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2013年10月26日土曜日

郡山市測定レポート(2)

2013年9月、こどもみらい測定所の所長、石丸偉丈さんと一緒に郡山市内をホットスポットファインダーで測定しました。

石丸さんによるレポートもぜひ、お読みください。


測定レポートに入る前に、郡山市の除染計画について、疑問に思うことがあるので、書きます。
道路わきの草むらに一歩入ると、0.3~0.5μSv/hほど増える

郡山市の除染計画は平成25年1月に発表されています。
「平成25年8月末までに、市民の生活環境の年間追加被ばく線量を平成 23年8月末と比べて約 50%減少させることを目指します。特に子どもの生活環境は平成25年8月末までに、年間追加被ばく線量を平成 23 年8月末と比べて60%減少させることを目指します」とも書かれています。

実は、何もしなくても(除染をしなくても)、2年間でその目標の数値に近くなります。空間線量の物理的減衰が2年間で40%ほどあり、その数値に、風雨などの自然減衰が加わるわけです(1年で15%だと言う方もいます)。
目標値を設定した郡山市は、どの程度除染の効果を期待しているのでしょうか。
住民の中には「除染さえすれば状況は良くなる」と期待する方もいるはずです。何もしなくても、じつは2年で50~60%近く空間線量が減ることを知ると、なんとなく裏切られたような気持ちになります。
もちろん、すべてが無意味とは言いませんが、郡山市の除染目標値はもう少し高くても良かったのではないでしょうか。

さて、測定についてのレポートです。
こどもみらい測定所の石丸偉丈さんと、郡山市内在住のAさんとBさん、そして私の4人で測定しました。

Aさんによると、郡山市による除染の順番がまわってくるのは、平成27年。郡山市が行うとしている除染計画期間の最後のほうです。
まともに待っていれば、原発事故から5年間のもっとも線量の高い時期に、行政による除染もなく、生活し続けるしかありません。行政による除染を待っていられないと、多くの世帯は、やむなく自分たちで(或いは業者に依頼して)除染を行っているのが現状です。

また、市から町内会に配られた「除染費用50万円」を資金に、地域ボランティアをつのって、通学路などを独自に除染した地域もあります。(この件については地元市民団体が、「市民に無用な被ばくをさせないでほしい」という4000筆の署名を、災害直轄室に届けています。)


この日は、今年3月にホットスポットファインダーで測定させていただいたBさんの自宅(郡山市測定レポート5月1日)に再び伺いました。
このお宅の線量が高いことは行政側も把握しています。Bさん宅の子どもの積算線量計の数値が、他の子どもに比べて高いということが分かったからなのだそうです。市の職員や教育委員会も足を運び、何度か空間線量を測定しています。
市による除染は、つい先月、ようやく終わったそうですが、Bさんは、「除染の効果が本当にあるのか心配」ということで、今回、Aさんと一緒に、もう一度同じ測定器で測ることになりました。

事故後、はじめて線量計を入手して測定ができた時、子どもの寝室が1μSvあり、驚いて、部屋を移動させた、という話は前回訪れた時に伺っていました。今も、1階の真ん中の部屋を子ども部屋にして、線量を気にしながら生活をされています。


郡山市内に入ると、それこそ1時間もしないうちに、0.2~0.3μSvを「低い」と思うようになってしまいます。

「たまに目にする1μSv/hだとか、事故直後の2μSv/hとか3μSv/hだとかを見ていたら、0.5も高いと思わないよ」

と苦笑するBさんに、

「0.3で『低い』と思うなんて、あなたもさっきより感覚おかしくなってきたね」

と指摘されました。

「どうしても周囲の線量と、比較しちゃうんですよ。本当は比較の問題ではないんですが、感覚が麻痺してしまうんです」

と、Aさん。

2階の寝室(事故直後1μSv/hあった)は、0.2~0.3μSv/hまで下がっていました。いくら事故直後より下がったとはいえ、子どもたちは引き続き1階の真ん中の部屋で寝ているそうです。
「遮蔽したほうがいいって教えてもらったんだ」と言ってみせてくださった2階の窓には、水を入れたペットボトルが並びます。



遮蔽のために並んだ水の入ったペットボトル
測定すると、窓ガラス部分(窓上部)より、ペットボトルの内側(窓下部)のほうが線量が低く、さらに、壁の下のほう(窓枠より下)が線量が低い、ということも分かりました。

実は、このお宅には震災後に産まれた小さな赤ちゃんもいます。

「この子はまだ背が低いから、室内の窓からの被ばくを、大人よりは免れているのかな・・・」

とBさん。



郡山市の、除染計画には、こう書かれています。

「市内全域の追加被ばく線量を長期的に年間1ミリシーベルト(高さ1メートルにおいて毎時0.23マイクロシーベルト)未満とすることを目指します。」

つい先日(2013年10月21日)、国際原子力機関(IAEA)専門家チームのフアン・カルロ ス・レンティッホ団長は、来日の際、

「(除染の目標として)必ずしも1ミリシーベルトにはこだわらない。」

と述べました。 
今後、この発言が国内にどう影響していくのか、注視しなくてはなりません。
 1ミリシーベルトにこだわらない理由は「利益と負担の バランス」だと言いましたが、結局、この「利益」は対象が大人です。そこに、子どもの「人権」の問題は存在しないのでしょうか。


そもそも、郡山市の除染計画は5年間で設定されていますが、子どもの生活はたった1年で事故前と同じ、通常通りになりました。校庭の水たまり(放射性物質が集りやすいと言われている)の水をスポンジで吸い取る作業も、子どもたちが地面に這ってやっていると、Aさんは子どもたち自身から聞いたそうです。

「たしかに校庭は除染されてはいるから、普段どおりのことが行われるのかもしれません。でも、『本当にこれでいいのだろうか』と、考えたら苦しくなります」

とAさん。



続きは、「郡山レポート(3)」でご報告します。

(ママレボ@伊藤)







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