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2012年10月12日金曜日

~岡山博医師インタビュー~ なぜ「秘密会」は行われたか 


「あなたの健康、見守ります」という意味不明なスローガンを掲げ、福島県が昨年6月から実施している「県民健康管理調査」。
 この県民健康管理調査の進め方について、専門家らが議論する「検討会」の在り方が、現在大きな問題になっています。本来、活発な意見交換の場であるはずの「検討会」ですが、事前に県や委員の間で「秘密会」なるものが開かれ、「意見のすり合わせ」や「口止め」などが行われていたことが明るみに出たからです。

*** 以下関連ニュース***
福島健康調査:「結論ありき」県民憤り…検討委「進行表」

http://mainichi.jp/select/news/20121005k0000m040113000c.

福島健康調査:「秘密会」出席者に口止め 配布資料も回収


原発事故:健康管理調査検討委、福島県が進行表作成認める

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 これについて、現在、講演会やブログなどで積極的に“脱・同調強要社会”(意見の同調を強いる社会から脱却しよう)を訴えている仙台赤十字病院医師の岡山博氏にご意見をうかがいました。

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 今回、世間やマスコミは、「秘密会」を開いて意見のすり合わせを行っていたことを批判していますが、私自身は起こるべくして起こったことだと考えています。

 どういうことかと言うと、問題は大きく分けてふたつあります。
ひとつは、政府や福島県および被ばく対策政策をつくる中心になり、検討会の座長を務めている山下俊一氏らをはじめとする専門家の基本的な考え方の問題です。
 日本政府や福島県、および専門家らは「チェルノブイリや福島第一原子力発電所のような低線量被ばくでは、若年者の甲状腺がん以外には健康に影響はない」と断言しています。ICRPがチェルノブイリの被害をまとめたとき、健康被害を示す多くの調査研究発表がすでにありましたが、「不確実なものは存在しないもの」として扱い、甲状腺がん以外の健康障害は存在しないと結論をくだしました。甲状腺がん以外の影響はないと決めたあとは、健康被害を示す何百の調査や研究が報告されても再検討をして結論を変えることをしていません。
 「甲状腺がん以外の影響はないのだから、それ以外のありもしない健康障害を話題にするのは過剰で不要な心配だ。存在しない健康被害を話題にするのは、不安をあおる悪質な行為だ。不安を取り除いて安心させることが、行政がすべきことだというのが、政策をつくる中心になっている専門家と国・県の立場です。これはうがった見方ではなく、政府や福島県が一貫して説明している公的な見解です。
 その証拠に、食品暫定基準や環境放射能、廃棄物放射能などの基準や規制をつくるときにも、「もともと安全で心配ないレベルだが、不安を取り除くために必要以上に厳しい基準をつくった」と、そのたびに説明しています。国や福島県の被ばく対策政策は全てこの立場でつくられているため、県民健康管理調査においても「秘密会」を開いてまで一貫してこの姿勢を貫こうとしているのです。

 ふたつめには、日本社会そのものの在り方が問題です。
 今回の「秘密会」のように、本番の会議を問題なく進めるために、事前にすり合わせを行うことは、日本の組織で日常茶飯事に行われています。
 本来は、同じ目的をもった人が、異なる意見を提示してはじめて、有効で良い議論ができるのです。異なる意見が出されなければ議論でありません。しかし日本では、異なった意見をたくさん出して、それによって認識を深め、新しく方針を打ち出そうというのではなく、会議参加者に無条件同調を強要するための会議や、関係者や社会から批判されないための形だけの会議を開くことが日常的に行われています。
 そのような場で良い議論をしようと思って優れた異論を提出すると、無視をされたり抑圧されたします。それに屈せずに繰り返していると、会議とは関係ない場所でも異論を述べた人に執拗な嫌がらせし、会議を超えた場からも排除しようとします。つまり、民主主義がないということです。
 優れた発言が活きないだけでなく、発言するということの安全が保障されていないのです。これは行政でもっとも顕著にみられることですが、一般企業や小さな内輪のグループでも日常的に同じことが行われています。

 記憶に新しいところでは、今年8月下旬に内閣府原子力委員会が原発推進側だけを集めて勉強会と称する「秘密会議」を開いていたことが報道されていました。

(「核燃サイクル:秘密会議問題 原子力委員長が主導 原発依存度「コントロールできる」http://mainichi.jp/feature/news/20120825ddm001010043000c.html

 

 ですから、こうした日本社会の在り方や行動様式そのものを改善しないと、いつまでたっても今回のようなことはなくなりません。
会議の在り方、社会の在り方を変えるためには、変革の活動と並行して、自分を含め一人ひとりが、言葉・論理・議論を大切にする能力と自覚を育てることが不可欠です。

 
(文責:和田秀子)
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 岡山博先生のインタビューは、「ママレボ」3号でも掲載します。このブログでご紹介した以外のこともたくさん語っていただいておりますので、ご期待ください。

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