「ママレボ通信」では、「ママレボ」の雑誌には掲載されなかった、日々の取材でのこぼれ話やレポートをアップしていく予定です。

ママレボの雑誌は、こちらからご購入できます!
http://momsrevo.jimdo.com/



2015年4月8日水曜日

クラウドファウンディングもスタート!「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」をみんなの手で成功させよう


 東日本17都府県の土壌汚染を調査する「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」が、市民の手で立ち上がりました。
 
今回は、このプロジェクトの概要と、3月29日に行われた「東日本土ベクレル測定プロジェクト  ~知ろう!測ろう!つながろう!~ 測定室&市民交流会」の様子を、ご紹介します。(和田秀子)


■東日本17都府県で1700か所

「市民の手で東日本の土壌汚染を明らかにしよう」
 そんな熱い思いを持った人々の交流会が3月29日、東京都内で開催された。

東日本土ベクレル測定プロジェクト  ~知ろう!測ろう!つながろう!~ 測定室&市民交流会』と題されたその集いには、北海道から九州まで、16か所の市民測定所が参加。また一般の人たちもかけつけ、総勢約70名に。会場は熱気があふれた。

 この交流会を主催したのは、各地の市民放射能測定室のデータを連携している『みんなのデータサイト』運営委員会。
『みんなのデータサイト』とは、原発事故後に全国各地にできた市民放射能測定所で、積み上げてきたデータを一元管理し、誰にでも分かりやすく手軽に検索ができるように作成・公開されたデータベースサイトのことだ。蓄積されたデータは、すでに1万件を超えている。

 さらに、『みんなのデータサイト』では、2014年秋から、東日本の土壌の放射能汚染を測定するプロジェクトもスタートさせている。
 交流会の開始に先立ち、共同代表の石丸偉丈さんは、次のようにプロジェクトを始めた経緯を説明した。

事務局長の石丸偉丈さん

「原発事故から4年が経過し、放射性セシウム134が2年ごとに半減していくなかで、今が測定できるギリギリの時期。
 今回の事故の大きさをしっかり捉えるためにも、全国の市民測定所と市民のみなさんがつながって、東日本17都府県*の土壌ベクレル調査を進めていきたい。目標は、来期までに17都府県で1700箇所の土壌を調べることです」

(*青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、静岡、新潟)


■市民がつくりあげていく汚染地図

 すでに、同プロジェクトにも参加している、岩手の市民測定所と市民グループらが、先行して岩手県内316か所の土壌を測定している。
測定値ごとに色分けされた土壌汚染マップも完成させていた。


「土壌調査プロジェクト・いわて」の汚染マップ

 岩手をお手本にして、他県でも市民の手で土壌測定を進めていく予定だ。
 岩手の土壌測定プロジェクトで中心を担ってきた『放射線被曝から子どもを守る会・いわて』の菅原和博さんかねがさき放射能市民測定室・代表は言う。 
放射線被曝から子どもを守る会・いわて
の菅原和博さん

「岩手県では、県内の全市町村で1か所ずつは測定しようという目標を立てていました。
 とくに汚染のひどい県南地域のお母さんたちからは、『子どもの通学路や学校、公園などを測定したい』という要望が多く上がっていたので、そういった場所を中心に調べました」

 菅原さんは、土壌を採取する前には行政機関に出向き、関係部署に測定の許可を得るようにした。公園などの公共施設以外は、必ずしも許可がいるわけではないが、「行政に関心を持ってほしい」というこだわりがあったからだ。

「測定してわかったことは、事故から4年たっても油断できない状況であるということ。今後、このプロジェクトを岩手から他県に広げていきたい」(菅原さん)

 また、同プロジェクトに参加している『森の測定室・滑川』代表の主山しのぶさんは、
この土壌プロジェクトは壮大すぎて最初はとても参加できないと思っていました」と告白。
 しかし実際に、土壌サンプリング講習会を開催してみたら、近隣のグループが自発的に動いてくれたり、複雑だと思っていたサンプリング方法もやってみたらできる、という実感が持てたという。
「地域の土壌を測定することで、新たな人とのつながりが持てます。それぞれ住んでいる地域を測定していくことで、ジグソーパズルのように17都県の地図がつながっていくといいですね」
と、主山さんは意気込みを語った。

 さらに、韓国の環境団体で働いているという一般参加者の男性は、「韓国の人々は、政府の情報をほとんど信じていない。日本でも、このような市民のプロジェクトが立ち上がったということは、真実を明らかにしていくという点で非常にだいじだ」
と、エールを送った。

■参加方法は「採取」か「寄付」

 次に事務局から、このプロジェクトへの参加方法について説明があった。
 これによると、私たちがプロジェクトに参加する方法は次のふたつだ。

 ひとつは、「土壌採取で参加する」方法。もうひとつは、土壌測定プロジェクトへ「寄付する」方法だ。

 「土壌採取で参加したい」という方は、何人か仲間を集めて事務局に連絡すれば、事務局が、土壌採取の方法に関する講習会を開いてくれる。

 また、「一緒に土壌採取する仲間がいない」という方でも、事務局に相談すれば、地域で測定しているグループを紹介してもらえることもある。

 もちろん、ひとりで始めてもいい。
 仙台で「小さき花」という市民測定室を運営している代表の石森秀彦さんは、「測りたいと思ったら、まずひとりでもやってみてほしい。その様子を見て、協力してくれるようになる」と話す。

 土壌採取の方法については、下記で示すようないくつかの決まりがある。
 (※採取マニュアルはこちら)





クリックすると画像が拡大します

「面倒だな……」と感じる方がいるかもしれないが、「統一した手法で採取・測定することで、チェルノブイリや行政など、他のデータとも比較しやすくなる」(事務局)とのことなので、土壌採取する場合は、よく確認してから実行するようにしよう。

 次に、土壌採取はできないが、「寄付でなら参加できる」という方も大歓迎。 
 というのも、「ひとりでも多くの方に参加してほしい」という思いから、当プロジェクトの土壌測定料金は無料になっているからだ。
 つまり、全国の善意ある測定室のボランティアスタッフによって、つなわたりのように成りたっているのが現状。  とはいえ、これほどの大規模プロジェクトを成功させるには相当な費用がかかるので、カンパで支えていくこともだいじだ。




 また、すでにスタートしている「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」のクラウドファンディングから寄付する方法もある。→クラウドファウンディングはこちら https://moon-shot.org/projects/68

■分科会で熱い議論

 事務局から参加方法について説明があった後、休憩を挟んで分科会が行われた。

 分科会のテーマは、「プロジェクト全体を進めるために戦略トークをしよう」「初心者ですが質問していいですか?」「採取をしてみて思うことぶっちゃけトーク」など。

 記者は、これまで何度か福島県の土壌を測定した経験があるので「採取をしてみて思うことぶっちゃけトーク」に参加してみた。
 このなかでは、今回の土壌プロジェクトでは採取の対象になっていないホットスポットをどう扱うか、などの話題も出た。
 たとえば、河川敷などは総じて放射性物質が集まりやすく、他の場所より数値が高めに出る傾向があるため、今回の採取場所からは除外されている。
 しかし、河川敷で子どもたちが遊ぶこともあるので、土壌を採取して測定するべきではないか、といった意見も出た。
 記者自身も、福島県郡山市の、ある河川敷で土壌を測定したとき、放射性セシウム134137の合算で、1㎏あたり3万ベクレルを超える値が検出され驚いた経験がある。
 事務局長の石丸さんは、データをどう扱うかは別にして、河川敷などのデータは集めていく必要があるかもしれない」と述べ、今後、採取の方法についても見直しながらプロジェクトを進めていくと話していた。

 また、「初心者ですが質問していいですか?」の分科会に参加した、東京都在住の母親は、「今までこうした場に参加したことはなかったけど、リスクは感じていた。自宅周辺がどれくらい汚染されているのか、本当のことを知りたい」と話していた。

 このように、分科会でも活発な意見が交換され、あっという間に閉会の時間に。
 事務局長の石丸さんは、最後にこう述べた。

「1㎏あたり100ベクレル以上あれば、ドラム缶に入れて保管しなければならないレベル。しかし東日本では、あちこちで100ベクレルを超える土が見つかっているし、福島では1㎏あたり1万ベクレルを超える値が当たり前に検出されています。そんな数値を見ると、暗い気持ちになってしまいますが、未来の子どもたちのためにも、汚染状況を明らかにしていかねばと思っています」

 現実は残酷だ。しかし、事実を知らなければ、被ばくを回避することもできないし、将来、同じ過ちをくり返すことにもなりかねない。
 このプロジェクトを成功させることは、私たち大人の責任ではないか。





2015年4月5日日曜日

郡山測定レポート(6)

◆通学路にあるホットスポット

郡山市に住むHさん(6歳のお子さんのお母さん)から、「来年入学する通学路を測定してほしい」と連絡があり、2014年11月30日、お子さんの通学路を、ホットスポットファインダーで歩いて測定しました。自宅から学校まで、約30分、高低差のある道のりです。

アスファルトの上では0.2μSv/h~0.3μSv/hなのですが、土の部分では、2倍~数倍の数値になります。これは、除染されていない場所ではよくある結果です。

「土の部分はできるだけ歩かないように子どもに伝えます」


と、注意点をひとつひとつ確認しながら歩きました。

たとえば、この植え込み。

同じ植え込みが数メートル間隔で並んでいるのにも関わらず、ある一か所の植え込みだけが、1.5μSv/h(センサーの高さ地表10cm)を超えていました。
当然、見ただけではわかるはずもなく、子どもの手の届く場所には、あってはならない数値です。


子どもの通学路。手前の植え込みだけ、1.5μSv/hを超える





通学路にあるホットスポット


◆8μSv/hのホットスポット


この日、もっとも高い数値だったのは、あさか野バイパス沿いにある植え込みでした。

地表5cmで、8μSv/h近い数値を出しました。1mの高さでも、2μSv/hを超えます。


郡山市内を測定していても、これほど高いところは稀です
あさか野バイパス沿道の、坂のくだったところ


1mの高さでも、2μSv/hを超えた


場所は、坂道を下った場所。水の流れに沿って、放射性物質がたまってしまったのかもしれません。

「雪かきをした雪も、そのあたりにあったように思うから、それで高いのかもしれない」
と、Hさんは話します。


オレンジ色のポール部分がホットスポット。当然ですが、みただけではわかりません。




◆郡山市の道路除染課に通報する


8μSv/hという数値はあまりにも高いので、郡山市の道路除染課に電話で相談をしました。
窓口の方は、
「その場所が市の管轄か、国の管轄かわからないので調べて連絡します」
とのことでした。

しかし、数日後に、メールがあり、
「国道担当と話をしましたが、現在のところ除染および、『危険です』というような看板の設置はできません」
という対応だったのです。


◆「除染できない」「看板の設置はできない」


「除染できない」「看板の設置はできない」という対応はこのときだけではありませんでした。


その10日前の2014年11月20日にも、郡山市内の逢瀬川沿いの歩道でホットスポットを見つけていました。

地表5cmの高さで3μSv/hを超えるところです。


地表5cmで、3μSv/h



逢瀬川沿いは遊歩道になっていて、マラソンをする人、自転車で通行する人、犬の散歩をする人もいます。公園も近くにあります。測定中にも、散歩をする人が何人か通り過ぎていきました。


地表5cmで3μSv/hというのは局所的なものでしたが、芝生の上では地表20cmで0.7~1μSv/hと、高い数字が一帯に広がっていました。



河川敷の遊歩道 この一帯は地表20cmで、0.7~1μSv/hありました。

逢瀬川は一級河川のため、管轄は福島県。すぐに電話で「ホットスポットを除染をするか、あるいは『ここは放射線量が高い』ということを示す看板をたててほしい」と、お願いしました。


しかし、県の担当者からは、


「現在、河川の除染の実証実験を行っているところなので、除染はできません」

「危険です、という看板をたてる、という対応をしたことがないので、できません」
「もし除染をしたいのならば、ご自分でやってくださってもいいですよ」

と、言われたのです。


近くには、仮設住宅もあるところ。木製のベンチには、避難されているお年寄りが座っている風景を、よく見かける、と、一緒に測定した郡山市のNさんは言います。

そのベンチの測定値も、0.5μSv/hを超えていました。


センサーをベンチの上に置くと、0.5μSv/h


◆Hさんの通報を受けて――


8μSv/h近い放射線量のあったあさか野バイパスの沿道。

一緒に測定をしたHさんは、あきらめずに、国土交通省にも電話をしていました。

その結果、2015年2月、このような状態になっています。



通報を受けて、対応されたホットスポット

「本当は、ちゃんと『放射線量の高い場所です』と周知してもらいたかったんですけれど。でも、何もしないよりは良かったです」


と、Hさんは話します。


お子さんが入学する前の春休み、Hさんは測定したマップを持ち、一緒に確認をしながら、通学路を歩いたそうです。

子どもたちが毎日歩く通学路のホットスポットは、できるだけなくしてほしいものです。

すぐに除染ができないのであれば、「近づいてはいけない」ということを、きちんと周知するなど、行政の誠意ある対応が待たれます。



(文責・吉田千亜)

2015年4月4日土曜日

郡山測定レポート(7)


2015年41日、郡山市薫小学校の通学路を測定しました。
同行したAさん(6歳と4歳のお子さんがいるお母さん)は、一時期、福島県外に自主避難をしていました。6歳のお子さんが4月から小学校に入学するため、放射線量の高いところを確認しておきたい、ということでした。

薫小学校の周辺は、原発事故当時も、放射線量が高いと言われていた地域。学校や公民館、公園などの除染は終わっていましたが、その後、どうなっているのか――ホットスポットファインダーで、細かく測定しました。

校門には除染前の数値として「4.5μSv/h」と書かれています。

郡山市薫小学校の校門


おそらく、測定したのは2011年だとは思いますが、例えば、20117月、南相馬市の特定避難勧奨地点に指定された基準値は、3.0μSv/h以上/子ども・妊婦の基準では、2.0μSv/h以上で勧奨地点に指定されているのです。
今さらながら、こういった大きな矛盾を突き付けられます。

Aさんは測定中、ずっとビデオカメラを回していました。測定に立ち会えないお子さんに、どこが高いのかを細かく教えたい、との思いです。私たちは、Aさんの住まいから学校に向けて歩き出しました。
今回、測定するにあたり、センサーの高さは地表50cmあたりをキープすることにしました。お子さんの腰のあたりです。

家の前の歩道から、0.50.7μSv/hを記録します


自宅の目の前で、0.5~0.7μSv/h(地表50cm)


今まで、郡山市は通学路も含めて何度も測定に伺っているのですが、2015年になって地表50cmで歩道が0.50.7μSv/hもある場所というのはあまりありません。
アスファルト上であれば、0.20.4μSv/hまでは下がってきているのです(ただし、土の上は0.51μSv/hほどあるところも多く、局所的に1.5μSv/hを超えるところもあります)。

この日、測定したアスファルト上で一番高かったのが、この家の前の歩道(0.50.7μSv/h)だったのです。
その原因は、透水性舗装。写真のような形状のアスファルトでした。

透水性舗装


透水性舗装の上は、除染をしても線量が落ちません。
以前にもお伝えしたことがあるのですが、(郡山レポート・4)郡山市明健中学校の前にある遊歩道も、0.50.7μSv/hあり、その測定結果を持って、郡山市在住のNさんが郡山市長に訴えたことがありました。
訴えた結果、近くの沼(宝沢沼)の遊歩道と一緒に、緊急除染がなされました。
しかし、その後、半年後にその遊歩道の測定をしたところ、放射線量は下がっていなかったのです。

同行したAさんは、

「この歩道のところだけでも、おんぶしたい」

とつぶやいたあと、

「アスファルトをはがして、舗装しなおしてもらいたい。そのことを、市にお願いしたい」

と話していました。
また、その歩道に関しては、側溝の上を歩くほうが、被ばく量が少ないこともわかりました。透水性舗装の上を歩くより、側溝の上を歩くほうが0.3μSv/hほど低かったのです。

「ふつうは、側溝の上のほうが高い、と思いますよね・・・測ってみないと本当に分からないですね」

と、Aさん。

この道は、側溝の上のほうが放射線量が低い


学校周辺を測定したあと、近くの公園を二つ測定しました。
一つ目は学校のすぐ近くの公園。いちおう、除染が済んでいる公園です。歩き回りながら、高そうなポイントも測定しました。すべり台の下、ブランコの下、植え込みの中――測定結果は、0.10.2μSv/hでした。

「この公園だったら『遊んでもいいよ』と言えるかな」

Aさん。

薫小学校周辺測定結果/写真左下が公園


「震災後に、郡山市の公園で遊ばせたことはありません。室内遊び場につれて行くか、週末に県外に連れ出して遊ばせていたから・・・でも、小学生になったら、行動範囲も広がってそういうわけにもいかないだろうと思っていたから、『この公園ならいいよ』と言える場所ができてよかった・・・」

次に、自宅から一番近い公園を測定しました。Aさんは、自宅からたった数10メートルの公園に、震災後は一度も連れて来なかった、と言います。
実はこの日、測定には下の4歳のお子さんが一緒でした。元気いっぱい、動きたい盛りの男の子。

「この公園、生後3週間くらいの時に来たっきりだね。覚えてる?(笑)」

とお子さんに話しかけるAさんの声が届くか届かないかで、遊具に向かって思いっきりかけ出しました。

この公園は、除染されていたのですが、広場の真ん中だけが土の入れ替えがされただけで、公園の周囲の植え込みは1μSv/hを超えるところが数か所ありました。木の根本の苔の上では1.5μSv/hを超え、落ち葉の集まるところは0.8μSv/hありました。

木の根本の苔の上



地表10cmほどで測定。落ち葉がたまっているところ。


また、土の入れ替えがされていないところは、0.40.8μSv/hのところも。

「この公園は、まだ、行っていいよ、と言えないな・・・」

Aさんはそう話しました。

砂場遊びの道具を、

「数回しか使っていない。未練があって捨てられない」

と話すお母さん。逆に、

「使えなかったことが悔しいから、すぐに処分した」

というお母さん。こういった思いが、一部の地域の母親に押し付けられていることは、事実です。

公園の再除染、透水性舗装の張り替え等、子どもの生活環境について、行政には丁寧な対応をしてもらいたいと願っています。

~~~~~

今日の測定結果の一部を公開します。
1枚目は、薫小学校周辺の放射線量です。公園は、0.10.3
2枚目は、薫小学校から少し離れた公園。やはり、植え込みなどの周辺が高いことがわかります。





(文責・吉田千亜)



2015年4月1日水曜日

これからの避難への支援策について――福島県中通り・浜通りの方へ


この記事を書くか書くまいか、迷っていました。けれど、これによって少しでも「避難」あるいは「避難継続」の選択肢が広がる可能性もゼロではないと思うため、UPします。
さらに、決定事項であるにもかかわらず、なぜか復興庁も国交省も「施策に対応している自治体情報は集約していない」、「集約していたとしても公表しない」という回答だったので、あえてこちらに書くことにしました。
 
なぜ、迷ったのか、ということも付記しておきます。
本来であれば、終わりの見えない原子力災害であることにかんがみて、借上住宅(みなし応急仮設)の供与期間は長く続くべきです。また、これからの避難の選択肢として、201212月で打ち切られてしまった借上住宅の新規受け付けも再開してほしい、という声もあり、それを求める運動も行われています。
本日(2015.3.30)福島県に問い合わせをしたところ、担当窓口の方から「この施策も、いつまでということは不明です(文書では「当分の間」とされている)。いずれなくなる可能性もあるのでは」と言われました。
施策がなくなってしまってから、「この情報がもっと早く必要だった」と思う人が出てしまうことは避けるべきです。

本題に入ります。

すでにご存じの方も多いかと思いますが、「原発事故子ども・被災者支援法」の枠組みに、「公営住宅の入居要件の緩和」というものがあります。

簡単にいうと、対象地域(福島県中通り・浜通り)の母子・父子避難世帯に対し、公営住宅に応募できるよう、収入を実際の所得の二分の一であるとみなすという施策です。

想定されるケース(該当する方)は、ふたつあります。

●ひとつ目は、すでに避難中の方
たとえば、現在、福島県外に避難されている方が、もうしばらく避難を続けたいという場合。「いつ借上住宅が打ち切られるのかわからない」という不安を抱える状況が続くため、多少の家賃が発生しても、今避難している地域で民間の賃貸住宅よりは安く借りられる「公営住宅」に入居したい、というケースです。

●ふたつ目は、これから避難しようと考えている方
たとえば、現在、福島県内中通り・浜通りに居住されている方で、「家賃の安い公営住宅なら、これから母子(あるいは父子)で避難をしたい」という場合(本来は、民間の賃貸住宅などで条件の合うところに無償で避難できる=借上住宅に避難できることが一番ですが、その施策は打ち切られているのが現状です)。

ふたつ目に該当する方に対しては、唯一の「避難の補助」となる施策ともいえるのです。

くり返しますが、被災者に必要な情報は、きちんと周知されるべきです。「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針にのっとって、すでに決定されている施策であり、「避難(の継続/の決定)を支える唯一のメニュー」なのです(そのメニューが本当に被災者の声を聞いたものであるか否かは別として)。
また、それを受け入れる自治体側の対応も、施策の決定に基づいてそれぞれの議会で承認されている事実です。公表していけない理由は、何もないはずです(にもかかわらず、なぜか「受け入れ自治体を集約しない」「公表もしない」と言われましたが)。

さて、この施策に基づいて公営住宅に応募するために必要な条件としては、

1)   福島県中通り・浜通り(避難指示区域=帰還困難区域・居住制限区域および避難指示解除準備区域を除く)に、平成23311日時点で居住していた世帯。
2)   「居住実績証明書」をもっている(対象地域内の避難元市町村にて交付)。

 のふたつです。2)に関しては、すでに昨年(平成26年)101日より、発行が始まっています。

 では、この施策に基づいて、「受け入れします」と表明している自治体はいくつあるのか?わかる範囲で、以下に記しておきます。

 平成273月現在、
【都道府県=県営(道営)住宅】
北海道、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県、福井県、岐阜県、佐賀県、兵庫県、山口県、岡山県、徳島県、香川県、高知県、佐賀県、熊本県、大分県、鹿児島県(23道県)

【政令指定都市=市営住宅】
宮城県仙台市、埼玉県さいたま市、千葉県千葉市、新潟県新潟市、兵庫県神戸市、熊本県熊本市(6市)

※これ以外にも、全国市町村でこの運用が始まっています。「ここに避難できるかどうか?」ということは、実際に市町村窓口に問い合わせをしてみることがもっとも大切です。問い合わせをする場合には「公営住宅の担当課につないでください」というのがいちばんよいと思います。

【福島県内=市町村営住宅】
会津若松市、田村市、南相馬市、矢祭村、広野町、伊達市、鏡石町、小野町(8市町)

秋田県北秋田市では、「被災・罹災(りさい)証明書」を持参すれば、無抽選で優先入居できるという対応を決定しています(ただし、これまで実際に適用された方はいないとのことでした)。

では、この施策、どれくらい利用されているのでしょうか。じつをいうと、きわめて少ない状況となっているようです。というのも、そもそも、居住実績証明書の発行数じたいがとても少ないのです。
その発行件数は、35にとどまっていて、福島県内に住んでいる方で発行を希望したケースは7件。福島県外に避難されている方で発行を希望したケースは28件のみなのです。
原因としては、

  残念ながら、被災者のニーズに沿ったものとは言いがたい施策であるということ。
  ここまでに書いてきたとおり、この情報に関して周知が足りないこと。

などが考えられるでしょう。

はたして、この記事を書いたところで、どのくらいの人に役立つ情報なのかはわかりません。ただ、原発事故の発生当時には子どもがいなかったけれど、最近になって子どもが生まれ「子どもが小さいうちは避難をしたほうがいいのではないか」と考えている方がいる、ということは耳にします。
また、原発事故当時はタイミングが合わなかったけれど、「最近になって避難をしようか、と考えている」という方のお話も聞いています。

この制度は、避難も、居住も、帰還も、どの選択も尊重するという理念をもった「原発事故子ども・被災者支援法」に基づく施策です。まずは多くの方に「知らせる」ということが、何より大切なのではないかと思います。
公表されないということで、こちらに急ぎUPしましたが、今後、復興庁や国交省のホームページ上に、「受け入れ自治体リスト」がきちんと公表されることを願います。

以下は、ホームページ上で公開されている、受け入れ側の情報です(関連情報含む)。

北海道
秋田県
茨城県
滋賀県
広島県

仙台市
木更津市
横須賀市
パブコメ 市営住宅入居要件緩和について
新潟市
新潟市
子ども・被災者支援法に係る条例改正について(入居要件緩和) 
岡山市





文責・吉田千亜

2015年3月10日火曜日

3月10日(火)発売の「女性自身」に記事を書かせていただきました。

 本日3月10日(火)発売の「女性自身」の「シリーズ人間」というコーナーに、
私たちといっしょに活動している郡山在住・根本淑栄さんの測定活動に関する記事を書かせていただきました。



根本さんの言葉を借りて、子の被ばくを心配するおかあさんたちの気持ちを伝えることができれば…という思いで書かせていただきました。

みなさま、ぜひお手にとって読んでいただけると幸いです。

 また、誌面の都合上詳しくは書けなかったのですが、根本さんと共に測定をしているママレボの吉田千亜さんや、「こどもみらい測定所」の石丸偉丈さんたち、「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」(こどけん)のメンバー、また、こどけんの活動にカンパしてくださっている方々など、多くのみなさんの協力のもとに、測定が成りたっていることを、ここで付け加えさせていただきたいと思います。

 ただ、記事中にひとつ修正点があります。

P67の土壌汚染の値を示す箇所で「平方メートルあたり」とするところを「グラムあたり」と書かれているところがありました。
こちら、正しくは「平方メートルあたり」の数値ですので、この場をかりてお詫びと訂正をさせていただきます。
お読みいただける際は、平方メートルとしてお読みいただければと存じます。
どうぞよろしくお願い致します。

和田@ママレボ

2015年3月6日金曜日

ママレボ♡ブックレットシリーズ 第1弾「子ども脱被ばく裁判」の弁護士が、ふくしまの親たちに送るメッセージ~ 怖がっていい、泣いていい、怒っていい、いつか、さいごに笑えるように――

 「ふくしま集団疎開裁判」改め「子ども脱被ばく裁判」の弁護団長、井戸謙一氏の著書を、ママレボ♡ブックレットシリーズの第1弾として発刊いたしました。
定価800円

 なぜ、いま「子ども脱被ばく裁判」をするのか。その理由を、具体的事例を示しながら、わかりやすく書いてくださっています。


 また、原告になっている母親たちの手記も収録。大手マスコミでは報道されない、福島の今を知ることができます。
 福島にお住まいの方にも、福島で起こっていることはよくわからないという県外の方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

 ご購入はこちらから
  ※ママレボは、「子ども脱被ばく裁判」を応援しています。ブックレットの売上げの一部は、「子ども脱被ばく裁判」の支援金として寄付されます※************************

もくじ

ごあいさつ

Ⅰ 原発差し止め判決
  裁判官次第の仕事/まだまだ想定が甘かった

Ⅱ 国民を守ろうとしない政府や専門家
  安定ヨウ素剤を配布せず、SPEEDIも隠ぺい1/山下俊一氏の罪/ 子どもにも年間20ミリシーベ
  ルトを適用

Ⅲ 誤解だらけの100ミリ論争
  100ミリシーベルトではがんはふえない/低線量でも、がんはふえる/リスクは、がんだけでは
  ない/すべては原子力政策を続けていくため

Ⅳ 事実を知ることから、すべては始まる
  
明らかになっているチェルノブイリの健康被害/甲状腺がんが多発/放出された放射性物質
  の量は、ほんとうにチェルノブイリより少ないのか/測定されなかった甲状腺被ばく

Ⅴ ベラルーシやウクライナより劣る日本
  「チェルノブイリ法」 と 「子ども被災者支援法」

Ⅵ 「子ども被災者支援法」 の限界
   「支援」 ではなく 「賠償」 を

Ⅶ 子ども脱被ばく裁判
   矛盾した判決/ 「子ども脱被ばく裁判」 とは/なぜ、司法に訴えるのか

 
~原告のお母さんたちの声~
 
 「政府や福島県は、真実を述べてほしい」(福島市在住 高橋絵里子さん)

 「同じ境遇の母親たちの希望になりたい」(福島市在住 大山慶子さん)
 
 「裁判に勝って、子どもたちの未来にあかりをともしたい」(郡山市→岡山県笠岡市 山本紀子さん) 


あとがきに代えて

ふくしま集団疎開裁判と支援活動の歩み