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2014年10月2日木曜日

津久井進弁護士に聞く――「子ども・被災者支援法」に基づく「公営住宅の入居緩和」というお目こぼし?

9月26日、国土交通省・復興庁から、

「子ども・被災者支援法」に基づく支援対象避難者の公営住宅への入居について

という通知が出されました。

平成23年3月11日時点で、福島県中通り及び浜通り(避難指示区域を除く)に居住していた方を対象に、公営住宅の入居に関して地域の住宅事情や空き住居の状況等を踏まえた各都道府県・市区町村の判断により、以下の様な優先的取扱いを受けることが出来るというものです。

平成23年3月11日時点で、福島県中通り・浜通り(避難指示区域を除く)に居住していた方は、「居住実績証明書」が発行され、対象者としての証明になります。

「対象地域が中通りと浜通りに限定されてしまった」
「これを機に、応急仮設住宅の供与期間の延長はなくなるのでは」
「今さら、公営住宅に入居・・・と言われても・・・」
という、当事者の困惑の声も聞かれます。

『大災害と法(岩波書店)』『「災害救助法」徹底活用(クリエイツ鴨川)』等を執筆され、原発事故避難者への救済活動にも力を注ぐ、弁護士の津久井進先生に、今回の政策に対して、重要なコメントをいただきました。
全文掲載しますので、どうぞ、ご一読ください。

~~~(津久井進先生からのコメント)~~~

このたび国は,対象地域の避難者に対する対応(公営住宅の入居条件の緩和)を打ち出しました。しかし,子ども被災者支援法が求める本当の支援のあり方からはほど遠いものと言わざるを得ません。

 今回の方策のポイントは,第1に世帯の一部だけの入居を認めるなど世帯条件の緩和,第2に収入要件等の緩和(但し分離世帯のみ),第3に住宅困窮要件の緩和(自宅を持っていても入居できる)の3点です。つまり,それだけです。

 逆に,問題点はたくさんあります。

 まず,「子ども被災者支援法に基づく施策だ」と打ち出していることに強い違和感を覚えます。この法律の理念は,被災者の不安を解消し,安定した生活の実現を果たすために,国が“寄り添う”ところにあります。ところが,今回の方策は,あくまでも国の視点に立って,“お目こぼし”を与えるスタンスです。しかも,被災者にとっての恵みは,極めて限定的です

 被災者目線に立っていないことは,家賃を通常どおり徴収することからも明らかです。生活上の負担を軽減することが支援法のめざすところだったはずです。避難者に,無償から有償に切り替えれば,生活上の負担が増大することは明らか。にもかかわらず,この負担を軽減する措置は一切示されていません

 この方策は,ガチガチの“公営住宅の仕組みや実態”の一部を緩和しただけで,“避難者の困窮の実態”を直視していません。きっと,この方策で救われる避難者は,ごくごく限られた数でしょう。そうなるのは,実態調査(=避難者の声を聞く。支援法14条)のプロセスを怠っていたのだから当たり前です。法の手続きを怠っているのも問題です

 そもそも,今回の方策は,「避難」なのか「移住」なのかはっきりしません。「避難」であれば有償とするのはおかしい。「移住」であれば実施期間を“当分の間”としているのはおかしい。この中途半端でどっちつかずの施策のしわ寄せは,結局,被災者のところに集まります。被災者の不安を解消することが,支援法の目的だったはずなのに。

 阪神・淡路大震災の被災地は,まもなく20年目を迎えます。公営住宅と銘打って入居した“終の住まい”が,借り上げ住宅の入居期限だと宣言され,退去を求められる事態が起きています。家を追われる方々のほとんどが高齢者です。阪神では,5年以内に仮設住宅は解消されましたが,復興住宅での孤独死は今も続いています。制度の“公平”を守るために,人々の“住まい”の権利,さらには命までもがおびやかされています

 今回の方策について,たしかに“何もしないよりマシ”,“わずかでも一歩前進”という肯定的な捉え方もあるかも知れません。しかし,子ども被災者支援法は,抜本的,根本的な対策を講じるための基本法です。こうした小手先の運用改善は,支援法が無くとも当然やるべき施策です。これまで経験したことのない大災害なのだから,これまでにない施策を打ち出さなければなりません。それが本当の“公平”のはずです

 私たちは「避難者にとって必要な条件は何か」を訴えていかなければなりません。

津久井 進
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10月13日(祝)13時30分~16時30分

郡山市労働福祉会館にて、
「原発事故被害者の救済を求める全国集会in郡山」が開催されます。






「このままでは切り捨てられてしまうのではないか・・・」――【原発被災者がともに住宅問題を考える集会9.19】
も合わせてお読みください。


文責/伊藤千亜







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