■子どもたちに、ほんとうに教えるべき放射線教育とは何か
なぜ、このタイミングでアンケートを実施しているかというと、年度が改まり、これから夏にかけて平成25年度の「放射線教育」の内容が検討されるからです。
この副読本の中には、「すいせんからも放射線は出ています」(だから心配ない)、「一度に100ミリシーベルト以下の放射線を人体が受けても、放射線だけを原因としてがんなどの病気になったという明確な証拠はありません」など、いかにも「放射能のリスクはたいしたことない」と言わんばかりの内容です。
あれほど甚大な原発事故が起きたにもかかわらず、福島第一原子力発電所の事故については、ほとんど触れられていません。
また文部科学省は、副読本だけでなく、希望する学校には放射線の専門家を派遣して、放射線に関する“出前授業”を行っています。
お寄せいただいたアンケートによると、出前授業の内容もお粗末なものです。
「みなさんがよく食べるポテトチップスにも、自然放射線が含まれています。でも、尿や便と一緒に出ていくからだいじょうぶです」とか、「宇宙飛行士だってたくさんの放射線を浴びていますが元気です」といったことを、子どもたちに教えているそうです。
この副読本を使った授業を受けた子どもたちは、「放射能って、体に入っても出ていくんだね!」などと、安心しきってしまうことも少なくないようです。
もちろん、副読本に書かれていることや、出前授業で教えられていることがすべて謝りだとは言いません。
放射線の基本的知識を教えることは重要ですし、必要以上に不安をあおることは良くないでしょう。
しかし、レベル7クラスの原発事故を起こした国で、放射能のリスクをきちんと教えないというのは、いかがなものでしょうか。
これから子どもたちは、一生涯、放射能と付き合っていかねばならないのです。その孫の代も、次の代も向き合っていかねばなりません。だからこそ、できる限り被ばくを軽減する術を身につける必要があるのです。
お寄せいただいたアンケートのなかにも、「どういう場所がホットスポットになりやすいのか」「日ごろの生活で気をつけるべきことは何か」「放射性物質を取り込みやすい食材はどんなものか」といったことも、子どもに教えてほしいという声がありましたが、まったくその通りです。
■保護者の声を、届ける必要があります
しかし、どうアプローチをすれば、私たちのこうした要望が学校の放射線教育に盛り込まれるのでしょうか――。
ご存じの方も多いと思いますが、「副読本」の制作や「出前授業」は、文部科学省から委託を受けた「原子力文化振興財団」が実施しています。
原子力文化振興財団の役員名簿には、山下俊一氏の師匠でもある長崎大学名誉教授・長瀧重信氏の名前もあり、ひと目見て“原子力推進派”だということが分かります。
推進派の組織が副読本を制作したり、出前授業を行ったりしているのですから、「被ばくのリスク軽減するためのノウハウを教える……」なんてできるはずがありませんよね。
この事業に、いったいどれくらいの税金が使われているかというと、平成23年度は51,7781,000円。平成24年度については、4,260,008,000円です。
これらの費用は、いわゆる電気代に上乗せされている電源開発促進税でまかなわれており、平成24年度の行政事業レビューでは、有識者の間から「推進派がこの事業を請け負うのはいかがなものか」「電源開発促進税から経費を拠出していいのか」、「そもそも、なぜこんなに経費がかかるのか……」といった意見が上がっていました。
○ 平成24年度行政事業レビューシート http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/06/19/1322351_2.pdf
しかし、そもそも論になってしまいますが、世のママさんたちの気持ちとしては、推進派がこの事業を進めようが、電源開発促進税から経費が投入されようが、そんなことはどちらでも良い話しなのです。
望むことはただひとつ、とにかく「少しでも被ばくを避けるため」の知恵を子どもたちに教えてほしい、ということのです。
望むことはただひとつ、とにかく「少しでも被ばくを避けるため」の知恵を子どもたちに教えてほしい、ということのです。
被ばくが少なければ少ないほど良いというのは、ICRP(国際放射線防護委員会)でさえも勧告しています。(http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/9908/hik5p.htm)
日本政府が、今後「原子力を推進する立場」を継続しようがしまいが、すでに大量の放射性物質がまき散らかされたことは事実であり、できるだけ被ばくを低減するにこしたことがないことは言うまでもありません。
現在、基本方針を策定中の「子ども原発・被災者支援法」の第十八条にも、「国は、放射線及び被災者生活支援等施策に関する国民の理解を深めるため、放射線が人の健康に与える影響、放射線からの効果的な防護方法等に関する学校教育及び社会教育における学習の機会の提供に関する施策その他の必要な施策を講ずるものとする」と記されています。
私たちは、この法律にのっとって、今後の放射線に関する教育内容を改正してもらうよう働きかける必要があると思っています。
(支援法全文はこちら)
そのためには、平成24年度に各地で行われた放射線に関する授業をしっかり把握しておかねばなりません。
好ましくない事例だけでなく、「うちの学校では、こんな良い授業が行われたよ」という良い事例も大募集中です。
また、こういう授業を行ってほしい、こういうことを子どもに教えてほしい、などのご意見もありましたら、ぜひお寄せください。
まず実態を把握し、保護者の方々の声を集めて、改正の要望を出していきたいと思っています。
ママレボ編集チーム@和田秀子
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