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2015年4月1日水曜日

これからの避難への支援策について――福島県中通り・浜通りの方へ


この記事を書くか書くまいか、迷っていました。けれど、これによって少しでも「避難」あるいは「避難継続」の選択肢が広がる可能性もゼロではないと思うため、UPします。
さらに、決定事項であるにもかかわらず、なぜか復興庁も国交省も「施策に対応している自治体情報は集約していない」、「集約していたとしても公表しない」という回答だったので、あえてこちらに書くことにしました。
 
なぜ、迷ったのか、ということも付記しておきます。
本来であれば、終わりの見えない原子力災害であることにかんがみて、借上住宅(みなし応急仮設)の供与期間は長く続くべきです。また、これからの避難の選択肢として、201212月で打ち切られてしまった借上住宅の新規受け付けも再開してほしい、という声もあり、それを求める運動も行われています。
本日(2015.3.30)福島県に問い合わせをしたところ、担当窓口の方から「この施策も、いつまでということは不明です(文書では「当分の間」とされている)。いずれなくなる可能性もあるのでは」と言われました。
施策がなくなってしまってから、「この情報がもっと早く必要だった」と思う人が出てしまうことは避けるべきです。

本題に入ります。

すでにご存じの方も多いかと思いますが、「原発事故子ども・被災者支援法」の枠組みに、「公営住宅の入居要件の緩和」というものがあります。

簡単にいうと、対象地域(福島県中通り・浜通り)の母子・父子避難世帯に対し、公営住宅に応募できるよう、収入を実際の所得の二分の一であるとみなすという施策です。

想定されるケース(該当する方)は、ふたつあります。

●ひとつ目は、すでに避難中の方
たとえば、現在、福島県外に避難されている方が、もうしばらく避難を続けたいという場合。「いつ借上住宅が打ち切られるのかわからない」という不安を抱える状況が続くため、多少の家賃が発生しても、今避難している地域で民間の賃貸住宅よりは安く借りられる「公営住宅」に入居したい、というケースです。

●ふたつ目は、これから避難しようと考えている方
たとえば、現在、福島県内中通り・浜通りに居住されている方で、「家賃の安い公営住宅なら、これから母子(あるいは父子)で避難をしたい」という場合(本来は、民間の賃貸住宅などで条件の合うところに無償で避難できる=借上住宅に避難できることが一番ですが、その施策は打ち切られているのが現状です)。

ふたつ目に該当する方に対しては、唯一の「避難の補助」となる施策ともいえるのです。

くり返しますが、被災者に必要な情報は、きちんと周知されるべきです。「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針にのっとって、すでに決定されている施策であり、「避難(の継続/の決定)を支える唯一のメニュー」なのです(そのメニューが本当に被災者の声を聞いたものであるか否かは別として)。
また、それを受け入れる自治体側の対応も、施策の決定に基づいてそれぞれの議会で承認されている事実です。公表していけない理由は、何もないはずです(にもかかわらず、なぜか「受け入れ自治体を集約しない」「公表もしない」と言われましたが)。

さて、この施策に基づいて公営住宅に応募するために必要な条件としては、

1)   福島県中通り・浜通り(避難指示区域=帰還困難区域・居住制限区域および避難指示解除準備区域を除く)に、平成23311日時点で居住していた世帯。
2)   「居住実績証明書」をもっている(対象地域内の避難元市町村にて交付)。

 のふたつです。2)に関しては、すでに昨年(平成26年)101日より、発行が始まっています。

 では、この施策に基づいて、「受け入れします」と表明している自治体はいくつあるのか?わかる範囲で、以下に記しておきます。

 平成273月現在、
【都道府県=県営(道営)住宅】
北海道、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県、福井県、岐阜県、佐賀県、兵庫県、山口県、岡山県、徳島県、香川県、高知県、佐賀県、熊本県、大分県、鹿児島県(23道県)

【政令指定都市=市営住宅】
宮城県仙台市、埼玉県さいたま市、千葉県千葉市、新潟県新潟市、兵庫県神戸市、熊本県熊本市(6市)

※これ以外にも、全国市町村でこの運用が始まっています。「ここに避難できるかどうか?」ということは、実際に市町村窓口に問い合わせをしてみることがもっとも大切です。問い合わせをする場合には「公営住宅の担当課につないでください」というのがいちばんよいと思います。

【福島県内=市町村営住宅】
会津若松市、田村市、南相馬市、矢祭村、広野町、伊達市、鏡石町、小野町(8市町)

秋田県北秋田市では、「被災・罹災(りさい)証明書」を持参すれば、無抽選で優先入居できるという対応を決定しています(ただし、これまで実際に適用された方はいないとのことでした)。

では、この施策、どれくらい利用されているのでしょうか。じつをいうと、きわめて少ない状況となっているようです。というのも、そもそも、居住実績証明書の発行数じたいがとても少ないのです。
その発行件数は、35にとどまっていて、福島県内に住んでいる方で発行を希望したケースは7件。福島県外に避難されている方で発行を希望したケースは28件のみなのです。
原因としては、

  残念ながら、被災者のニーズに沿ったものとは言いがたい施策であるということ。
  ここまでに書いてきたとおり、この情報に関して周知が足りないこと。

などが考えられるでしょう。

はたして、この記事を書いたところで、どのくらいの人に役立つ情報なのかはわかりません。ただ、原発事故の発生当時には子どもがいなかったけれど、最近になって子どもが生まれ「子どもが小さいうちは避難をしたほうがいいのではないか」と考えている方がいる、ということは耳にします。
また、原発事故当時はタイミングが合わなかったけれど、「最近になって避難をしようか、と考えている」という方のお話も聞いています。

この制度は、避難も、居住も、帰還も、どの選択も尊重するという理念をもった「原発事故子ども・被災者支援法」に基づく施策です。まずは多くの方に「知らせる」ということが、何より大切なのではないかと思います。
公表されないということで、こちらに急ぎUPしましたが、今後、復興庁や国交省のホームページ上に、「受け入れ自治体リスト」がきちんと公表されることを願います。

以下は、ホームページ上で公開されている、受け入れ側の情報です(関連情報含む)。

北海道
秋田県
茨城県
滋賀県
広島県

仙台市
木更津市
横須賀市
パブコメ 市営住宅入居要件緩和について
新潟市
新潟市
子ども・被災者支援法に係る条例改正について(入居要件緩和) 
岡山市





文責・吉田千亜

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