12月11日に伺ったときに出逢った景色は、大きな半円を描く虹でした。
この日は、Aさん(郡山市在住)と、Cさん(郡山市在住)そして、こどもみらい測定所の石丸偉丈さん、服部夏生さん、ADRA JAPANの小出一博さん、私(伊藤)の6人で、小雨の降る中、測定を開始しました。
Cさんは、幼いお子さん2人のお母さん。子どもの通学路と、親戚のお子さんの幼稚園付近の測定をしてほしい、ということでした。
今回の測定でも、やはり子どもの生活環境の中に、ホットスポットが点在していることがわかります。
◆道路に垂直に交わる側溝
側溝というと、道路に沿ってあるもの、というイメージがありますが、Cさんのお子さんの通学路には、大人の足で約20歩ごとに、道路と垂直に交わる側溝がありました。
(郡山市内の別の場所でも、そういった側溝を見かけました。)
その側溝は、道路の下を通り抜けるのですが、その道路と交わるところ(イラストの赤い○の部分)には、落ち葉や、石、落とし物(長靴やボールなど)が詰まっています。
そこの近くは、周辺(0.2~0.3μSv/h)よりも高く、0.8~1.0μSv/hほどありました。
堆積物と一緒に、放射性物質も溜まっているのだと思われます。
この測定をしたのは午前中だったのですが、午後、別の場所の同じ作りの側溝の中から手のひらサイズの石を拾いあげる下校中の小学生を、走る車の窓から見かけました。
子どもの下校時間は、ちょっとした「散歩」と同じです。当然、気になるものには手がのびるでしょう。
ある程度認識した上で現状に折り合いを付ける大人の行動と、何も分からないまま放射性物質はないことにされる子どもの行動というのは、別のものだと思います。
子どもが、常に注意し続けて生活するということは難しいかもしれませんが、せめて学校などで、「ここには放射性物質がたまりやすい」という知識の共有があると、いいのでは、とAさんとお話ししていました。
◆雨樋のない屋根から落ちる放射性物質のたまり場所
測定しながら同じ歩調で進んでいると、突然、0.2μSv/hほど線量があがった場所がありました。
「なんだろう?」と、付近を測定してみると、雨樋のない屋根から雨の落ちたことが分かる場所(下イラスト)が原因であると分かりました。地表5cmで、1.5μSv/hを超えます。
雨の落ちる場所が、通学路側にあったため、付近一帯の線量が、周囲よりも上がったようでした。
そこは、人家ではなかったので、手が入れられていない(除染はされていない)場所でした。
このような「人は住んでいないけれど、持ち主はいて、かつ、子どもが近くを歩く土地」の除染は、どうたらいいのかということは、問題のひとつではないかと感じます。
◆雨樋下が落ち葉や木に隠れている場所
上の「◆2」と同じく、通学路を歩いていて、ふと、0.3μSv/hほど線量が上がった場所がありました。
通学路に面したところに、雨樋から流れる水の出口があり、その出口が、ちょうど落ち葉や木で隠れていました。
その付近は2.0μSv/hを超えていました。
その場所に24時間立ち続けることはありませんが、子どもが毎日歩く通学路である以上、気配りがされてもいいのではないか、と思います。
◆理由がまったくわからない、ホットスポット
ホットスポットファインダーで測定していると、まったく理由がわからないのに線量が高い、という場所があることに気がつきます。
雨樋下や、屋根の雨水が落ちる場所、堆積しやすい場所、吹きだまり、木の根元、舗装の様子など、原因を予測できるケースもあるのですが、どんなに考えても変だな、という場所です。
唯一思いつくとすれば、「除染した土をここに置いたのかな」ということだけですが、それも、本当のところは分かりません。
このケースは、「郡山市」と書かれたポール(イラスト)が並ぶ、ただ1本の根元だけが、2μSv/hを超えた、不思議なケースです。
まったく同じポールが並ぶだけに、その線量の違いは、奇妙でした。
こういった場所があることを考えると、ホットスポットファインダーで測定をして、詳細なマップを作ることも、防御ためには必要な方法であると感じます。
冒頭の虹の写真ですが、じつは、この虹は、予定していた測定がほぼ終了した夕方、あらわれた虹でした。
1日中、「この線量が高い原因は何か」を考え続けていたので、思わず、「この意味は何か」と考えてしまいました。
震災からもうすぐ4年目を迎えますが、子どもをできるだけ守ろうと考え、努力し続けているお二人(Aさん・Cさん)とご一緒してお話を伺っていたので、「見えないものを考え続けることはしんどい」と改めて感じた1日です。虹と言えば「希望」のイメージですが、自然を汚してしまった申し訳なさや、それを取り戻す課題の大きさ、途方もなさも同時に感じて、複雑でした。
疲弊しながらも、今なお、考え続けている保護者も多くいます。本来は行政側が率先して被ばくの防護対策をしてほしいところですが、現状では、子どもたちが過ごす公共施設の除染のみに留まっています。できるだけ被ばくを避けて生活するためのしくみが作られてほしいと心から願います。
Aさんは、これからもこういったデータを集め、市長に届ける機会を作りたい、とお話してくださいました。
(ママレボ@伊藤千亜)
※ご一緒させていただた、服部夏生さん(こどもみらい測定所/常緑編集室)の詳細なレポートもご一読ください。こちらのブログでは、ホットスポットファインダーに表示された数値と共に、測定した土壌の結果などもきちんと示されています。
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