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年明け早々、全国各地で重要な市長選が実施されています。原発事故から丸3年を迎える福島県でも、1月19日には南相馬市で市長選があり、脱原発を訴える現職の桜井市長が再選されました。きたる26日は伊達市長選の投票日。福島県内で今年度行われている市長選挙では、福島市、郡山市、いわき市など、7市町で軒並み現職が落選しています。伊達市はどうなるでしょうか。
伊達市長選には4人が立候補していますが、有力なのは、JAや地元企業から支持されている現職の仁志田昇司氏(69)と、新人の高橋一由氏(61)だと見られています。そこで、伊達市で子育て中の母親や、地元の市議に、伊達市政について思うことなどをお聞きしました。
伊達市長選には4人が立候補していますが、有力なのは、JAや地元企業から支持されている現職の仁志田昇司氏(69)と、新人の高橋一由氏(61)だと見られています。そこで、伊達市で子育て中の母親や、地元の市議に、伊達市政について思うことなどをお聞きしました。
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■子どもを避難させてほしかった
「伊達市の対応にはいろいろ不満がありますが、やはり事故直後、なぜ子どもたちだけでも避難させてくれなかったのかと思います。他の市は、入学式や始業式を1か月遅らせたのに、伊達市だけは『人体に影響の出るレベルではない』と言って、通常どおりに学校を始めました。子どもたちは高い放射線量のなか、マスクもしないで普通に登校していました」と、仁志田市政を批判するのは、上野和恵さん(仮名)。小学生と幼稚園の子どもをもつ、3児の母親だ。
上野さんの自宅は、伊達市霊山町小国地区にある。政府は「年間被ばく量が、20ミリシーベルトを超えるおそれがある」として、2011年6月30日に、上野さん宅を含め、小国地区やその他エリアの113世帯を「特定避難勧奨地点」に指定(2012年12月末に突然解除)。これにより、上野さんは夫と子どもといっしょに、市内の比較的放射線量が低い梁川町に避難した。
上野さんの自宅は、伊達市霊山町小国地区にある。政府は「年間被ばく量が、20ミリシーベルトを超えるおそれがある」として、2011年6月30日に、上野さん宅を含め、小国地区やその他エリアの113世帯を「特定避難勧奨地点」に指定(2012年12月末に突然解除)。これにより、上野さんは夫と子どもといっしょに、市内の比較的放射線量が低い梁川町に避難した。
しかし、特定避難勧奨地点の指定方法が「地域ごと」ではなく、「世帯ごと」だったため、上野さんの子どもが通っていた小国小学校では、全校生徒57人のうち20人の世帯しか特定避難勧奨地点に指定されなかった。
住民のなかからは、「地域単位で指定してほしい」「子どもがいる家庭だけでも全戸指定したらどうか」「政府がやらないなら市が独自で取り込むべきだ」といった声も上がっていたという。しかし仁志田市長は、「基準は国が決めているので、これを損なうようなことはできない。小さい子どもに配慮する考え方は別にあると思う」として、対応しなかった。
「当時、子どもがいる人たちの多くは避難したがっていました。でも、特定避難勧奨地点に指定されなかった家は、避難をあきらめるか、自主避難するしかありませんでした。指定されれば、借り上げ住宅が用意され、医療も無償で受けられますが、指定されなければ何の補償もありません。子どもの命に差がつけられてしまったんです」と、上野さんは当時をふりかえって憤る。
住民のなかからは、「地域単位で指定してほしい」「子どもがいる家庭だけでも全戸指定したらどうか」「政府がやらないなら市が独自で取り込むべきだ」といった声も上がっていたという。しかし仁志田市長は、「基準は国が決めているので、これを損なうようなことはできない。小さい子どもに配慮する考え方は別にあると思う」として、対応しなかった。
「当時、子どもがいる人たちの多くは避難したがっていました。でも、特定避難勧奨地点に指定されなかった家は、避難をあきらめるか、自主避難するしかありませんでした。指定されれば、借り上げ住宅が用意され、医療も無償で受けられますが、指定されなければ何の補償もありません。子どもの命に差がつけられてしまったんです」と、上野さんは当時をふりかえって憤る。
■計画的避難区域にすべきだった
「小国地区と飯舘村とは、同じくらいの汚染レベルでした。だから伊達市は、飯舘村のように地域まるごと計画的避難区域に指定するか、もしくは特定避難勧奨地域にして、せめて面的に指定するよう政府に申し入れをするべきでした」
文部科学省が発表した航空機モニタリングのデータを指し示しながらこう批判するのは、伊達市議の菅野喜明氏だ。
菅野市議は、特定避難勧奨地点が決定される6月末前後で、航空機モニタリングに記されている小国地区の汚染レベルが下げられている点に着目し、「避難させないために意図的に隠蔽したのではないか」といぶかしがっている。
文部科学省が発表した航空機モニタリングのデータを指し示しながらこう批判するのは、伊達市議の菅野喜明氏だ。
菅野市議は、特定避難勧奨地点が決定される6月末前後で、航空機モニタリングに記されている小国地区の汚染レベルが下げられている点に着目し、「避難させないために意図的に隠蔽したのではないか」といぶかしがっている。
2011年5月26日時点のモニタリング(上)では、小国地区は黄色(1000K~3000K)で示されているが、7月2日時点のモニタリング(下)では、みず色(300K~600K)に汚染レベルが引き下げられている。
さらに、特定避難勧奨地点を決める際の放射線の測定方法や、避難基準にも問題があったと指摘。
「市は、放射線量の高そうな場所は計ってくれませんでした。しかも、玄関先と庭先のたった2か所の測定結果だけで判断されてしまったんです」
そもそも、同じ避難勧奨地点でも、南相馬市と伊達市では指定基準が大きく異なった。
南相馬市では、子ども・妊婦のいる家庭では、地上から50センチで計測して2マイクロシーベルト毎時以上あれば特定避難勧奨地点に指定したが、伊達市では、子ども・妊婦のいる家庭でも、地上1メートルで計測し、2.7マイクロシーベルト毎時以上計測されないと指定しなかった。また南相馬市は、“子ども”を「18歳以下」と定義したのに対し、伊達市では「小学生以下」に限定するなど、南相馬市にくらべて避難の指定基準が厳しかったのだ。つまり、避難指定の判断は、市に委ねられていた。
■防護服を着て自分で除染
伊達市保原町に住む佐藤みゆきさん(仮名)は、防護服を着て、みずから自宅前のホットスポットを除染したという。
「うちの団地の前には、10マイクロシーベルト毎時を超えるようなホットスポットがあちこちにあります。でも、市は除染してくれないので、元東電社員の方にアドバイスをいただきながら、団地のママ友といっしょに除染しました。除染といっても掃き掃除程度。防護服を着るなんて大げさだと思われるかもしれませんが、本来、0.6マイクロシーベルト毎時を超える場所は“放射線管理区域”なので、防護服を着用しなくてはならないのです。でも、みんなそんなことは知りませんから、普通のかっこうで掃除しています。なんだかおかしいですよね」
伊達市は、汚染レベルに応じて、除染の順番や方法を決定している。佐藤さんが住む保原町は、年間被ばく量が1〜5ミリシーベルトと比較的低い「Cエリア」に属するため、当初、伊達市は「除染は行わない」としていた。そのため佐藤さんらは、「子どもが毎日通る場所だから」と、自分たちで除染したのだ。
しかし、市民から除染してほしいという要望が多かったため、3マイクロシーベルト毎時以上のホットスポットが見つかった場合にのみ、市が除染するということに改められた。とはいえ、Cエリアの場合、市はホットスポット部分の数十センチ四方しか取り除かない。しばらくたつと、また放射線量が高くなるので、ふたたび市に除染を依頼すると、「放射性セシウムは土に吸着されているので、一度除染した場所がまた高くなることは経験上考えられない」といって、対応してもらえないという。
しかし高橋候補が、汚染の程度にかかわらず、どのエリアも全戸除染すると公約に掲げたため、仁志田市長も急きょ「Cエリアもフォローアップ除染をする」と政策を改めた。
「選挙対策でしょうね。フォローアップ除染なんて信用できません。どうせ数センチ四方の土を取って終わりでしょう。その点、高橋候補は全面的に除染すると言っているので、期待しているんです」と佐藤さんは語る。
<伊達市の除染区分>
■被ばくを助長する放射線リスクアドバイザー
そのほか母親たちが危惧していたのは、市の“放射線リスクアドバイザー”が発するメッセージだ。
「伊達市が発行する復興・再生ニュースには、多田順一郎さんという放射線リスクアドバイザーのコラムが載っています。『1キログラムあたり6万ベクレルの放射性セシウムを食べても、内部被ばくは1ミリシーベルトに満たないからだいじょうぶ』『山菜や、おばあちゃんが作った野菜を食べよう』などといって、わざわざ内部被ばくを助長させるようなことを言っています。年配の方はこれを読んで安心し、測定もしていない家庭菜園の野菜や山菜を子どもに食べさせているんです」(上野さん)
上野さんは、NPO団体に協力を依頼し、定期的に子どもの尿中セシウム量を計測しているが、家庭菜園の野菜を食べている子どもの尿からは微量の放射性セシウムが検出されているという。
同じく前出の佐藤さんも、以前、多田氏の講演会に参加したとき、こんな放言を聞いて耳を疑った。
「内部被ばくをおそれるのは、100万人のなかにたったひとりまじっているテロリストを怖がるようなもの。1発の銃弾を発射したとしても、当たる確率は非常に低い」
テロリストが何人もいたら、確率は上がりますよねと、佐藤さんは疑問を投げかける。
伊達市には、多田氏以外にもうひとり、半谷輝己氏という塾講師が健康相談員として配置されており、学校や公民館で放射線についての講演を行っている。
「半谷さんは、『放射線を怖がるのは、“口裂け女”のデマを怖がるのと同じ』『放射線セシウムより、ほうれん草の根っこを食べるほうが身体によくない』といったことをおっしゃるので、まったく信用できません。対立候補の高橋さんに『当選したあかつきには、多田さんを放射線リスクアドバイザーから外してほしい』とお願いしたら、約束してくれました。期待しています」(母親ら談)
■勝算はあるのか
公示日の19日に、伊達市内で立候補者らの「公開討論会」が開かれた。そのなかで、市内経済を活性化する方法について問われると、仁志田市長は「地元産のイノシシ肉をレストランで提供するなどして、地元産業の活性化を図るのもひとつの方法」と答え、放射能から子どもを守りたい母親たちからはひんしゅくを買った。一方、対立候補の高橋氏は、「徹底した除染を行い、安心・安全を確立すれば市も活性化していくのではないか」と答え、共感を呼んた。
一見、新人の高橋候補が優勢のように思えるが、地元からはこんな声も聞こえる。
「仁志田市長は、JAや地元の経営者層からは根強い支持があるんです。放射能被害で売れなくなっていた桃の販売を強化したり、出荷停止になっていたあんぽ柿の出荷を再開させたり、地元の農業や産業の復興には力を入れていますから。組織票は大きいと思いますよ」
農業の再生や、地場産業の活性化もだいじかもしれない。しかし、次期市長には、くれぐれも「命」と「経済」を天秤にかけることのないように望む。
最後に、現職の仁志田市長と高橋氏に以下の質問を送ってみた。残念ながら仁志田市長からの返答はもらえなかったが、高橋氏からは回答をいただいたので掲載する。伊達市の方は、投票する際の参考にされたい。
<高橋候補回答>
Q 子どもたちを学校単位で「保養」に出す計画などはあるか?
A 必要なことはわかっているので、研究、検討はしたい。検討する中身に、保護者や子どもたちの現在の保養についての意識を調べ、実現に可能なかぎり取り組みたい。
Q 「市政だより」で放射線リスクアドバイザーの助言が内部被ばくを助長するような内容になっているが、改めるつもりはあるか。
A こうした表記をすることは、とても信じられないことなので改める。一体どういう考えで、住民代表である市長がこうした市政だよりを出してしまうのか、全く理解できない。
Q その他、子どもたちを低線量被ばくから守るための具体的施策はあるか?
A
〇徹底した除染
〇徹底した除染
〇食べ物の放射能検査を行い、内部被ばくを避けること。
( ママレボ@和田 )
こちらの動画からも、各候補者の主張や考えがよく伝わってきます。
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