先日から、除染の基準である「毎時0.23マイクロシーベルト」を引き上げる、という報道が何度か流れています。
去る6月15日には、環境省と、福島市・郡山市・伊達市・相馬市の4市が集まり、福島市内で「除染に関する有識者との意見交換会」が開かれました。
この意見交換会のなかでは、除染基準の見直しに加え、これまでの除染結果や、今後の除染のあり方などが話し合われました。
この問題に関連するレポートを、2度にわけてお届けしたいと思います。
この意見交換会のなかでは、除染基準の見直しに加え、これまでの除染結果や、今後の除染のあり方などが話し合われました。
この問題に関連するレポートを、2度にわけてお届けしたいと思います。
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レポートの前に、「毎時0.23マイクロシーベルト」という数字が何を意味しているかについて簡単に説明しておきます。
一般人の「追加被ばく線量」は、年間1ミリシーベルトと定められています。
しかし、原発事故後、多くの放射性物質がまき散らされ、福島をはじめ、北関東や首都圏までも、年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトを超える地域が出現しました。
環境省は、年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトを超える地域を指定するために、毎時0.23マイクロシーベルトを超える地域を、「汚染状況重点調査地域」として指定しました。
(毎時0.23マイクロシーベルトの計算式はこちら)
環境省は、年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトを超える地域を指定するために、毎時0.23マイクロシーベルトを超える地域を、「汚染状況重点調査地域」として指定しました。
(毎時0.23マイクロシーベルトの計算式はこちら)
今現在でも、福島県をはじめ、岩手県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県などの自治体が「汚染状況重点調査地域」に指定されています。
「汚染状況重点調査地域」は、モニタリングや除染などを行い、できるだけ被ばくを低減するよう対策をとることが求められています。そのため「汚染状況重点調査地域」に指定された自治体は、毎時0.23マイクロシーベルトを下回ることを目標に、除染などを行ってきたという経緯があります。
■ 0.23マイクロシーベルト毎時を引き上げる?
ところが6月6日に、「毎時0.23マイクロシーベルトのおよそ2倍へ 国が除染目標値の引き上げを検討」という報道がありました。
福島市・郡山市・伊達市・相馬市が、環境省に毎時0.23マイクロシーベルトの引き上げを求めているというのです。
福島市・郡山市・伊達市・相馬市が、環境省に毎時0.23マイクロシーベルトの引き上げを求めているというのです。
そこで私は、この4市に電話取材してみました。 以下がその回答の要旨です。
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(伊達市・放射能対策課 職員)
そもそも毎時0.23マイクロシーベルトという基準は、除染で達成すべき基準ではなく「汚染状況重点調査地域」を決めるための基準だ。除染の目標については、放射性物質汚染対処特措法に、低減の目標が明記されており、その低減目標はすでに達成できている。
伊達市ではガラスバッチを市民ひとりひとりに1年間付けていただいた結果、毎時0.4~0.5マイクロシーベルトくらいでも年間追加被ばく量は1ミリシーベルトを超えないことがわかった。だから環境省に、数値の見直しを求めている。
(郡山市・原子力災害対策課 職員)
毎時0.23マイクロシーベルトという数値を見直してほしいとは要望していない。今まで除染を進めてきて、いきなり除染はしませんよということは言えない。ただ、毎時0.23マイクロシーベルトという数字が、除染の基準のように考えられている傾向があるので、そうではないということは、はっきりしたほうがよい。そのあたりの認識の整理と、震災から3年経過して、除染作業の結果や、積算線量計の結果などをふまえて、今後の除染をどうしたらいいかという話し合いを進めたい。
(相馬市・放射能対策室職員)
毎時0.23マイクロシーベルトという基準を変えてほしいとは思っていない。そもそも0.23という数字は、除染のガイドラインには書かれていない。放射性物質汚染対処特措法には、子どもがいるところは60%以上の低減を目指すということになっているので、それを目標にやっているという状況だ。また、子どもたちにはガラスバッチを付けていただいて、年間追加被ばく線量1ミリシーベルトを切っているかどうかや、実際どれくらい被ばくしているかなどを調査させていただきながら、適宜、手当をしたい。
(福島市)
数値引き上げの要望はしていない。詳しくは、福島環境再生事務所のほうに問い合わせてほしい。
(環境省)
数値の引き上げなどは検討はしていない。毎時0.23マイクロシーベルトという値が除染の目標であると報道されたり、除染のガイドラインに載っているなどと書かれたりしているのだが、ガイドラインにそういうことは書かれていないし、毎時0.23マイクロシーベルトは「汚染状況重点調査地域」を指定する際の基準なので、それを今の段階で変更するということは考えていない。たしかに伊達市の市長などが、ときおり、この数値をどうにかしたほうがいいんじゃないかというような話をされている。それは伊達市が独自で個人の積算線量をはかって、それをふまえて話をしている。だから、おそらく情報の元というのは伊達市長の発言が多いのかなと思う。その他の市からも、個人の追加被ばく線量に着目してほしいだとか、そういった要望はいただいているので、それをふまえて副大臣のほうから、勉強会を設置して検討していく予定になっている。
(福島環境再生事務所)
環境省は毎時0.23マイクロシーベルトという基準を引き上げるという検討はしていない。なおかつ毎時0.23マイクロシーベルトという数値は、除染の目標ではなく、汚染状況重点調査地域という広いエリアを特定するための基準だ。それを変えるということはしない。
これまで目標として示してきたのは、放射性物質汚染対処特措法の基本方針に書かれているように、自然減衰も含めた目標として、平成23年8月からの2年間で「一般公衆の年間追加被ばく量を50%低減させる」「子どもの年間追加被ばく量を60%低減させる」という目標があり、現時点でそれぞれ約64%、65%低減している。
4月14日付けで、環境省宛に出ている4市からの要望は、以下の通り。共通する事項としては、毎時0.23マイクロシーベルトという数値が除染の基準というような認識で報道されているので、数値の意味をきちんと伝えてほしいということだ。
4月14日付けで、4市から環境省に対して出されている要望
(福島環境再生事務所にヒアリング)
(福島環境再生事務所にヒアリング)
→ 福島市から出ている要望
1.住宅除染を加速化させるための除染手法を確立してほしい
2.個人被ばく線量や物理的減衰等を踏まえた除染作業の平準化目標を策定すること
2.個人被ばく線量や物理的減衰等を踏まえた除染作業の平準化目標を策定すること
3.除染から環境回復、復興への加速化をうながす方策を検討すること
4.独自の除染の取り組みが比較的早期にはじまり、治験やさまざまなデータを有する各自治体を中心とした勉強会を開催し、上記1.2を強力に推進すること。
→ 郡山市から出ている要望
1.除染を早期に完了させるための除染手法の標準化をはかること。
2.個人被ばく線量や物理的減衰等をふまえた除染作業の数値目標を策定すること。
3.除染から復興への加速化をうながす方策をきちんとすること。
4.治験やさまざまなデータを有する各自治体の意見を聞きながら、上記1~3を強力に推進すること。
5.除染業務委託基準を緩和してほしい。
6.個人が実施した除染費用の賠償を東京電力に強く申し入れてほしい。
→ 相馬市から出ている要望
1.平成23年5月に文部科学省が学校において、児童/生徒等が受ける線量について年間1ミリシーベルト以下を目指すことを発表しているが、児童・生徒等の生活全体で受ける線量の目標値について明示すること。
2.最新の治験に基づいて、年間追加被ばく線量1ミリシーベルトに対応する空間線量の推計、計算方法を考察すること。
3.長期的な目標として、追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となることという場合の長期的を具体的に提示すること。
→伊達市から出ている要望
1.個人被ばく線量や物理的減衰等を踏まえ、追加被ばく線量を基本とした合理的な除染作業の数値目標を策定してほしい。
2.除染から復興への加速化をうながす方策を検討すること。
3.治験やさまざまなデータを有する各自治体の意見を聞きながら、具体的な対策を講じること。
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■伊達市が強く要望…?
まとめますと、電話取材によって明確になったことは、以下の点です。
(1)そもそも、毎時0.23マイクロシーベルトという基準は、除染で下げる目標の数値ではなく、「汚染状況重点調査地域」を決めるための数字である。
(2)放射性物質汚染対処特措法の基本方針には、自然減衰も含めた目標として、平成23年8月からの2年間で「一般公衆の年間追加被ばく量を50%低減させる」「子どもの年間追加被ばく量を60%低減させる」と示されており、これはすでに達成できている。
(3)はっきりと数値の引き上げを求めているのは伊達市だけだが、他の市からも個人の追加被ばく線量に着目した除染基準を示してほしいという要望は出ている。
とくに伊達市が、毎時0.23マイクロシーベルトという基準を上げたがっている、という印象でしたが、他の市も、除染をしても毎時0.23マイクロシーベルトに下がらない場所があり、頭を抱えているのだろうと感じました。
ちなみに、「だて復興・再生ニュース」では、『年間1ミリシーベルト=0.23μSv/hの呪縛』というタイトルで大々的に問題視しています。
ちなみに、「だて復興・再生ニュース」では、『年間1ミリシーベルト=0.23μSv/hの呪縛』というタイトルで大々的に問題視しています。
次回は、6月15日に開かれた「除染に関する有識者との意見交換会」のレポートをお届けします。実際に意見交換会を傍聴してみて、各市の意見がはっきりと見えてきました。
ママレボ@和田
ママレボ@和田
除染基準?毎時0.23マイクロシーベルト引き上げをめぐる問題(その2)
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