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2014年2月25日火曜日

ママレボ編集長通信No10 ~「住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」に異議あり!~  福島近隣県でも「健康調査」を求める専門家らの声


 ママレボブログでもたびたびご紹介しているとおり、昨年11月から環境省は、数回にわたっ「住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」を開催。
 福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質の影響を考慮して、福島および近隣県での「健康管理のあり方」を検討しています。

 しかしながら、過去2回の会議では、予想どおり、放射性ヨウ素による初期被ばくを過小評価。近隣県での健康診断も「必要ない」と結論づける方向で、議論が進んできました。

 また、OurPlanet-TVの報道によると、2月14日に原水禁(原水爆禁止国民会議)などの市民団 体が政 府に対して、「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針撤廃を求める署名を提出。その席で、環境省の担当者が「県外の健康管理については専門の検討会が開催されているが、WHOなどの知見によると、がんが増加する見 込みはない。まずは、福島県の健康調査を進めていくべきだと考えている」と答えるなど、現在行われている専 門 家 会 議 の 意 義 を 否 定するような発 言をしていることもわかりました。 
「子ども・被災者支援法具体策求め署名100万筆を提出」(OurPlanet-TV))

 そこで「ママレボ」では、あらためて、福島の近隣県でも健康診断を実施するよう求めるため、専門家からの意見をいただきました。

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■初期被ばくの過小評価撤回と、福島県外の子どもたちにも検診を 
( 上智大学神学部特任教授・島薗進 )

  ヨウ素の被ばく線量は、大量の放射性物質が飛散した最初の数週間に測定することが不可欠だった。
 ところが、この時期の被ばく線量測定データが極端に少ない。「日本では甲状腺内ヨウ素の直接測定は 1000 人強分しか行われなかったが、チェルノブイリでは実にその数百倍になる 350,000 人分もの測定が行われている」(岩波『科学』2013 年 12 月、p.1402)。
 しかもその測定方法は全く不十分ものだった。
(拙稿「甲状腺の初期被ば線量がよく分からなくなってしまった経緯」続1.続2
 にもかかわらず、政府と専門家は、「チェルノブイリの30分の1、福島事故、国民全体の甲状腺被ばく量国連委報告案」 (朝日新聞 2013 年 5 月 27日)というような情報を流し、国際的にも批判を浴びた。
 調べないこと、情報を隠すことで安心は得られない。不信感が増幅するばかりだろう。

■ 「健康管理のあり方に関する専門家」とは何者か?(流通経済大学法学部准教授・尾内隆之)

  新しい「専門家会議」には、これまで「安全論」をふりまいてきた専門家が、同じようにまた名を連ねている。

 第 1 回会議での環境省参事官の発言では、新年度のはじめにも提言を取りまとめるそうなので、結論はすでにあるのだろう。なにしろ、座長をはじめ委員の多くが、すでに「20mSv/ 年の追加被ばくは健康に影響ない」という立場を表明している人たちなのだから。

 しかしこの会議でも、いまだに初期被ばくのデータに関する認識の不充分さを露呈しているありさまだ。それに何より、「健康管理の専門家」とはいったいだれのことをいうのだろうか? 

 放射線医学の専門家が過半を占める会議で、「子ども・被災者支援法」の具体化を図るというのは、越権行為だと思う。

 彼らの中には医師も多いので、素人に代わって判断を下すというふるまいに何の疑問も持たないのかもしれない。

 でも、私が求めたいのはそのような「教導者」ではなく、科学的・医学的な不確実性を受け止め、人々の抱える多様な現実に目を配るためのしくみを、行政ではなく市民の目線でともに考えてくれる専門家だ。私たちは、「羊飼いに管理される羊」ではないのだから。 



■汚染が明らかな地域では、全年齢・全住民の検診が必要
(内科医・牛山元美)

 チェルノブイリ事故後、放射性物質の汚染が高い地域ほど小児甲状腺ガンが早期に増加した。
 27年後の現在、低汚染地域では当時乳幼児だった人が成人となった今になって甲状腺ガンが増加している。低線量被ばくの人体への影響は、何年も、何十年もたってから現れる可能性があることを忘れてはならない。プルームは、県境に左右されない。汚染が明らかに確認されている地域住民すべて、年齢で制限することなく、健診をすべきである。
 また、初期被ばくの実態究明は概算値だけで終わろうとしている。追加被ばくが現在進行形であることの周知もなされず、報道が下火になった山のキノコは再び食卓に上り、ホールボディカウンターの測定値が再上昇している。
 追加被ばくを増やさぬよう細心の注意を払うべきなのに、復興の邪魔だからと話題にできない。この軽率な風潮を許してはならない。



■検診事業を縮小・中止することは、後世に重大な禍根を残す 
(北海道深川市立病院内科部長・松崎道幸) 

 政府は、福島原発事故による初期被ばく量とその後の累積被ばく量が、健康影響をもたらすレベルには達していないと述べている。しかし、それは最新の医学的知見に基づいておらず、これを理由にして検診事業を縮小・中止することは、後世に重大な禍根を残すものである。
その理由を以下に挙げる。

(1) 最近の医療被ばくデータをもとに検討すると、政府と ICRP(国際放射線防護委員会)は外部被ばくの発がん影響を 1 ケタ過小評価している可能性がある。

(2)初期被ばく量は、事故から 2 週間もたってからの測定である

(3)個人積算線量計(ガラスバッジ)のデータが、真の外部被ばく量を反映している保証はまったくない。また、内部被ばくは、測定不可能である。

(4)福島県の健康管理調査結果を分析すると、福島在住者の好中球(白血球の成分)が減っている可能性があることがわかった。(下記図参照)

(5)原発事故による放射線被ばくという前例のない事態に対する対策を、従来の「医学常識」に依拠して行うことは、きわめて不適切である。想定外の影響がある可能性を、常に踏まえる必要がある。



■長期的視野に立った健康管理体制の構築が必要(北海道がんセンター名誉院長・西尾正道)


 福島原発事故後、あと出しじゃんけん的手法により棄民政策を続ける政府は最後の仕上げとして、福島県外の子どもたちの健康管理についてもインチキ

御用学者をかき集めて専門家会議を開催、今後の対応を決めようとしている。これ以上の対応は必要ないという、結論ありきのアリバイ工作である。

 そもそも、国民の健康を所管する厚生労働省は、原発事故関係の健康管理業務を環境省に丸投げした。そのため、充分な対応ができないばかりか、心配して被ばくによる健康被害の検査を受けようにも、診療報酬に関する配慮もなされていない 
 山本太郎参議院議員の質問主意書による政府とのやり取りでは、今後もまったく配慮しないことが明らかとなっている。被ばく線量の測定もまともにせずに棄民政策を続けるのではなく、長期的 視野に立った被ばく医療対 策が望まれる。 


■個人積算線量計による線量管理は「人体実験」だ(元放射線医学総合研究所主任研究官 医学博士・崎山比早子)

 原発災害から 3 年、事故の収束は全く見えない。たまる一方の汚染水、いつ壊れるかもしれない汚染水満杯のタンク群。現場には、放出された量より何万倍もある放射能が、いつ環境に出てくるかもわからない状態で存在している。このような危険な場所からは住民を遠ざけておく、というのがあるべき姿ではないか。

 しかし、日本政府および福島県の方針は逆で、避難区域を解除し住民を帰還させようとしている。

 高度に汚染された地域は除染によって年間1ミリシーベルトまではとても下げられない、けれど 20 ミリシーベルトまでならどうにかなるだろうということで、年間被ばく量の限度を 20ミリシーベルトにした。

 しかも、個人積算線量計(ガラスバッジ)をつけて測ると被ばく線量は低く出るので、住民に個人積算線量計を配布することにしたのだ。

 これではまるで人体実験ではないか。そもそも個人積算線量計をつけることが必要な場所に人を住まわせるという発想自体が常軌を逸している。

  これまでの住民被ばく線量は測ることができたのに測らせなかった。それが被ばく線量過小評価への道を開いたのだ。

 「放射線に安全量はない」は、信頼に足る科学的な裏付けがあるのだから、線量に応じてリスクは発生する。それは福島県には限らない。それを予測し、予防するのが科学者、行政の役目である。

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