ツイキャスで配信する予定です。
年の瀬でお忙しいかと思いますが、ぜひ、ご覧になってください。





(文責/吉田千亜)

2014年12月2日火曜日

松阪市長 山中光茂さんインタビュー 「あたり前の幸せ」を守りたい

 12月下旬発行予定の「ママレボ 年末・年始特大号」の巻頭インタビューで、松阪市長の山中光茂さんをインタビューさせていただきました。
 とても大切な内容なので、ひとあし早く、ブログでも公開させていただきます。

 おりしも今日は、衆議院選挙の公示日。
 安倍政権は、「アベノミクス解散」などと言っていますが、争点はいくつもあります。
山中市長のお話のテーマとなっている「集団的自衛権」にはじまり、「秘密保護法」「原発の再稼働」……。

 私たちひとりひとりが、「あたり前の幸せ」を守るために、いま何ができるか――。
そんなことを考えながら、一票を投じましょう。

*****************


 安倍内閣は2014年7月に、「集団的自衛権」の行使を認めるとの、憲法解釈を変える閣議決定を行いました。
これを憲法違反だとして、市民団体「ピースウィング」を立ちあげ、安倍政権を集団提訴する準備を進めているのが、三重県松阪市長の山中光茂さんです。
そんな山中市長に、「あたり前の幸せ」を守るために、今私たちがすべきことについて、おうかがいしました。

   (ママレボ出版局・和田秀子)



■紛争や飢餓は、政治家の選択のまちがいによって引き起こされてきた

 松阪市長の私が、なぜ安倍政権を提訴しようとしているのか。
 それは、集団的自衛権が認められてしまうと、今、私たちが手にしている「あたり前の幸せ」が失われてしまうかもしれないからです。
 ひとたび戦争になれば、あたり前に地域で子育てができる幸せ、ものを食べられる幸せ、家族で暮らせる幸せ、そのすべて奪われてしまいます。

 私は、2007年に松阪市長として初当選させていただいて以来、「あたり前の幸せを、みんなで考えよう」ということを市政のテーマとして取り組んできました。
 というのも、私は市長になる前、医師としてアフリカなどの途上国で支援活動をしていました。そのなかで、途上国で起きている紛争や飢餓などは、すべて政治の失敗を通じて生まれてきていると実感したからです。

 幸せなことに、日本は戦後70年間、戦争をせずにすんでいます。その結果、私たちは毎日、家族や友人、たいせつな人たちと、あたり前だけどかけがえのない平穏な暮らしを送ることができています。
 しかし、政治家が選択をまちがい、ひとたび争いが起こると、「あたり前の幸せ」は、あっというまに失われてしまうのです。

 だからこそ、地域の安心・安全を守る立場にある首長(くびちょう)が、今回の集団的自衛権の問題に対して発言したり、行動したりしないのは無責任だと思って、声を上げることにしました。と同時に、私も一市民として、多くの方々と、この問題を議論する場がほしい。松阪市だけではなく、日本全国に活動を広げ、議論していきたいという思いから、「ピースウィング」という市民団体を、ことし7月に立ちあげたのです。

■「たかが一内閣」の決定で、決まってしまう恐ろしさ

 今回の閣議決定は、ふたつの視点から見て問題があります。
 ひとつは、もっとも根本的かつ、重大な問題です。
 憲法は、日本の最高法規です。その憲法の下位にある、「たかが一内閣」の「たかが一総理大臣」が、国民の議論や憲法改正手続きをへずに、「たかが閣議決定」によって、集団的自衛権の行使を認めてしまったという問題です。

 ここで、あえて「たかが」ということばを使ったのは、内閣も総理大臣も、すべて憲法の下に位置し、憲法によって縛られている立場だということを強調したかったからです。
 もともと憲法は、「権力者は暴走しかねない。だから憲法によって抑制しよう」という「立憲主義」という考え方のもとに作られたものです。
 ですから、もし安倍政権が集団的自衛権を行使できる国にしたいのであれば、きちんと憲法改正の手続きを踏む必要があるのです。
 しかし、そんな手続きはすっとばしてしまった。これは、明らかに憲法違反であるといわざるをえません。
もともと改憲に賛成であった憲法学者でさえも、今回の安倍政権のやり方には反対しているのです。

■集団的自衛権は、他国の戦争に加担すること

 ふたつめは、集団的自衛権そのものの問題です。
 集団的自衛権というのは、個別的自衛権(自分の国が攻撃を受けた場合に認められている、武力行使の権利)とは異なり、他国の戦争に加担する権利なのです。

 たとえば、今アメリカはシリアを空爆していますよね。これは、アメリカのジャーナリストふたりが、シリアやイラクで活動するイスラム国のメンバーによって殺害されたからという理由によるもので、個別的自衛権の行使だとアメリカは主張しています。

 しかし、シリア政府はアメリカに空爆を要求したわけではありませんし、国連決議に基づいたものでもありません。あくまでも、アメリカ一国の価値観に基づいた空爆なのです。
 しかし、日本が集団的自衛権の行使に踏み切った場合、こうした一国の価値観に基づいた戦争に加担する可能性が出てくるのです。
 安倍首相は、「中東へ自衛隊を派遣することはない」と述べていますが、なんの拘束力もありません。
 時の政権が、「イラクの空爆に参加しないと日本の国益を損ねる」といえば、いつでも日本は、他国の戦争に加担できるようになってしまったのです。これまでは、憲法によって抑制されていた。そこに意味があったのです。 
 ちなみに、安倍政権が発表した【注】15の事例を見るかぎり、ほとんど個別的自衛権で片づけられるものです。
 個別的自衛権は、憲法でも認められているので、わざわざ集団的自衛権をもち出すまでもありません。

 では、なぜ安倍政権は、憲法をねじ曲げてまで集団的自衛権の行使をしたいのでしょうか。
 それは、アメリカやNATO(北大西洋条約機構)から軍事的貢献を求められていることと、安倍首相自身が、在任中に軍事貢献ができる国にして、いわゆる「積極的平和主義」を実現させたいという思惑があるのだと思います。

 安倍首相は、以前インターネットの番組で、「日本国憲法は、アメリカから押し付けられた、みっともない憲法だ」と発言しておられましたから、そんな「みっともない憲法」は、さっさと改正したいのでしょう。しかし、それには時間がかかってしまうから、先に集団的自衛権だけでも閣議決定してしまおうと考えたのだと思います。

■武力で平和は守れない

 集団的自衛権や憲法9条の話をすると、必ずといっていいほどいただく質問があります。
 そのひとつが、「北朝鮮や中国が攻めてきたらどうするんだ。武器を持って守らないといけないのではないか」という質問です。 でも、考えてみてほしいのです。なぜ、攻めてくるのでしょうか? こちらに攻められる要因がなければ、攻めてくることはありません。

 日本は戦後70年間、憲法9条のもとで武力による紛争解決を放棄し、平和主義を徹底させた。だから、他国に攻める口実を与えなかったのです。だからこそ、平和が守られたのではないでしょうか。
 もちろん、アメリカとの安全保障条約があったから、という側面は否定しません。しかし、相手が戦争を起こす理由をつくらなかったことが、平和を保てた一番の要因だと思います。
 アフリカへ医療支援をしに行っていた私の経験から言わせていただくと、ピストルを持った相手の前に、ピストルを持って出て行くほうが危ないのです。対話の余地なく撃たれてしまいますから。
 武器は、お互いに持ち合うから危険度が高まるのです。武器に武器で対抗しようとした歴史が、世界の戦争の歴史であり、さまざまな争いが生まれた原因なのです。だから、武器を持ったからといって抑止にはつながりません。

私がこう話すと、「そんなの理想論だよ」と言う方がいますが、私から言わせれば、「武器で平和が守られる」と思っている人のほうが、理想論者だと思います。
 その証拠に、日本人は、どこの国に行っても、「平和主義の国だ」と認識されていますので、ねらわれるリスクも低い。武器も持たず、純粋に平和的な支援活動に来ている人間を、ねらう人はほとんどいませんからね。

 もうひとつ、よくいただくのは、「日本人だけ血を流さないでいいのか」という質問です。
 私は、なにも日本人だけが血を流さなければいいといっているわけではありません。戦争になって、まっ先に戦地に行くのは自衛隊員の方々ですが、彼らは命を落とす覚悟はもっています。 誤解を恐れずにいえば、任務上、命を落とすということが、現実にありうることを否定はしません。ただ、たいせつな一人の命を意味のない戦争に巻き込まれて、意味なく落としてほしくないのです。それは、どの国の方だって同じです。

 意味もなく互いに銃を突きつけあい、殺しあうことほど無益なことはないのです。
 それよりも、日本はせっかく戦後70年もの間、平和を守り、国際社会からも評価を受けているのですから、唯一の平和国として、また唯一の被爆国としてその立場を生かした貢献をしたほうが、ずっと意義があるはずです。


■私たちが向かうべき3・11後の世界

 あの未曾有(みぞう)の東日本大震災と原発事故が起こって、私たちは、今手にしている「あたり前の幸せ」が、いかにたいせつであるかを、思い知ったのではないでしょうか。

 しかし現在、安倍政権が進もうとしている方向は真逆のように感じます。経済発展や株価の上昇といったことも、もちろんだいじかもしれません。が、それ以上に私たちは、「あたり前の幸せ」のたいせつさを学んだはずです。

そして、多くの国民が、安倍政権が進もうとしている方向性に疑問をもっている。しかし、残念ながらその受け皿になる政党がありません。
 そんな時代だからこそ、私たち市民の活動がたいせつになってくる。

 日本では、「平和を守ろう」なんていうと、なにかおかしな人のように思われてしまいます。でも、平和って、みんなで必死に守らないと、すぐに失われてしまうものなんですよね。
 だから今こそ、恥ずかしがらずに、「平和を守ろう」と声をあげませんか?
ときに、テレビでインテリ風の学者が、「平和を守るには武力が必要」なんて言っているのを耳にします。でも、そんな発言は、どうぞうのみにしないで。
平和を守るのに武力はいりません。私たちひとりひとりが自信をもって、そう子どもたちに伝えていきましょう!


[] 政府が、どのような場合に集団的自衛権を行使できるかを示した15の事例。「離島等における不法行為への対処」や「領域国の同意に基づく邦人救出」などがある。
 
Profile
やまなか・みつしげ
松阪市長/医師
33歳という若さで、2007年に三重県松阪市長に初当選。現在2期目。ことし7月、集団的自衛権に反対する「ピースウィング」という市民団体を立ちあげる。
 

「ピースウィング」では、ただ今サポーター会員および、原告団を募集しています。お申し込みは、公式サイトまで。

ピースウィング公式HP  http://www.peacewing.jp/