しかしながら、中身を見てみると、支援法の理念をまったく無視するものでした。
<復興庁が発表した基本方針(案)概要>
「支援対象地域」が、福島県内の中通り・浜通りなど33市町村と非常に限定的です。
これは現在、政府が進めている「年間追加被ばく線量20ミリシーベルト以下」の地域への帰還促進を基準に据えていることのあらわれであり、支援法に謳われている「放射線の人体に対する影響は解明されていないため、予防原則に基づいた支援が必要」という理念からは,ほど遠いものです。
支援の中身についても、「汚染状況調査」「除染」「医療の確保」「子どもの学習支援」「自然体験活動の支援」「高速道路無料化などの移動の支援」といった、既出の内容ばかりであり、この法案の肝とも言える「避難・移住の権利」はバッサリ切り捨てられています。
これから県外に移住したいという方に対する「新規住宅支援」は盛り込まれず、支援法の「移住する人も、残る人も、帰還する人も、すべてが等しく支援される」という理念に反しています。
復興庁の根本大臣は、今回の基本方針案には、今年3月に打ち出した「支援パッケージに入っていなかった『個人線量計による外部被ばくの把握』等を盛り込んでいる」と胸をはって述べていますが、被ばく線量を個人で管理させるということの真意は、この2年半政府が進めてきた除染作業が思うように進まず、目標としていた「年間被ばく線量1ミリシーベルト以下を目指す」という状況にはほど遠いため、個人で管理させることでお茶を濁そうということなのです。
また、いきなり登場した「準支援対象地域」の規定もあいまいで、根本大臣は、「準支援対象地域では地域ごとに必要な支援策を講じる」と述べていますが、これは補償の範囲を極力減らしたいという姿勢のあらわれでしょう。さらに地域での分断をうみかねません。
福島県近隣には、栃木県那須塩原市のような福島の中通りや浜通りと同等か、それ以上の汚染が広がっている地域があります。
また、千葉県の柏市や我孫子市といった東葛地域も、年間追加被ばく線量が1ミリシーベルトをゆうに超える地域で、子どもを持つ親たちは不安な日々を送っています。
こうした地域は、「準支援対象地域」にすら、指定されていません。
政府がみずから計測した航空機モニタリングによる空間線量率マップを見てもわかるように、あきらかに対象地域に指定されるべき地域(栃木県、群馬県、千葉県の一部地域)が対象から外されているのです。
そしてもうひとつ大きな問題は、これら不十分な基本方針案を、たった2週間のパブリックコメントを募集しただけで、閣議決定しようとしていることです。
この支援法の中には、「被災当事者の声を聞いて、具体的な施策を決めること」と謳われており、これまで被災当事者や支援団体は、再三「各地で公聴会を開いてほしい。恒常的に被災者の声をヒアリングできるような拠点をつくってほしい」と要望してきました。が、無視されつづけています。
このように、今回復興庁が出してきた「基本方針案」は、原発事故の被害者をまったく支援しようとしていない内容だ、ということを念頭に踏まえた上で、ひとりでも多くの方がパブリックコメントを寄せてくださることを願っています。
チェルノブイリ原発事故のあと、当時のソ連政府でも、年間5ミリシーベルト以上の地域は強制避難させました。
現在の日本は、それ以下の対応です。
ぜひ私たちの声を政府に届け、このおかしな基本方針を考え直してもらうよう、要望しましょう。
原発は日本中に54基あり、いつどこで事故が起こるかわかりません。
明日は、自分自身の身にふりかかってくることですので、ここでしっかり原発事故の被害者救済の雛形をつくっておく必要があるのではないでしょうか。
パブリックコメントの記入はこちらから
(たくさんのみなさんの声が復興庁に寄せられ、当初のパブコメ〆切が10日延長されて9月23日〆切になりました!)
緊急署名はこちら (締切:9/2午前11時)
***下記のブログに詳細情報がまとまって掲載されていますのでご覧ください***
「原発事故子ども・被災者支援法、基本方針発表とパブコメの呼びかけ」(子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク)
こちらも、現在の状況を考えるうえで大変参考になります。
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