検討委員会が開かれる度に、「甲状腺ガンおよび悪性疑いが○名」という報告をしなければならないことが非常につらいのですが、やはり今回も甲状腺ガンの子どもが増加していました。
甲状腺ガンおよび悪性疑いの子どもは、前回の発表から16人ふえて合計74人となりました。うち手術を受けてガンと確定した子どもは前回より7人ふえて26人です。
■同じ見解が繰り返されるだけ
検討委員会で毎回問題となるのは、これらの小児甲状腺ガンが「放射線の影響か否か」という点です。
これについて、星委員長や鈴木教授は、「現段階で放射線の影響だとは考えにくい」と繰り返しています。
彼らが、「放射線の影響だとは考えにくい」と述べる根拠は、
(1)チェルノブイリ原発事故の影響で小児甲状腺ガンになった子どもは、5歳以下の幼い子どもが多かったことに比べ、福島では18~19歳といった比較的年齢の高い子どもの割合が多いということ。
(2)チェルノブイリで小児甲状腺ガンがふえたのは、事故から4年目以降だったこと。
(3)ロシアで被ばくしていない子どものスクリーニング検査をした結果、4000~5000人にひとりの割合で小児甲状腺ガンが見つかっているという論文があること等
の理由から、福島で今見つかっている小児甲状腺ガンも“スクリーニングエフェクト”であるというのです。
(※スクリーニングエフェクトとは、甲状腺エコー検査を行うことによって、自覚症状が出る前にガンが見つかること)
■被ばくとの因果関係を調べるつもりはあるのか
しかし、岡山大学の津田教授は、昨年12月に開かれた「放射線の健康影響に関する専門家意見交換会」において、「かりに有病率を65年と長く見積もっても、まだ小児甲状腺ガン多発している」と述べています。
多発だとした場合、原発事故状況下において一番に疑われるのは“被ばく”ですが、福島県も県立医大も、さらには国も、積極的に因果関係を調べようとするどころか隠ぺいしようとしているようにしか見えません。
今回の検討委員会では、「悪性ないし悪性疑い」と診断された子どものうち、事故直後から4カ月間の外部被ばく線量を調べる「基本調査」を提出して、結果が判明したわずか24人人の実効線量推計の数値を公表して、「1ミリシーベルト未満が15人(62.5%)」と示しています。
まるで、被ばくの影響ではないと言わんばかりです。
これについては、弘前大学の床次委員からも、「ヨウ素の沈着データも出ているのだから、それと照らし合わせたほうが因果関係がわかるのではないか」といった指摘が出ていました。
しかし検討委員会終了後の記者会見で、記者から「ヨウ素の沈着データと照らし合わせるつもりはあるか」と問われた星座長は、「それでどの程度のことがわかるのかわからないが、重く受け止めたい」という消極的な返答。
今のところ、ヨウ素の沈着データと甲状腺ガンが発症している地域を照らし合わせるつもりはないようでした。
■何を「想定」しているのか
また、記者会見の場では、「甲状腺ガンおよび悪性疑いが75人」という数字をどうとらえているか」との質問に、星座長は、「想定の範囲だ。スクリーニングによって、一定数ガンが見つかるということは見当をつけていた」と返答。
しかし、さらに別の記者から「どれくらいの数になると想定の範囲内からはずれるのか。境目はあるのか」と問われると、星座長からも鈴木教授からも、明確な回答はありませんでした。
一方で、福島県立医大は、「研究」や「治療」の準備は着々と進めています。
昨年末には、福島県立医科大学内に「甲状腺センター」が設置されるという発表がありました。
この記事には、「今後増加する甲状腺検査二次検査や診療に的確に対応するため」と設置の理由が書かれています。
今後も、小児甲状腺ガンが増加することは「想定」しているようです。
また、1月末には、「小児ガン科」の新設も決まりました。(医大に小児ガン科の設立へ)
新設の理由は、「原発事故のあと、住民の間で放射線による健康への影響に不安が高まっているため」としていますが、不安を解消するためなら、すべての福島県民を対象に「血液検査」を実施して、放射線の影響を科学的に調べた方が、よほど不安解消につながるのではないでしょうか。
そして検討委員会があった2月7日には、「甲状腺ガンの遺伝子解析 原因解明へ福島医大」というニュースが発表されました。
この記事のなかで鈴木教授は、「子どもや保護者から『なぜガンになったのか』と聞かれるので、説明できる根拠を見つけたい」とコメントを発表しています。
しかし、検討委員会後の記者会見で、「遺伝子解明で、被ばくと甲状腺ガンの因果関係も解明できるのか」と問われた際には、「あくまでも発ガンのメカニズムを検証するということだ」として、被ばくとの因果関係解明については言葉をにごしました。
しかし、患者がもっとも知りたいのは、「被ばくとの因果関係」であるはずです。
さらに記者から、「検査と治療をやっているところが研究もするということになると、患者はセカンドオピニオンを受ける等の自由な選択ができなくなるのではないのか。倫理委員会を立ち上げるつもりはあるか?」という質問が出ましたが、星委員長は、「今日の議論とかなりずれているので、答えの準備ができていない。質問の意味も十分わからない。倫理委員会は通っている」と、よくわからない返答をしただけでした。
(訂正とお詫び:上記の「今日の議論とかなりずれている…」との返答を、当初、鈴木教授の発言として記載しておりました。星委員長の誤りでした。訂正してお詫び致します 2014/02/10)
(訂正とお詫び:上記の「今日の議論とかなりずれている…」との返答を、当初、鈴木教授の発言として記載しておりました。星委員長の誤りでした。訂正してお詫び致します 2014/02/10)
■募るばかりの不信
子どもの甲状腺エコー検査については、今年3月で「先行検査」を終了します。
県立医大は、8月までには二次検査の結果も含め、総括を発表する予定とのことです。ちなみに、外部被ばくを調べる「基本調査」に関しては、現在回収率が25%程度。問診票の簡易版を作成して配布を始めていますが、思ったほど回収率は伸びていないようでした。
このまま県立医大が調査をつづけていて、被ばくとの因果関係解明は進むのでしょうか。また、福島県民の方々が、本当に安心して生活をし、かりに治療が必要になった場合は、信頼して治療を任せることができるのでしょうか。不信は募るばかりです。
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詳細なレポートをありがとうございます。
返信削除”鈴木教授は、「今日の議論とかなりずれているので、答えの準備ができていない。質問の意味も十分わからない。倫理委員会は通っている」と、よくわからない返答をしただけでした。”
の部分ですが、その発言者は鈴木眞一氏ではなく、星北斗座長でした。
よろしければこちらもご参照ください。
http://fukushimavoice2.blogspot.com/2014/02/blog-post_7.html
ご指摘ありがとうございました!私のメモ書きが誤っておりました。記事を訂正し、お詫びと訂正を記載いたしました。どうぞよろしくお願い致します!
返信削除いつもレポートをありがとうございます。深謝します。
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