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2014年4月26日土曜日

傍聴レポート:「第5回住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」



 第3回、4回の傍聴レポートがアップできていませんでしたが、第3回から会議の動画も見られるようになってますので、チェックがまだの方はこちらをご覧ください。



1,080人の甲状腺サーべーメーター実測値の信憑性に終始した第3回会議

 第3回の会議内容をかいつまんでご説明すると、20113月に実施された、わずか1,080人の子どもに対する甲状腺サーべーメーターの実測値に信憑性があるのか、ということを、当時測定にあたった京都大学の新山雅之氏を招いてヒアリングし、議論を重ねていました。
 その結果、1,080人の実測値に関しては、おおむね信憑性のあるデータとして評価できるが、測定していない多くの子どもたちについては、食べものや行動によって被ばく量に開きが出る可能性がある。ただ、1,080人の実測地から予測すると、放射性ヨウ素による初期被ばくは少ないと考えて良いのではないか、という結論に達しました。

LNTモデルにすら否定的だった第4回会議
 第4回会議は、国会事故調査委員会のメンバーでもあった医学博士の﨑山比早子氏と、低線量被ばくの影響などを調査研究している鹿児島大学の秋葉澄伯教授を招いて意見を聞きました。この回で印象的だったのは、﨑山氏が、ICRPの「LNTモデル(しきい値なし直線」)」を用いて、「微量の放射線でも、健康影響がないとはいえない」と論じたのに対し、委員の多くから反論が寄せられたことでした。
 また一方で秋葉教授は、自然放射線の値が年間5~10ミリシーベルトというインドのカルナガパリ地域での調査報告を例に出し、「疫学の観点からガンのリスクが上がっているとはいえない」と結論づけました。

■公衆の被ばく線量推計については、“不確かさ”がつきまとう

 そして424日に行われた第5回会議では、放射線医学総合研究所の酒井一夫氏を招いて、42日に国連科学委員会(以下、UNSCEAR)から出された報告書の概要について説明がなされました。


「公衆の被ばく線量」についてUNSCEAR報告書では、対照群を「事故直後から避難した地域」「計画的避難区域」「福島県のその他の地域」「福島県近隣県」「その他の地域」という5つのカテゴリーに分け、成人、乳児それぞれについて、実効線量と甲状腺の吸収線量を推定しています。


 
 一方でこれらの推定値は、個人が食べたものや移動したルートなどによって大幅に異なることも考えられるため、内部・外部被ばくともに“不確かさ”が大きいと結論づけられています。




■「増加が予測されない」と言い切って良いのか?

 「健康影響」に関する評価についは、UNSCEARが推計した被ばく線量をもとに、しきい値なし線量モデルを用いて健康影響を予測しています。



 これによると、
「若干のガンのリスクが上昇することが示唆されるが、その上昇は日本人の自然発生によるガンのリスクに比べて小さく、検出できないと考えられる」

「推定値の上限の被ばくを受けた人が相当数いれば、発生率が増加する可能性があるが、チェルノブイリ原発事故と比べて被ばく線量はかなり低いため、甲状腺ガンが大幅に増加するとは予想されない」

「このような集中的な検診がなければ検出されなかったであろう甲状腺異常(ガン含む)が比較的多数見つかると予想される」

「妊婦や胎児への生涯などの確定的影響は認められず、白血病、乳ガン、固形ガン、遺伝性影響の増加が観察されるとは予想されない」

などと、結論づけられています。

 これに対して、清水一雄委員(日本医科大名誉教授)や石川広己委員(日本医師会常任理事)からは、「チェルノブイリと比べて被ばく線量が低いからといって、福島では甲状腺ガンが大幅に増加するとは予測されない、と言い切っていいのか?」(清水委員)
「食べものや行動パターンなどによって不確定な要素が多いのにもかかわらず、遺伝的な影響は予想されないなど、断定している部分が多いのではないか?」 (石川委員)

といった意見が出されました。

 一方で鈴木元委員(国際医療福祉大学クリニック院長)からは、「放射線によってどれくらいリスクが増加するかは、あくまで疫学データでしか出せない。個人がどれくらい被ばくしていたかについてはバラつきがあるだろうが、あくまで集団としてリスクを評価した場合には、検出できないくらい小さい値であるということだ」という趣旨の反論が出ました。

■わからないなら、調べてみれば

 こうした一連のやりとりを傍聴して、毎回感じることは、「この会議はいったい誰のための会議なんだろう?」ということです。

「住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」と名付けられているのだから、健康管理がどうあるべきかについて、主役である住民の意見をくみ取って議論が進められるべきではないでしょうか。
 初期被ばくがどれくらいだったか、またその健康影響がどうなのか等について、議論を行うことはもちろん大事です。しかし、そうした調査・研究は今後何十年にもわたってやっていかねばならないことであって、今すべきなのは、対象年齢や地域を広げて子どもたちの健康診断をはじめることではないでしょうか。

 今、確実にわかっているのは、初期被ばくの値も、低線量被ばくの影響も、なにひとつ「不確実である」ということだけです。
「影響がわからないから調べる」では、なぜダメなのでしょうか?それが住民である私たちの素朴な疑問です。
そもそも、UNSCEAR報告書には、異論も多く寄せられているのです。その検証もなく、ただ漫然と議論が行われるだけ――。

 毎回、この会議を傍聴するたびに、「専門家」たちの土俵の上で、不毛な議論に付き合わなければならない不条理を感じずにはいられません。

 この会議の冒頭で、長瀧座長は「報告書について不明な点があれば、環境省を通じてUNSCEARに質問をすることも可能」と述べていましたが、結局、何を質問するのかしないのか、結論が出されることはありませんでした。

 また、この会議の本題ではないので議論されませんでしたが、UNSCEAR報告書には、収束作業にあたっている原発作業員の健康影響についても報告が上がっています。これについても、別途、緊急に議論の場を設ける必要があると感じました。(もうすでにどこかで議論されているのでしょうか?)

 次回は520日(火)15時から開催される予定だそうです。


 ※会議の動画や資料は、OurPlanet-tv さんよりご覧ください。

原発事故に伴う住民の健康管理〜国連科学委報告もとに対応へ





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