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2013年8月23日金曜日

「ママレボ編集長通信No5」「健やかに育つ権利」を奪われた福島の子どもたち ~外遊びに関するアンケート結果から見えてきたこと~

~「ママレボ編集長通信」について~

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「ママレボ編集長通信N5」のブログ版は下記でもお読みいただけます



 子どもが健やかに育つために欠かせない「外遊び」。
しかし今、そんな子どもの当たり前の権利が脅かされています。
 
福島第一原子力発電所の事故により、たくさんの放射性物質が降り注いだ福島県では、震災から2年半たった現在でも、子どもの外遊びを控えている保護者が多いことが「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクトin郡山」のアンケート調査で浮き彫りになりました。

 政府による保養プログラムの確立と、避難、移住も含めた幅広い選択肢の提示が急がれます。


■外遊び時間が大幅に減少

 今回実施したアンケートは、福島県内在住または県外自主避難者のうち、1歳~小学校に入学するまでの「幼児」を持つ保護者、または満6歳~12歳までの「学齢児童」を持つ保護者が対象です。

 調査人数は、福島県内在住者104人(幼児67人/学齢児童37人)福島県外自主避難者39人(幼児19人/学齢児童20人)。



 福島県内在住者に比べて、県外自主避難者の調査数が少ないため、県外自主避難者の統計結果は、あくまでも参考値程度に見る必要がありそうです。 

 しかし一方で、福島県内在住の「幼児」および「学童児童」の「外遊び時間」が大きく減少していることは、統計的にはっきり見てとれます。

 福島県内在住で、幼児を持つ保護者の85%、学齢児童を持つ保護者では70%が、震災以降、外遊びの時間が「⑤減った」と回答。「④どちらかと言えば減った」という回答と合わせると、実に90%を超えています。






 また、「一緒に遊ぶ人数の変化」に関する調査結果を見ると、福島県内在住で幼児および学齢児童を持つ保護者のうち、「②1対1(2人)で遊ぶことが多くなった」「③1人で遊ぶことが多くなった」と回答した人が、いずれも60%を超えています。



 これは、外遊びの時間が減ったことで、複数の友だちと遊ぶ機会がなくなり、代わりに自宅で親や兄弟などと遊ぶ時間がふえたことを示しています。

 実際に、「外遊びの時間が減った」と回答した佐藤あきさん(郡山市在住・仮名)は、震災当時生後一カ月だった娘に、ほとんど外遊びをさせていません。
 
 「はじめて地面を歩かせたのは、娘が一歳2カ月になったころ。郡山を離れて、新潟へ保養に連れて行ったときのことです。娘は体いっぱいに風を受けて、とても気持ち良さそうに深呼吸しました。あのときのうれしそうな表情が忘れられません」 

 佐藤さんは、今でも子どもに外遊びを控えさせているため、「他の子どもに比べて体力がないのでは」「歩き方がぎこちない」等の気になる点があると言います。

 「とくに女の子は、放射線の影響を受けやすいそうなので心配です。できれば避難したい。
 広島・長崎で原爆の被害に合われた方も、その後結婚差別などに苦しんだと聞きます。
すでに、『福島の人同士でないと結婚できない』と言っている人もいます。娘には、好きな人と結婚させてあげたい。だから移住して、娘から“福島”というレッテルをはがしてやりたいんです」
(佐藤さん)


■自主避難しても、地域から「孤立」するケースも

 一方、県外へ自主避難している保護者の場合はどうでしょうか。

幼児の外遊び時間については、「①増えた」「②どちらかと言えば増えた」という回答が過半数近く占める一方で、学齢児童の場合は、「④どちらかと言えば減った」「⑤減った」などの回答が40%にのぼるなど二極化する傾向にあります。

 県外に自主避難しているにもかかわらず、「外遊び時間が減った」要因は何なのか。

アンケートの自由記載欄に寄せられた「保護者の声」(ページ末参照)から読み取れるのは、「新しい環境で友だちができず、家の中で過ごす時間がふえる」という状況があるということです。

 震災直後に福島市から東京都に家族で移住した岡田めぐみさんは、「都心に避難している母子は、誰ともつながれず孤立しているケースが多い」と指摘しています。

 とくに、就学前の幼児がいる場合は、「仕事をしていないと保育園に預けられない」ため、同年齢の子どもたちと遊ばせることもできず、結局は母子で引きこもってしまう傾向にあります。県外に自主避難した子どもたちが、思い切り「外遊び」できるか否かは、受け入れ側の自治体の働きかけや、地域住民とのつながりの有無によるところが大きいと言えそうです。
 

■移住の継続的な支援も

 外遊びに不安を抱える保護者や子どものために、福島県内には昨年一年間で57カ所の屋内遊戯施設が建設されました。

 中日新聞の報道によると、福島県はこれら屋内施設の建設費用として平成24年度に総額4億4千万円、平成25年度に3億円を補助しています。

 また、復興庁も、平成25年度の予算から『子ども元気復活交付金(福島定住緊急支援交付金(仮称))』と銘打って100億円を投じています。

 “福島定住緊急支援交付金”という仮称からもわかるように、福島県も政府も、福島県からの人口流出を防ぐために必死で、できるだけ県外避難者を帰還させたいのです。

 前出の佐藤さんは言います。

。「福島に住んでいるかぎり、日々の生活の中で花や虫を触ったり、土遊びさせたりはできません。
なので屋内施設は必要ですが、休日は満員で入れませんし、いったいどれくらい外遊びの経験を補えるのかは疑問です。屋内施設の建設だけじゃなく、原発子ども・被災者支援法に基づいた保養や移住の支援もしてほしいですね」 

 一部の専門家からは、子どもに外遊びを控えさせている親に対して、「気にしすぎだ」とか、「かえって子どもの発育によくない」 といった批判の声も聞こえてきます。

 しかし本来、一般人の年間追加被ばく量は1ミリシーベルト以内ですし、放射線に「しきい値」はなく、浴びれば浴びるほどリスクが高まるということは国際的にも周知されている事実です。

 この原理原則を踏まえたうえで、「健やかに育つ権利」を奪われている福島の子どもたちの現状に目を向けてほしい。そのうえで、政府による保養や移住政策などの実現を強く望みます。

                                   ママレボ編集長 和田 秀子



※ 詳細なアンケート結果は、「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」のブログにて公開しています。





















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