“秘密会”の存在が問題になっている「県民健康管理調査検討委員会」。第9回目となる同会が11月18日、福島市にて開催されました。
謝罪や釈明があるのか、改善策は示されるのか――。注目していた人も多かったはずですが、山下氏はじめ委員会側が発表した改善策は、以下の報道の通り中途半端なもので、県民の信頼を回復できるような内容ではありませんでした。
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【毎日新聞】
福島県:健康調査検討委 秘密会問題で山下座長が謝罪
2012年11月18日 18時36分(最終更新 11月18日 18時48分
東京電力福島第1原発事故を受け福島県が実施している県民健康管理調査の検討委員会が18日、福島市内で開かれた。秘密裏に事前の準備会(秘密会)を開いて意見調整するなどしていた問題が発覚して以降初めての会議で、座長の山下俊一・県立医大副学長は「委員の方々には大変ご迷惑をおかけした。心からおわびしたい」と陳謝。「きちんと議論を公開して行いたい」と述べ、会議の透明性を高める考えを示した。
県側は、検討委の設置要綱で規定していなかった会議の原則公開や議事録作成について明文化するなどの改善策を明らかにした。このほか、原発のある同県双葉郡の医師会会長と、県臨床心理士会副会長を新たに委員に加え、県保健福祉部長は委員から退いた。県によると、今回は事前に準備会を開催していないという。
会議後に記者会見した山下氏は「(震災後の)混乱の中で検討委を設置したので不備は仕方ないと思う」と説明。自身の責任を問われると「私の人事は県にお任せしている」と述べるにとどめた。
また、この日の会議では、健康管理調査の一環として事故時18歳以下の住民を対象に実施している甲状腺検査で、がんの疑いがあるとして「直ちに2次検査を要する」と判定された16歳以上の女性が1人いたことが報告された。がんかどうかを詳しく調べている。
【日野行介、蓬田正志】
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しかも、検討会終了後には、毎回開いていた記者会見もせずに立ち去ろうとする始末。マスコミ関係者や傍聴人から、「記者会見もせずに逃げるのか!」といった強い抗議があって、ようやく開かれることになるという有様でした。
私自身はIWJのアーカイブを視聴したのですが、検討会が淡々と行われたのと対照的に、終了後の記者会見がとても中身のあるものだったので、主要な質疑をピックアップして以下にまとめてみました。改めて文字にしてみると、県の役人やお偉い先生たちが、いかに質問をはぐらかしてあいまいに答えているかがよく分かります。
ご興味のある方は、以下の注意点に留意してご一読ください。
――記者会見の質疑まとめをお読みくださるみなさまへ――
この「まとめ」は、たんなる文字お越しではなく、ある程度話し言葉を整理して掲載しております。発言の趣旨は十分吟味しているつもりですが、私が話し手の意図と異なる解釈をしている可能性もありますので、正確なニュアンスをお知りになりたい方はアーカイブをご試聴くださいませ。
IWJ
■質疑の回答者メンバーは以下の通り■
鈴木眞一(福島県立医科大学医学部 器官制御外科学講座教授)
大津留 晶(福島県立医科大学医学部 放射線健康管理学講座教授)
安村 誠司(福島県立医科大学医学部 公衆衛生学講座主任(教授))
佐々 恵一氏(保健福祉部健康管理調査室室長)
【甲状腺検査についての質疑】
《質疑者IWJ 満田》
まず、甲状腺検査の結果についてだが、以前から市民団体の方々が、検査の判定結果と地理的な線量の相関関係について情報開示をしてほしいと依頼しているが、これについては検討していただけたか。
また、甲状腺ガンのみならず甲状腺の機能低下についても調査してほしいと要望があがっているが、これについて何か検討されているようであれば教えていただきたい。
《回答者:鈴木》
検査の判定結果と地理的な線量の相関関係にかんする情報開示だが、国が指定している避難地域から検査がはじまっているので、その市町村ごとの集計データはあると思うが、市町村ごとに相関関係を出すとなると、かなり母数が少なくなる地域がある。そうなると、個人を想定されるようなことが起こり得る可能性もあるので、中通りから県内全部の検査が終わったところで開示できるのではないかと考えている。
2点目について。甲状腺の機能低下を調査することは、放射線の影響を知るうえで必要だという意見があるようだが、ご存じのように、甲状腺の機能低下があったからといって、それが放射線の影響かどうかは分からない。昨年、長野県の信州大学でも甲状腺機能を測ったということで話題を呼んだが、基準値を少しでも超えたからといって甲状腺機能異常ということはない。甲状腺の機能低下には、放射線の影響だけでなく、多数いろんな要因があるので、それをもって放射線の影響を見るということは無意味であり、従って一次検査では甲状腺機能は測らない。二次検査に来られたお子さんにかんしては、なんとか全員測っている。しかし、二次検査においても、甲状腺機能が低下している子どもは100人中ひとりいるかいないかくらいだ。しかも、すでに治療をされているような方以外はいなかったので、甲状腺異常は極めて少ない。そのため、一次検査で甲状腺機能を検査するということは考えていない。
《質疑者:朝日新聞社》
今回、甲状腺の二次検査を受けた方の中で、ガンとか他の悪性疾患とか、どういう内訳だったのか、二次検査の結果の詳細を教えていただきたい。また今回、「ただちに2次検査が必要」とされるC判定が出たということだが、この方はどういう状況でC判定なのか教えてほしい。
《回答者:鈴木》
C判定の方は、郵送した通知を見て驚かれないように、まず私から直接お電話をして二次検査に来ていただくようお願いし、同時に通知も郵送した。ご本人の都合で、当日でも翌日でも来られるような体勢をつくった。
どういう方がC判定かというと、一番は二次検査を急ぐ人。急ぐ人とはどういう人かというと、悪性・良性にかかわらず治療がすぐに必要だと思われる人。一般論としては、甲状腺が巨大になっていて、症状が出やすい人。また、判定会で悪性の疑いが強いと思われた人などだ。
二次検査の結果については、資料の中にも記されているが、一名ガンが出たということだから、細胞診を実施した36人中ひとりが悪性腫瘍。残りは良性ないしは、再検査をしている。
《質疑者:福島テレビ》
C判定の方についてだが、この方の進捗状況はどうなっているのか。
《回答者:鈴木》
すでに外来にこられて二次検査をしているところ。その結果については、まだ出ていない。
《質疑者:NHK ETV》
郡山で11月4日に開かれた甲状腺検査の説明会で、鈴木先生はセシウムによる内部被曝のデータや、事故直後に、いわき・川俣・飯舘で行った簡易サーべメーターによる甲状腺被曝調査などの数値が比較的低いことなどを根拠に、「現在行われている甲状腺検査は、甲状腺ガンの増加がないことを確認していくための検査だ」と述べていた。山下座長にお聞きしたいのだが、こういう姿勢で間違いないか。
(ママレボからの捕捉:鈴木氏は、11月4日に郡山で開かれた甲状腺検査説明会において、下記の資料を用いて「甲状腺への等価線量は最大で35ミリシーベルトであったため、甲状腺ガンが発症する確立は極めて低い」と説明)
《回答者:山下》
誤解がある。甲状腺の検査は、生涯やっていく必要がある。明らかなヨウ素による被曝線量は分からないため、これをもって我々がどうこういえない。だからしっかり見守っていくというスタンスでご説明したのだと思う。
《質疑者:NHK ETV》
鈴木先生は、そういった説明をしていなかった。では、内部被曝線量も分からないし、初期のヨウ素による被曝についても分かっていないということか。
《回答者:山下》
原子力安全委員会で調査した1080名のデータと、いくつかのデータしかない。それらを見るとすべて50ミリシーベルト以下なので、チェルノブイリの平均被曝線量と比べて圧倒的に違う(低い)ということだけはいえる。しかし全員を調べたわけではないので、これについては分からないというのが正確なところだ。
《質疑者:NHK ETV》
加えて、鈴木先生の説明資料の中に、「甲状腺ガンの増加は内部被曝100ミリシーベルト以上で増加」という記述があった。この認識はまちがいじゃないかと思うのだが。
《回答者:山下》
しきい値があるかどうかという質問だと思うが、外部被曝線量の場合は100ミリシーベルト以上で有意な差が出るということは大方認められている。内部被曝については、甲状腺等価線量がどのくらいかという議論がある。事故の前は、安定ヨウ素剤の服用基準は100ミリシーベルトだった。事故のあと、IAEAやWHOの勧告を受けて、50ミリシーベルトで安定ヨウ素剤の服用すると決まった。しかし、これは決して50ミリシーベルトで甲状腺ガンになるということではない。安全域を広くとって、50ミリシーベルトで服用しようと議論されている。
《質疑者:NHK ETV》
IAEAが参照している論文の中にも、99年にヤコブが発表した論文で、平均50ミリグレイ被曝した集団で、甲状腺ガンの有意な増加が認められたと書かれている。そういう点も含めて「100ミリシーベルト以上でないと有意な増加はない」という説明は非常にミスリーディングな説明だと思うのだが、見解を聞かせてほしい。
《回答者:山下》
線量の評価が非常に難しい。ヤコブはウクライナの研究者だが、ドイツに移って、ずっとそのことを主張している。低線量域の被曝線量は非常にあいまいなので、IAEAは安全域をとって50ミリシーベルトとしている。
《質疑者:NHK ETV》
そういった国際的にも採用されている論文がある中で、県民に対する説明として、「100ミリシーベルト以上でないと有意な増加が確認されない」というスタンスで説明することは、かえって県民からの不信を招くと思うが。
《回答者:山下》
絶対に安全とか、絶対ゼロということはないので、そういう意味できちんと見守りをしますというのが我々のメッセージだ。
《質疑者:毎日新聞》
今回、甲状腺検査の結果でC判定を受けたのは16歳以上の子どもということで良いのか。
《回答者:鈴木》
下の表を読んでいただくことそういうことになる。
《質疑者:毎日新聞》
もうすでに二次検査をされているのか。
《回答者:鈴木》
二次検査にこられて通常の検査のルートに乗っている。
《質疑者:毎日新聞》
まだガンだと正式に判明したわけじゃないということか。
《回答者:鈴木》
そういう具体的なことは教えられないし、まだ検査の途中だ。
《質疑者:毎日新聞》
検査を終えているのか終えていないのか、それを確認したい。
《回答者:鈴木》
終えていない。
《質疑者:毎日新聞》
今回の原発事故との因果関係についてどう考えているか、見解をお聞かせいただきたい。
《回答者:鈴木》
まだ検査をしている途中なので、答えようがない。我々はきちっと検査をしながら、分かったことに対して答えていく。検査もしないうちにそういうことが分かるわけはない。これからきちんと見ていくということだ。
《質疑者:IWJ》
鈴木先生は、これまでの甲状腺検査の説明会で、「甲状腺ガンは症状が出るまでに時間がかかる」とか、「予後が比較的良好である」とか発言していたが、それは一般的な甲状腺ガンだと思うのだが。山下先生もいろいろ論文を出されていると思うが、チェルノブイリ等の治験から考えると、「被曝による小児甲状腺ガンは比較的進行が早い」あるいは「転移しやすくて予後については大人の場合よりも悪い」というようなことが書かれていたのだが、そのあたりについてはどうか。一般的な甲状腺ガンとは違う点や、チェルノブイリの状況などはきちんと説明すべきだと思うが。
《回答者:鈴木》
先ほど山下先生がおっしゃったように、チェルノブイリと福島は甲状腺への被曝線量が違うということもあるが、山下先生たちが発表しているように、チェルノブイリでは小児甲状腺ガンは4-5年後から急にふ増えた。進行が早くリンパ節転移や肺転移が多いのだが、それでも治療経過は良い。チェルノブイリでも当初は、いわゆる低分化ガン*が発症したといわれていたのだが、これは小児に特有で、とくにチェルノブイリの低ヨウ土地域に見られる充実型というタイプのガン、それが日本でも見られる低分化型、いわゆる非常に進行が早いガンと似ているということで当初はそれじゃないかといわれていた。しかし最近、とくに低ヨウ土の地域で発症するのではないかといわれている。最近、認識が変わってきているのではないか。
(*発生した組織の細胞との類似性が少ないものを「低分化」といい、細胞の形が未熟なガンを低分化ガンという。低分化ガンほど悪性度が高くなる)
【基本調査に関する質問事項】
《質疑者:IWJ》
健康調査の回答率が低いということが問題になっている。以前から健康管理調査に関して、県民から山下先生ご自身に対する不満・不信があって、それが基礎調査の回答率の低さに関係しているのではないかと見るむきもある。その点に関してどう考えているか。
次に「秘密会」(準備会)について、県のほうから報告があったが、山下先生自身は座長として、準備会を今後も継続してやっていくつもりなのかという点に関して見解をうかがいたい。
《回答者:山下》
いずれも私個人に対する質問だと思うが、人事に関しては県にお任せしている。もうひとつのご質問である、県民健康調査の回答率に関しては、私自身の発言がネガティブに働いているとするならば、本当に申し訳ないと思っている。これに対しては、私の発言が要因だとすれば、県に人事をお任せしたいと思っている。
《質疑者:IWJ》
私は、山下先生自身の考えを知りたいのだが。秘密会(準備会)に関しても見解を述べてほしい。
《回答者:山下》
準備会についてだが、これは県の名誉のためにも申し上げたいのだが、昨年の5月6月、まさに混乱の中でこういう事業を立ち上げたので、いろんな意味で運営上の不備があったということは、いたしかたなかっただろうと思っている。だが、決して結論ありきだとか、準備会を行うことでなんらかの合意があったということではないので、逆に委員の先生方に大変なご迷惑をおかけした反省をしている。そういう意味で申し訳ないと思っている。
《質疑者:IWJ》
県の責任であって、山下先生の責任ではないと考えておられるということか。
《回答者:山下》
県も座長の私も同じ責任だと思っている。
《質疑者:毎日新聞》
資料の中で、今回「地域別・線量別推計」について、新たな推計結果が出ていないということだが、データの最高値を見ると県北で最高11ミリシーベルト被曝した方がいる、という認識で良いのか。つまり、川俣町山木屋地区などをのぞいたところで、最高11ミリシーベルトが出たと考えて良いのか。
《回答者:大津留》
そうだ。
《質疑者:毎日新聞》
県北というと、どのあたりかということが、非常に関心があると思うが。
《回答者:佐々》
私のほうから捕捉させていただくと、県北というと、福島から本宮まで。通常、福島県で分けている管内で、県北・県南・県中・会津・いわきという区分で集計した。
《質疑者:毎日新聞》
11ミリシーベルトは、先行調査地域以外で最高値なのかということと、この方はどういう行動パターンだったのかということを明らかにしてほしい。
《回答者:佐々》
この方については、先行調査地区以外で、新たなに推計された方に間違いなく、長時間屋外にいた方という行動記録を書かれていると報告を受けている。
《質疑者:毎日新聞》
県北在住者ということで間違いないか、避難者ではなく。
《回答者:佐々》
基本調査に関しては、3月11日から4月1日までどこにいたかということが基本になるので、県北の方ということになる。
《質疑者:毎日新聞》
被曝線量は高いのか、低いのか、見解をうかがいたいのだが。
《回答者:大津留》
もちろん県北の中で一番高いということは間違いないと思うが、この方にどのようにお知らせするかということは、ただいま検討中だ。
《質疑者:毎日新聞》
そういうことをお聞きしているわけではなく、見解をお聞きしたいのだが。11ミリシーベルトは高いのか、低いのか。我々は、この方がどういう地域でどのように生活されていたのかまったく分からないので、説明してもらわないと分からない。
《回答者:大津留》
行動に関して、事細かく把握していないのだが、線量が高い地域で屋外に長くいらっしゃったということで線量が高くなるということはあると思う。それに対する評価を求めているのか?この被曝した方に対して、どうサポートしていくかと、そういうことをお聞きになりたいのか?
《質疑者:毎日新聞》
11ミリシーベルトという値が、先行地域以外で出たということに対して、どう考えてらっしゃるのかということを知りたい。
《回答者:大津留》
他の地域もそうなのだが、線量の高い地域で仕事をしたり、移動したりしていた方は、相対的に高くなるという結果が出ていることは間違いないと思う。それをどう評価するかという点に関しては、今後検討したいと思う。
《回答者:安村》
この11ミリシーベルト被曝した方に関して、屋外での活動の際に、比較的線量の高い地域で屋外活動の時間が長かったということで数値が高くなったというふうに考えられるというところまでは分かっている。避難中であったかどうかという点については、いわゆる屋外活動というふうにご理解いただいたほうがいいと思う。統一見解ではないのだが、この線量が高いか低いかという点については、相対的に高いということは間違いないと思うが、リスクとして高いと認識しているかというと、結果的に10でも20でも50でも、起こるであろう将来的な発ガンだとか、そういうことに関するリスクとしては当然高いということにな思うので、現時点では相対的に高かったと私たちは認識しているし、これが実際にリスクとしてどうなのかとことはこれから評価しないといけない、というのが私の理解だ。
《質疑者:IWJ 岩田》
質問が3点ある。3ページ(下記の表)の実行推計線量の状況というのは、最初の4か月間のデータということで良いか。
2番目の質問。これは外部線量の推計かと思うが、放医研で内部被曝あるいは、短命核種の線量評価というのがはじまっていると思うが、これに関してどれくらい把握されているか教えてほしい
3番目の質問。この表は最初の4か月間の外部被曝積算であって、それ以後これらの方たちの積算線量の内訳というのは把握されているのか。
《回答者:大津留》
最初の4か月間のデータということで間違いない。その後は、ガラスバッチで積算するか、推計で積算するかという問題があると思うが、現存の慢性被曝に関しては、推計よりガラスバッチを優先したほうがいいんじゃないかということで、市町村でそういう調査がなされている。そのデータを基本調査のデータの中に入れていく。もちろんそれが十分かどうかは今後議論をする必要があるかもしれない。それから内部被曝のほうは、おっしゃったように放医研でシミュレーションをされているが、それをこの基本調査に入れて、より良いものにできるかどうかというのは、今検討中だ。
《質疑者:IWJ 岩田》
放医研とは別に、福島医大のほうで初期の内部被曝の評価ということはしないのか。
《回答者:大津留》
基本調査の中ではやっていない。福島医大としてもやっていない。
《質疑者:IWJ 岩田》
もう一点、4ページ(下記)の評価というところで、「これまでの疫学調査より100ミリシーベルト以下での明らかな健康影響は確認されていない」と書かれているが、ここでおっしゃっている100ミリシーベルトというのは、単位としては生涯か、年か。つまり積算ということか。
《回答者:大津留》
線量率という問題があると思うが、疫学調査がしっかりなされているものの多くは、やはり短い期間、つまり線量率が高い被曝の結果が多いと思う。慢性的な被曝でも線量率が高い被曝調査を指すことが多いので、今回の原発事故のようなゆっくりした被曝という場合に、もちろん結論は出ていないが、線量率が高いような被曝で、かつ100ミリシーベルト前後。あくまでも疫学調査としては有意差が出ないほどのリスクだということを考えると、線量率がもっと少ないところは、予想としてはもっと少なくなる。ただそれを防護の観点で、生涯の被曝線量をどのくらいにするかというのは議論があって、厚生労働省の食品安全委員会では内部被曝を生涯100ミリシーベルトにするのがいいかもしれないという意見もあるので、そこに関しては今我々がどこまでと考えているかというのは、お伝えしづらい点だ。
《質疑者:IWJ 岩田》
ひとつ関連した質問なのだが、チェルノブイリのときも補償のゾーン設定などをする際に、将来の被曝線量率がカギになっていたが、検討委員会として、初期の被曝も含めて、継続的に被曝していったときに、生涯どれくらいの被曝線量が基準になるのか、といった点に関して考えがあれば聞かせてほしい。
《回答者:山下》
それは検討委員会としての見解か?
《質疑者:IWJ岩田》
そうだ。食品安全委員会では生涯内部被曝で100ミリシーベルトという見解を出したが、県民健康管理調査としてどのようなお考えを持っていらっしゃるか。
《回答者:山下》
基本的に疫学調査では、広島・長崎の高い線量率というのを元に、100ミリシーベルト以下では非常に健康影響が考えにくいというスタンスだ。国が出していない段階でコメントできないが、ICRPやその他の機関でもずっと議論が続いている。とくに職業被曝に関しては、5年間で100ミリシーベルト、年間被曝線量も50年間働いたとして1シーベルト超さないということが職業被曝でも規定されているので、いろんな意味で議論は深まっていくと思う。今回、軽々にいくらということはいえないが、おそらく国のほうでも議論があるだろう。チェルノブイリの場合は、ご存じのように生涯被曝線量はずっと議論されているが、結論は出なかった。5年間で国が崩壊する直前に、生涯被曝線量50ミリシーベルトというのが一時提示されたが、これは結局認められていないので、一般公衆に線量限度を決めるというのは極めて困難だろうと個人的には考えている。
《質疑者:IWJ 岩田》
しかし山下先生は、リスクアドバイザーとして、医科大でリスクをアドバイスされてきている。そうなったときに、自分たちはこうした基準を持っているといったものは今現在、国と同一の見解になるか分からないが、何かしらのものを持っていないとリスクアドバイスというのは成り立たないと思うのだが。
《回答者:山下》
基本的な考え方として、基本調査で現状がだいたい分かってきたので、これをもって基本調査から詳細調査にうつる基準は議論されていくと思う。これはまだ私たち検討していないので、これからの問題だと考えている。
《質疑者:毎日新聞》
これは事務局にうかがいたいのだが、今回、準備会は開いているのかどうか。二点目は、今回から保健福祉部の菅野部長が委員から外れて事務局に専念されるということだが、どういうお考えで、委員から外れて事務局に専念することになったのか。それから三点目は、新しい委員の方、たしか10月9日の内部調査結果の報告の中では、放送関係者および報道関係者が新たに参加するということで、ご説明があったと思うが、今日見る限りだと、両方とも報道や放送ではないので、どういう基準、どういう経過で選ばれたのかを明らかにしなければ、どういう形で不信感を払拭しようとしているのか分からない。
あと、準備会の議事録を情報開示請求しており、それが公開されたのだが、これはホームページで公開するおつもりがあるのかどうか。正直なことをいえば、本会議よりかなり実質的な議論をしているので、公開したほうがいいと思うが、いかがか。あと最後、改善策はこれで十分だと認識されているのか、これで県民の信頼が得られると思っていらっしゃるのか。
《回答者:佐々》
部長は今不在のため、事務局を担当している私のほうから答える。ひとつめ、準備会に関しては、今回は開催していない。ふたつめは、県民健康管理調査の設置要項によると、専門的見地から広く意見を得るために検討会を設置させていただいている。その原点に立ち返って、事務局である部長は事務局の作業に徹するべきだろうという判断から、今回委員を外れたということになる。
《質疑者:毎日新聞》
部長が入っていると、議論の誘導を招きかねないという趣旨と考えて良いのか。
《回答者:佐々》
いえそういうことではなく、単純に原点に立ち返ったときに、専門的見地から広く助言をいただくと。そういう観点で、部長が委員として入っていることに、若干の問題はないのかということで外れたということだ。
《質疑者:毎日新聞》
これまでは何が問題だったということなのか?
《回答者:佐々》
事務局でもある部長が、助言をいただく場である検討委員会に入っていることに若干の違和感を抱いて整理させていただいたということだ。
《質疑者:毎日新聞》
違和感というのはどういうことか?
《回答者:佐々》
私ども県として助言をいただくところに、助言する委員として部長が入っていることがいかがかということで、整理した。
《質疑者:毎日新聞》
今の説明ではよく分からない。
《回答者:佐々》
これ以上の意味はない。検討委員会の委員の先生方から助言をいただくというのが検討委員会の趣旨なので、そこに委員として事務局である部長がいるということがなんとなくおかしいと思って抜けた。
《質疑者:毎日新聞》
では、問題があるという認識なのか。
《回答者:佐々》
問題があるということではない。検討委員会という助言をいただく場で、助言をいただく委員に自分たちの事務局の一員である部長がいるということに違和感を抱いた。それが問題といえば問題だと思うが。
《質疑者:毎日新聞》
問題だという認識だから外れたんじゃないのか。
《回答者:佐々》
違和感があるということだ。
《質疑者:毎日新聞》
違和感というのは、誰が違和感を抱いているのか。
《回答者:佐々》
私たちの違和感だ。
《質疑者:毎日新聞》
部長が委員会のメンバーから外れるという決定は、誰がしたのか。
《回答者:佐々》
決定事項は知事指名なので、決済は部長代決だ。
《質疑者:毎日新聞》
部長。では部長ご自身の判断で外れたということか。
《回答者:佐々》
当然、それもあると思う。
《質疑者:毎日新聞》
では部長みずからの判断で外れたということで認識して良いか。
《回答者:佐々》
いや、決済したということなので、外すことに適正と認めたということだと思う。
今回新たな委員の増員については、10月9日にいろんなイメージをお話しさせていただいたが、関係機関との協議が整ったという観点で、今回、井坂晶先生(双葉郡医師会長)と成井香苗先生(福島県臨床心理士会副会長)に入っていただいた。その他の候補として関係機関と調整した方は、まだ調整が整っていないということだ。
《質疑者:毎日新聞》
関係機関とはどこか。委員を選出する基準は何なのか。
《回答者:佐々》
先ほど放送界からという話もあったが、私どもとしては、検討会の委員としてどなたかご推薦いただけないかということで、関係機関に協議をさせていただいた。
《質疑者:毎日新聞》
どのくらいの期間で、あと何人くらい増やそうと考えているのか。そのあたりを開示してもらえないか。
《回答者:佐々》
どのくらいの期間で、あと何人くらい増やすかというのは調整をしながらすすめていきたいと考えている。
《質疑者:毎日新聞》
それは開示できないということか。関係機関といわれても分からない。
どういう機関、何団体くらいに推薦してくださいと求めているのか。それを明らかにしてください、という質問だ。
《回答者:佐々》
たとえば、今回、成井先生に関しては、最終的には臨床心理士会のほうに推薦をいただくという形になった。その経過としては、10月9日に発表させていただいた観点の中で、文字には入っていないが、県民の不安という観点で心理学的なアプローチをどのように確保するかというのは、ひとつの検討ではないかと考えていた。
何人かの先生がたに、どのような先生がおられますかとご相談させていただいた中で、臨床心理士会に推薦していただいたらどうかという話になった。そういうアドバイスを受けながら、内部で検討して、臨床心理士会に推薦をお願いして、今回、成井先生を推薦していただいたという経緯だ。井坂先生に関しても、やはり、双葉郡にお住まいになっていて、避難という重大な局面をみずからご経験なさっているというような立場の専門家の方がいらっしゃらないか、というようなご意見もあったので、いろいろ検討した中で、こちらについても最終的には県の医師会のほうに推薦いただいた。
透明性の確保という観点もあるが、継続して行う県民健康管理調査を、より確実に実施していくためには、さらに専門性を高めるべきだろうという観点で委員の追加、選任、増員を引き続き検討していくという形だ。
《質疑者:毎日新聞》
準備会の議事録は、本会議の議事録のようにホームページ上でアップしないのか、という質問に関してはどうか。
《回答者:佐々》
現時点で検討はしていない。
《質疑者:毎日新聞》
それはなぜか。
《回答者:佐々》
いずれ今回のご指摘を踏まえ、すべて開示できるものについてはしていくという作業をすすめていく。当該のメモについても今後の検討の中でホームページなどでの開示を含めて検討はするが、今のところそれについての具体的な見通しは立てていない。
《質疑者:毎日新聞》
今の説明だと、準備会の議事録については、ホームページへのアップは必要ないという趣旨に聞こえたが、そういう解釈でよろしいか。
《回答者:佐々》
必要ないのではなくて、今後、いろんなところで検討されるべきものだと思っている。
《質疑者:毎日新聞》
どういうところで検討されるのか?
《回答者:佐々》
県内部で。
《質疑者:毎日新聞》
県内部で検討するのか。検討委員会で検討するわけじゃないということか。
《回答者:佐々》
検討委員会ではなく、県内部で検討する。
《質疑者:毎日新聞》
今のところは考えてないと。
《回答者:佐々》
今のところは、そこまでの作業にまで至っていない。
《質疑者:毎日新聞》
《回答者:佐々》
改善策については、当面、今のイメージで取り組んでいるところなので、随時必要性があれば改善していくことになろうと思う。
《質疑者:通販生活》
改善策に関して、外部委員を今後も増やす予定があるということだが、たとえば甲状腺検査の場合だと、この委員会では山下先生と鈴木先生が専門だと思うが、おふたりとも4~5年以内のガン発症に関しては、放射能由来とは考えにくいというお考えだ。しかし、同じようにチェルノブイリにかかわった専門家の中にも、「放射能由来ではないと断定しないほうがいい」という専門家もいる。そういう異なる意見を持った専門家も入れて、検査結果などをフォローしていくほうがいいと思うが、そのあたりはどう思われるか。
改善策に関して、外部委員を今後も増やす予定があるということだが、たとえば甲状腺検査の場合だと、この委員会では山下先生と鈴木先生が専門だと思うが、おふたりとも4~5年以内のガン発症に関しては、放射能由来とは考えにくいというお考えだ。しかし、同じようにチェルノブイリにかかわった専門家の中にも、「放射能由来ではないと断定しないほうがいい」という専門家もいる。そういう異なる意見を持った専門家も入れて、検査結果などをフォローしていくほうがいいと思うが、そのあたりはどう思われるか。
《回答者:佐々》
前段として、今お話しされたように山下、鈴木両先生が、急速にそういうふうに結論づけていくという印象は私は持っていないが、ご指摘の点に関してはいろいろご意見があると思うので、認識はしていく。
《質疑者:通販生活》
今後、そういうことで検討していただけると解釈して良いか。
《回答者:佐々》
私どもとしては、いろんな意見をお持ちになっているということは極めて良いことだと思うので、そういう意見が、どのような場でどのようにお寄せいただくかは検討していきたい。
私どもとしては、いろんな意見をお持ちになっているということは極めて良いことだと思うので、そういう意見が、どのような場でどのようにお寄せいただくかは検討していきたい。
検討した結果は開示していただけるのか。どういう経緯で決まったかによって、信頼に足るものか否かが変わってくるので、それは明らかにしていただきたい。
それから、もうひとつ。県民の意見を反映させるために新たな委員を追加すると書いてあるが、県民の意見を反映させるのであれば、甲状腺検査の説明会のときに県民からいろんな声があがったと思うが、その声をこういう検討会の場で議題としてとりあげていくべきだと思うが、それについてはいかがか。
《回答者:佐々》
当然、そういうこともあろうかと思う。
《質疑者:毎日新聞》
前回8回目の検討委員会の最後に、山下座長が各市町村でホールボディカウンターを実施しているので、それをデータベースとして集約してほしいとおっしゃっていたが、それはどうなったか。
《回答者:事務局》名前は不明
データベースの構築は来年度行うことになっていて、データベース等、今年度集められるものは集めようということになっている。ホールボディカウンタに関しては、まず県が実施した結果を医大に移すということを担当者レベルで話をしている。市町村については、それが行われたあとに、市町村にアプローチして医大に集約したいと考えている。
以上。
(まとめ ママレボ編集チーム 和田秀子)
(まとめ ママレボ編集チーム 和田秀子)
※ 当日の配付資料はこちらからダウンロードできます。
(資料提供:武本泰さん)
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