今回は、このプロジェクトの概要と、3月29日に行われた「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト 第1回 ~知ろう!測ろう!つながろう!~ 測定室&市民交流会」の様子を、ご紹介します。(和田秀子)
■東日本17都府県で1700か所
「市民の手で東日本の土壌汚染を明らかにしよう」
そんな熱い思いを持った人々の交流会が3月29日、東京都内で開催された。
『東日本土壌ベクレル測定プロジェクト 第1回 ~知ろう!測ろう!つながろう!~ 測定室&市民交流会』と題されたその集いには、北海道から九州まで、16か所の市民測定所が参加。また一般の人たちもかけつけ、総勢約70名に。会場は熱気があふれた。
この交流会を主催したのは、各地の市民放射能測定室のデータを連携している『みんなのデータサイト』運営委員会。
『みんなのデータサイト』とは、原発事故後に全国各地にできた市民放射能測定所で、積み上げてきたデータを一元管理し、誰にでも分かりやすく手軽に検索ができるように作成・公開されたデータベースサイトのことだ。蓄積されたデータは、すでに1万件を超えている。
交流会の開始に先立ち、共同代表の石丸偉丈さんは、次のようにプロジェクトを始めた経緯を説明した。
事務局長の石丸偉丈さん |
「原発事故から4年が経過し、放射性セシウム134が2年ごとに半減していくなかで、今が測定できるギリギリの時期。
今回の事故の大きさをしっかり捉えるためにも、全国の市民測定所と市民のみなさんがつながって、東日本17都府県*の土壌ベクレル調査を進めていきたい。目標は、来期までに17都府県で1700箇所の土壌を調べることです」
(*青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、静岡、新潟)
■市民がつくりあげていく汚染地図
すでに、同プロジェクトにも参加している、岩手の市民測定所と市民グループらが、先行して岩手県内316か所の土壌を測定している。
測定値ごとに色分けされた土壌汚染マップも完成させていた。
測定値ごとに色分けされた土壌汚染マップも完成させていた。
「土壌調査プロジェクト・いわて」の汚染マップ |
岩手をお手本にして、他県でも市民の手で土壌測定を進めていく予定だ。
岩手の土壌測定プロジェクトで中心を担ってきた『放射線被曝から子どもを守る会・ いわて』の菅原和博さん(かねがさき放射能市民測定室・代表)は言う。
放射線被曝から子どもを守る会・いわて の菅原和博さん |
「岩手県では、県内の全市町村で1か所ずつは測定しようという目標を立てていました。
とくに汚染のひどい県南地域のお母さんたちからは、『子どもの通学路や学校、公園などを測定したい』という要望が多く上がっていたので、そういった場所を中心に調べました」
菅原さんは、土壌を採取する前には行政機関に出向き、関係部署に測定の許可を得るようにした。公園などの公共施設以外は、必ずしも許可がいるわけではないが、「行政に関心を持ってほしい」というこだわりがあったからだ。
「測定してわかったことは、事故から4年たっても油断できない状況であるということ。今後、このプロジェクトを岩手から他県に広げていきたい」(菅原さん)
また、同プロジェクトに参加している『森の測定室・滑川』代表の主山しのぶさんは、
「この土壌プロジェクトは壮大すぎて最初はとても参加できないと 思っていました」と告白。
しかし実際に、土壌サンプリング講習会を開催してみたら、 近隣のグループが自発的に動いてくれたり、 複雑だと思っていたサンプリング方法もやってみたらできる、 という実感が持てたという。
「地域の土壌を測定することで、 新たな人とのつながりが持てます。 それぞれ住んでいる地域を測定していくことで、 ジグソーパズルのように17都県の地図がつながっていくといいで すね」
と、主山さんは意気込みを語った。
さらに、韓国の環境団体で働いているという一般参加者の男性は、「韓国の人々は、政府の情報をほとんど信じていない。日本でも、このような市民のプロジェクトが立ち上がったということは、真実を明らかにしていくという点で非常にだいじだ」
と、エールを送った。
■参加方法は「採取」か「寄付」
次に事務局から、このプロジェクトへの参加方法について説明があった。
これによると、私たちがプロジェクトに参加する方法は次のふたつだ。
ひとつは、「土壌採取で参加する」方法。もうひとつは、土壌測定プロジェクトへ「寄付する」方法だ。
「土壌採取で参加したい」という方は、何人か仲間を集めて事務局に連絡すれば、事務局が、土壌採取の方法に関する講習会を開いてくれる。
また、「一緒に土壌採取する仲間がいない」という方でも、事務局に相談すれば、地域で測定しているグループを紹介してもらえることもある。
もちろん、ひとりで始めてもいい。
仙台で「小さき花」という市民測定室を運営している代表の石森秀彦さんは、「測りたいと思ったら、まずひとりでもやってみてほしい。その様子を見て、協力してくれるようになる」と話す。
クリックすると画像が拡大します |
「面倒だな……」と感じる方がいるかもしれないが、「統一した手法で採取・測定することで、チェルノブイリや行政など、他のデータとも比較しやすくなる」(事務局)とのことなので、土壌採取する場合は、よく確認してから実行するようにしよう。
次に、土壌採取はできないが、「寄付でなら参加できる」という方も大歓迎。
というのも、「ひとりでも多くの方に参加してほしい」という思いから、当プロジェクトの土壌測定料金は無料になっているからだ。
つまり、全国の善意ある測定室のボランティアスタッフによって、つなわたりのように成りたっているのが現状。 とはいえ、これほどの大規模プロジェクトを成功させるには相当な費用がかかるので、カンパで支えていくこともだいじだ。
また、すでにスタートしている「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」のクラウドファンディングから寄付する方法もある。→クラウドファウンディングはこちら https://moon-shot.org/projects/68
■分科会で熱い議論
事務局から参加方法について説明があった後、休憩を挟んで分科会が行われた。
分科会のテーマは、「プロジェクト全体を進めるために戦略トークをしよう」「初心者ですが質問していいですか?」「採取をしてみて思うことぶっちゃけトーク」など。
記者は、これまで何度か福島県の土壌を測定した経験があるので「採取をしてみて思うことぶっちゃけトーク」に参加してみた。
このなかでは、今回の土壌プロジェクトでは採取の対象になっていないホットスポットをどう扱うか、などの話題も出た。
このなかでは、今回の土壌プロジェクトでは採取の対象になっていないホットスポットをどう扱うか、などの話題も出た。
たとえば、河川敷などは総じて放射性物質が集まりやすく、他の場所より数値が高めに出る傾向があるため、今回の採取場所からは除外されている。
しかし、河川敷で子どもたちが遊ぶこともあるので、土壌を採取して測定するべきではないか、といった意見も出た。
記者自身も、福島県郡山市の、ある河川敷で土壌を測定したとき、放射性セシウム134と137の合算で、1㎏あたり3万ベクレルを超える値が検出され驚いた経験がある。
事務局長の石丸さんは、「データをどう扱うかは別にして、河川敷などのデータは集めていく必要があるかもしれない」と述べ、今後、採取の方法についても見直しながらプロジェクトを進めていくと話していた。
また、「初心者ですが質問していいですか?」の分科会に参加した、東京都在住の母親は、「今までこうした場に参加したことはなかったけど、リスクは感じていた。自宅周辺がどれくらい汚染されているのか、本当のことを知りたい」と話していた。
このように、分科会でも活発な意見が交換され、あっという間に閉会の時間に。
事務局長の石丸さんは、最後にこう述べた。
「1㎏あたり100ベクレル以上あれば、ドラム缶に入れて保管しなければならないレベル。しかし東日本では、あちこちで100ベクレルを超える土が見つかっているし、福島では1㎏あたり1万ベクレルを超える値が当たり前に検出されています。そんな数値を見ると、暗い気持ちになってしまいますが、未来の子どもたちのためにも、汚染状況を明らかにしていかねばと思っています」
現実は残酷だ。しかし、事実を知らなければ、被ばくを回避することもできないし、将来、同じ過ちをくり返すことにもなりかねない。
このプロジェクトを成功させることは、私たち大人の責任ではないか。
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