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「ママレボ編集長通信No8」のブログ版は下記でもお読みいただけます
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年間20ミリシーベルトの被ばくを下回ることが見込まれる地域へ帰還を促進するため、原子力規制委員会が4回にわたって開いていた『帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム』が11月11日、提言をまとめました。
すでに報道されているように、提言の内容は、今まで政府が除染目標として定めていた“年間1ミリシーベルト”を事実上撤回し、空間線量ではなく、「個人線量計」による自己管理で「年間被ばく量20ミリシーベルト以下」をめざそうというもの。これにより、除染や賠償の費用をできるだけ軽減させようというねらいがあるものとみられています。
事故直後から、日本政府は「年間被ばく量100ミリシーベルト以下では、有意な健康影響は認められない」という考え方に依拠した政策を打ち出しており、今回このような検討チームを開いて議論するまでもなく、最初から“結論ありき”で進んでいたと言えるでしょう。
しかし、委員の春日文子氏(日本学術会議副会長)からは、「英国の医学雑誌“ランセット”には、100ミリシーベルト以下の被ばく量でも白血病がふえたという報告もあるので、そうした見解も盛りこむ必要がある。また、帰還する人への施策だけでなく、帰還しないと決めた人に対する施策も同等に行うべきだ」といった意見が出されました。
検討チームは、近く委員たちの意見を提言書に反映し、原子力規制委員会で承認を得るとのこと。“年間20ミリシーベルト”はとうてい容認できる数字ではありませんが、春日氏のような意見がどれくらい盛りこまれるかも今後の注目点のひとつになります。
そこで、『ママレボ』編集部では、「年間被ばく量20ミリシーベルトと政府の責任放棄」にNO!という声をあげるべく、各分野の専門家の方々からコメントをいただきました。
****専門家たちが、年間被ばく量20ミリシーベルトに反対する理由****
◇「年間20ミリシーベルト以下で安全」は政治的・経済的基準 (元放射線医学総合研究所主任研究官・医学博士/崎山比早子)
原子力規制委員会の新指針「年間被ばく量20ミリシーベルト」は、放射線作業従事者の年間線量限度だ。それを放射線に感受性の高い妊婦、乳・幼児、子どもを含む全住民の線量限度とするという神経は、いったいどこから来ているのか?
これまで科学的に積み重ねられた証拠は「放射線に安全量はない」ということを示しているし、国際機関もこれを認めている。しかもこれは1年間の線量であるから、5年住めば100ミリシーベルトになる。
それでは、なぜ今になってこれまでの年間1ミリシーベルトではなく、20ミリシーベルトまでを安全とするキャンペーンが声高になってきたのか? そうしないと、避難させなければならない住民、補償しなければならないものがふえるからで、これは人のいのちよりも経済を優先させた考え方だ。
個人線量計をつけさせ、多くの住民を被ばくさせながらその健康を管理するという方針は、これから大規模な人体実験を行いますよということに等しいのだ。
これまで科学的に積み重ねられた証拠は「放射線に安全量はない」ということを示しているし、国際機関もこれを認めている。しかもこれは1年間の線量であるから、5年住めば100ミリシーベルトになる。
それでは、なぜ今になってこれまでの年間1ミリシーベルトではなく、20ミリシーベルトまでを安全とするキャンペーンが声高になってきたのか? そうしないと、避難させなければならない住民、補償しなければならないものがふえるからで、これは人のいのちよりも経済を優先させた考え方だ。
個人線量計をつけさせ、多くの住民を被ばくさせながらその健康を管理するという方針は、これから大規模な人体実験を行いますよということに等しいのだ。
◇10~20ミリシーベルトの被ばくでがんは有意にふえる
(北海道深川病院内科部長/松崎道幸)
(北海道深川病院内科部長/松崎道幸)
政府は、100ミリシーベルト以下の放射線被ばくでは、がんのリスクは無視できるほど小さいと述べている。しかし、2010年以降、重要なデータが3つ公表された。
(1)医療被ばく(CT検査など)10ミリシーベルトごとに、がんのリスクが有意に3%ずつふえていた。(カナダ)
(2)日本の原発労働者のがん死リスクが、10ミリシーベルトの累積被ばくで、有意に3%ふえていた。
(3)自然放射線被ばくが1ミリシーベルトふえるごとに、子どもの白血病のリスクが12%ずつ有意にふえていた。(イギリス)
このほかにも、10~20ミリシーベルトの被ばくでがんが有意にふえることを証明した科学論文が公表されている。毎年20ミリシーベルトの被ばくを5年間続けると、大人のがんは30%ふえ、子どもの白血病は12倍ふえることになる。
最新の科学データを無視し、放射線被ばくの影響を一ケタ過小評価した政策を進める政府に、われわれと未来の子どもたちの健康を託してよいのだろうか。
◇私が20ミリシーベルトに反対する理由
(東京大学大学院教育学研究科教授/影浦峡)
(東京大学大学院教育学研究科教授/影浦峡)
(1) 一般公衆の被ばく限度は年間1ミリシーベルトという法的枠組みがある。管理基準とはいえ、社会的な合意であり、事故が起こったからといって基準を変えることは許されない。
(2) ICRP(国際放射線防護委員会)の現存被ばく状況では、1~20ミリシーベルトの低いほうから参照レベルを選ぶとされている。これは、やむをえない状況における防護対応のステップを示す目安であって、20ミリシーベルトまで安全だとうこととはまったく違う。
(3) 国連健康に関する特別報告者勧告(グローバー勧告)も、1ミリシーベルトを達成する具体的な時間を定めるよう求めている。
(4) 20ミリシーベルト以下で影響がないといった主張は、「わからない」ことを「存在しない」ことにすり替える詭弁(きべん)で、非科学的な態度である。
(5) 最近、低線量でも影響があることを、エビデンス(医療的な意味での証拠)とともに示す研究が複数現れている。
もはや「低線量被ばくについてはわからない」と開き直ることは、けっしてできない。
◇年間20ミリシーベルトは、医学的見地からも、きわめて無責任
(医学博士/ヘレン・カルディコット)
(医学博士/ヘレン・カルディコット)
みなさんに認識していただきたいことは、「放射能」に関する安全な数値など存在しないということだ。これは全米科学アカデミーも発表している。しかも、子どもたちは大人以上に「放射能」による人体への影響が高く、「がん」の誘発率は10~20倍になるといわれている。さらに、女性は男性よりも「放射能」に対しても敏感であり、人体に受ける影響の確率が高いのだ。日本政府が今回出した年間20ミリシーベルトという数値は、医学的見地からも、きわめて無責任な行為である。放射能の危険性に対しては、福島のみに限られているようだが、広範囲の地域への対応をただちに開始すべきだ。そして、すでに年間1ミリシーベルト以上の「放射能」を浴びている人々は、すべての病の発生を想定し、長期的な健康診断を続けなければならない。
◇健康障害のリスクを軽視する指針は、医師として許せない
(内科医/牛山元美)
(内科医/牛山元美)
CTスキャンや心臓カテーテル検査によって、約10ミリシーベルトの医療被ばくを受けた方の発がん率は、およそ3%上がるという報告がある。オーストラリアやイギリスからも、5ミリシーベルトを超える被ばくで白血病やがんの発病率がふえたという大規模な研究報告が相次いでいる。低線量による健康障害の実態は、まだ未解明な部分が多いとはいえ、新たな研究報告があるたびに、やはりより低線量でも危険であることが立証されているところだ。明らかに多大な健康障害を生み、でも個人が努力することで解消できる喫煙習慣を引き合いに出し、のがれられない年間20ミリシーベルト の被ばくによる発がんリスクを軽視させ、発がんを国民の自己責任にしようとする責任転嫁、健康的生活を営むという基本的人権の侵害、経済効果を優先し健康障害のリスクを明らかに軽視する今回の指針は、医師として許せない。
◇個人線量に着目することで、調査・除染責任を放棄した政府
(東京災害支援ネット代表 ・弁護士/森川清)
(東京災害支援ネット代表 ・弁護士/森川清)
「個人線量」をもとに被ばく線量を評価することで、20ミリシーベルト基準と相まって施策の放棄ともいえる事態が生じるおそれが大きくなる。本来、「公衆」をベースに地域全体に対して施策を検討すべきものとして地域全体の汚染状況の調査を進め、それに合わせて除染をすべきところ。なのに、具体的な「個人線量」に着目することで調査を放棄して、除染をはじめとする施策をきわめて限定的なものにしてしまう。また、事前的な評価から事後的な評価に変わってしまうと、被ばくしたあとで施策に活かしていくことになり、個々の住民の安全が保障されなくなる。帰還にあたっては、徹底的な汚染状況の調査と除染を求めていかなければならない。
◇帰還しない場合の支援措置も充実を
(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授/平川秀幸)
(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授/平川秀幸)
今回、原子力規制庁が示した基本的考え方(案)は、「帰還に向けた」という検討チームにあてがわれた議論の枠組みに縛られている。そのため、帰還した場合の放射線防護や生活再建については重要な一歩となりつつも、帰還しない場合の生活再建支援のあり方にはほとんど触れていない。このため、すでに帰還しないと決めている人だけでなく、帰還するかどうか迷っている人にも制約が残るものになっているのではないか。このままでは、帰還しない場合の支援措置が不十分だったり見通しが不透明だったりするために、しかたなく帰還を選ぶケースも出かねない。このような偏りは、つい最近まで政府が「全員帰還」を原則にしていたことの結果であり、今後は速やかに、子ども被災者支援法に則るなど、帰還しない場合も含めた総合的な支援体制を用意されるよう、政治のイニシアティヴが発揮されなければならない。
◇科学的根拠のない20ミリシーベルト
(岡山大学環境生命科学研究科 教授/津田敏秀)
もちろん、1-20ミリシーベルトという数値に“医学的根拠”はない。ましてや、「20ミリシーベルト以下でがんがでない」
実際に、
◇「カネのための科学」で、棄民政策が恒常化される
(北海道がんセンター名誉院長/西尾正道)
(北海道がんセンター名誉院長/西尾正道)
政府・原子力規制委員会は、「年間20ミリシーベルトで安全・安心」として、福島県民の帰還促進をはかる方針を打ち出した。事故前は年間1ミリシーベルトだったが、事故後はあと出しジャンケン的手法で20ミリシーベルトまで引き上げるという国家的な犯罪行為を行ったが、今度はその犯罪行為を恒常的なものとしようとしている。1ミリシーベルト以上の住民は低線量被ばく下におかれ、長期的な生体実験をされているようなものである。医学論文では20ミリシーベルト以下でも健康被害が生ずるとする多くの報告があるが、こうした科学的な証拠は無視し、原子力政策を進めるために棄民政策を正当化することに奔走している。「国民のための科学」ではなく、御用学者が作った疑似科学物語に依拠して「カネのための科学」となっている日本の現状は、悲惨な結果につながることになるだろう。
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