今日、2014年12月28日に、南相馬市の特定避難勧奨地点が強制解除されます。いまだに10マイクロシーベルト毎時を超えるホットスポットが点在する南相馬市は、帰還困難・居住制限・避難指示解除準備区域・特定避難勧奨地点が混在する地域です。自主的な避難も含め、今なお2万人以上が避難しています。
2014年10月に指定解除の方針を発表した政府に対し、説明会で発言した住民のすべてが反対意見だったため、10月内の解除はいったん延期されていました。
その2か月後の12月21日、南相馬市で行われた住民説明会で、一方的に解除することが告げられました。
◆撤回要請集会―「補償の問題ではない。行政区長には、住民を守る責任がある」
住民説明会から5日後の2014年12月26日、参議院会館にて、南相馬市特定避難勧奨地点、指定解除の撤回要請集会が緊急に開かれました。民主的ではないやり方での指定解除に反対し、避難勧奨の継続と新たな地域指定を求める集会です。署名も2094筆分が提出されました。それまでにも、1210筆の地域住民の署名、1595筆のネット署名を提出しています。
南相馬市原町区の元行政区長でもある、遠藤八郎さんは
「われわれは、孫に『古き良き日本』を教えたかったのに、いまは『原発は恐ろしい、放射能は危険だ』ということを教えなくてはならなくなった」
と話しました。
同じく元行政区長の佐藤光孝さんは
「『安心だから避難指示を解除する』という一方で、『(放射能が危険だから)枯草は燃やしてはならない』という。そこも矛盾しているのではないか。山の仕事も、孫のために残そうとも思わなくなった。30年後を夢見ているが、なんだかはかない」
と胸の内を吐露。
また、大谷地区の行政区長の藤原保正さんは
「応急仮設住宅の供与の延長をまだまだしてくれなければ、帰還せざるを得なくなる。
補償だけの問題じゃないんですよ。補償がほしくて言っているんじゃないんです。住民の命を守る行政区長に、我々に責任があるんです」
と訴えました。
新潟の避難先から会場に駆けつけた杉由美子さんは、以前は、南相馬市原町区で酪農を営んでいました。
「農業を勉強している長男が、いつかどこかで私たち親を呼んで一緒に酪農できたらいいね、と話してくれている。解除と言われると、どう生活していっていいのか不安でいっぱい。まだ教育にお金がかかる子どももいるので、どうしていいのかわからない」
と涙ながらに訴えました。
◆10月の指定解除通告から、2か月で何が変わったのか
14時からは、内閣府から原子力災害対策本部被災者支援チーム参事官補佐の清水英路氏と課長補佐の阪本裕子氏が参加し、署名を受け取りました。受け取ったあと、あらためて12月28日に解除する方針であることを説明。
「ICRP(国際放射線防護委員会)も住民の意見を聞くように、と言っているのではないか」という住民の指摘に対し、「説明させていただいております」と返答。最初の解除の発表があった10月からの2か月間に、ボランティアによる「清掃活動」を行い、指定世帯80戸に「個別訪問」をして、説明してきたのだと、釈明しました。
要請文と署名が手渡された |
それに対し、南相馬市原町区の林マキコさんは
「清掃なんかで線量は下がらない。掃除だったら私のほうが上手ですよ」
と指摘。
また、80世帯への個別訪問に対しても、藤原保正さんは
「指定世帯が152戸あるうちの80戸だけまわって賛同を得たという判断はおかしい。賛同が何世帯何人いたのか、はっきり答えてほしい」
と詰め寄りました。
それに対し、阪本裕子氏は
「全世帯の個別訪問に同行したわけではないからわからないが、全員が反対であったわけではない。住民説明会では10世帯くらいは賛成していた」
「息子がお金をもらうことに慣れてしまってダメになるという話も聞いたことがある」
と答えました。
◆「反対されている方も多くいると思っています」
「今の時点で、住民の理解を得られていると思いますか?」という再三の質問に対し、の清水英路氏が
「反対されている方も多くいると思っている」
と答えた場面がありました。
「それならば、民主主義ではない」
と南相馬・避難勧奨地域の会の世話人、小澤洋一さんが強く詰め寄りました。
「ここはガス抜きの場ではない。撤回してほしいんです」という声もあがりましたが、清水氏からは、「不安を解消します」「ご理解いただきたい」という言葉が繰り返されるばかりでした。
前出の行政区長の藤原さんも
「何のフォローもなくこのまま推し進めるのであれば、法的に訴えざるをえない」
とも話します。
◆ほんとうに被ばくの健康影響がないなら、念書にサインしてほしい
集会の終盤、たまりかねたように小澤洋一さんは、
「南相馬市における指定解除の責任について、念書にサインしてほしい」
と訴えました。
念書とは、住民に健康被害があった場合に責任をとる、というもの。たしかに、年間20ミリシーベルト以下の被ばくでは、健康被害は考えにくい、だから解除する、という政府見解を、清水英路氏は何度も口にしていました。
念書とは、住民に健康被害があった場合に責任をとる、というもの。たしかに、年間20ミリシーベルト以下の被ばくでは、健康被害は考えにくい、だから解除する、という政府見解を、清水英路氏は何度も口にしていました。
「きょうは責任者として来ているのだから、南相馬市の住民に対して特定の官僚が責任をとることを、ここに署名してください」
「もし、それができないのであれば、ここで待っているからサインできる人を呼んできてください」
と切実に訴えます。
小澤さんが用意した念書が手渡された |
それに対し、清水氏は、
「署名はできない」
「内閣府という組織として来ている」
「責任者のアポはとっていないから今すぐに対応することはむずかしい」
などと回答。
国際環境NGO、FoE Japanの満田夏花氏も
「おふたりは政府を背負ってきていて、年間被ばく量20ミリシーベルト以下はだいじょうぶだと。その責任をとれないということであれば、解除の撤回をしてください」
と訴えましたが、聞き入れられませんでした。
◆「あなたは、誰のために仕事してるんですか」
南相馬・避難勧奨地域の会では、10月10日から再三にわたって公開質問状を提出しています。それに対して、たった一枚の文書も届いていないそうです。そのことに対し、小澤さんは
「せめて、質問に対して、文書での回答があってから、解除の話があると思っていた。いちばん汚いやり方だと思う。」
と述べました。
「せめていつ回答をもらえるのか、もう、(きょう、答えてもらうのは)それだけでいいです」
と、小澤さん。それについても、
「文書の回答と念書についてはお約束はできません。ただ、ご説明はしていきたいと思います」
と、最後まで、その一点張りでした。
たまりかねて、要請に立ち会っていた桑原豊さん(元放射線管理者・浪江町)が
「あなたは、誰のために仕事しているんですか」
と、静かに問いかけました。
年の瀬にも関わらず、たくさんの方が詰めかけた |
満田氏も
「住民の理解を得るといって、政策を押し切っているんです。受け止めて、あなた方の上の方を説得して、何とかしてください」
と、訴えました。
「われわれ南相馬市の8行政区のためだけにやっているわけではない。国は、これから3.8マイクロシーベルト毎時を下回ったら切る、ということをやってくるだろう。だから、福島県民のこれからのためにも、なんとかしたいという思いがある」
と、藤原保正さんは話してくれました。
【お知らせ】
12月29日、南相馬市特定避難勧奨地点に、測定に伺います。こどもみらい測定所のアカウントから、ツイキャスで配信する予定です。
年の瀬でお忙しいかと思いますが、ぜひ、ご覧になってください。
(文責/吉田千亜)
絶対に念書を取るべきだ。
返信削除>念書とは、住民に健康被害があった場合に責任をとる、というもの。たしかに、年間20ミリシーベルト以下の被ばくでは、健康被害は考えにくい、だから解除する、という政府見解を、内閣府の清水英路氏は何度も口にしていました。
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返信削除絶対に念書を取るべきだ。
内閣府の清水参事官補佐と坂本課長補佐から
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