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2015年2月24日火曜日

放射能と薪の話(2)――棄てることもできない

放射能と薪の話(1)では、公表されていない薪の汚染データについて書きました。今回は、棄てることもできない薪の現状をレポートします。
(『ママレボ』出版局/吉田千亜)

◆自前の測定の結果は、470ベクレル/kg

 郡山市に住むNさんは、自宅の薪ストーブの灰の近くで、16マイクロシーベルト毎時という空間線量の測定値が出た日(20116月)以来、薪ストーブを使用することはなくなりました。しかたなく、灯油ストーブで福島の寒い冬をしのいでいます。
東京電力の担当者は「洗って使えばいいのでは」などと無責任なことを言い、市の職員は「前例がない」と言い放ちましたが、Nさんは、それでも市にかけあいつづけていました。
2014年、知人のはからいで、Nさんは自宅の薪を測定することができました。粉砕し、食品と同じやり方で測定します。
住民は、そう簡単に薪を粉砕・測定することができません。だからこそ、粉砕して測定した行政機関のもつデータはたいせつなのですが、その測定値を公表していないということは、「放射能と薪の話(1)」で、開示請求した測定データとともに詳しく述べました。

Nさんの薪の測定結果は470ベクレル/㎏。使用してよいとされる基準値、40ベクレル/kg(以下)の、10倍以上です。

Nさんの薪の測定値。470Bq/kgと100Bq/kg。
どちらも使用してよい基準値を大きく超えていた

 Nさんはその測定結果をもとに、再度市にかけあいました。きちんと数値を証明したのだから、片づけてほしいと訴えたのです。

◆少しずつゴミに混ぜて捨ててください・・・!?

 郡山市の職員は、測定値を見てふたつの選択肢を提示しました。
 ひとつは、「民間の業者を派遣する」ということ。もうひとつは、「少しずつゴミに混ぜて棄てる」ということ。
 前者は、お金がかかります。しかも、みずからお金を払って廃棄せよということです。
後者は、焼却灰の放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kgを超えると指定廃棄物として国が処分しなくてはならないので、薄めてしまいましょう、という発想です。
 Nさんは、あっけにとられたといいます。

「そんなことを言われても、どちらも選べませんよね……」

以前、記者は、いわき市在住の方からも「高濃度のゴミは、少しずつ生ゴミに混ぜて出してくださいと言われて、驚いた」という報告を受けていました。住民が「そういう問題だろうか」と疑問を抱くのも、当然です。原発から出ている汚染水の処理と、同じ発想――。
「どうしても一度に片づけたいのなら、軽トラックで、クリーンセンター(清掃センター)に持ってきてくれれば片づけます」市の職員は、最後にそう言ったそうです。

◆汚染されている大量の薪を抱えて運ぶのは、いや

 Nさんの薪置き場は、以前、空間線量を測る、ホットスポットファインダーで測定させていただいたことがあります。他の場所よりも高く、いちばん高いところでは1マイクロシーベルト毎時を超えていました。薪の表面近くでも、0.50.7マイクロシーベルト毎時ありました(2013年、冬)。


薪置き場の近くの放射線量(地表15cm)

 Nさんは

「もうこれ以上被ばくしたくないと思っているのに、大量にある薪をすべておなかに抱えて軽トラに載せる作業をするのは、もういやだと思った」

と言います。それは、当然のことだと思います。

「結局、市民があきらめるのを待っているんだろう」

Nさんは、こんな結論に達したといいます。
丸太を長さ40cmに切りそろえ、さらにオノで割ってこつこつ蓄えてきた薪は、もう使うことも、棄てることもさえできないのです。

◆誰のため、何のための「除染」なのだろう

 2014年の秋、Nさんのお宅に「除染」作業の順番が回ってきました。事故から3年以上たちましたが、これでも「比較的、空間線量の高い地域」として、早いほうなのだといいます。
 廃棄すらできない薪は、Nさんの敷地内に、まだありました。
 Nさんは、除染に来た業者に、

「薪を何とかしたいのですが・・・」

と相談しました。
すると、
「除染は、敷地や宅地の『地面』だけが対象であって、その上にあるものは対象ではないのでわかりません」
という、驚くべき返事が返ってきました。

「『除染』って、空間の線量を下げるためにやっていると思っていたのに、薪をどうするか決まっていないので、対応できません、と言われました。何もしなければ、薪のまわりの線量は下がらないのに……。
もう、行政も、徹底的に私たちが泣き寝入りするのを待っているとしか思えない……」

Nさんは、ここでもまた、きちんとした対応をしてもらえなかったのです。



放射能と薪の話(3) ――ADRに訴える に続く 

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