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2014年8月7日木曜日

傍聴レポート:「第9回住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」

 9東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議の傍聴レポートをお届けします。
<当日の資料はこちら

豪華ラインナップだった第8回の議事録は、内容が盛りだくさんすぎてまだアップできていないのです。(ごめんなさい!)

Our PlanetTVさんがわかりやすくまとめてくださっているので、まだご覧になっていない方はぜひチェックしてくださいね。 こちら→参考人『健康調査や線量評価の抜本見直しを』環境省会議」

■「まとめ」が、白紙に
 さて、85日に行われた第9回専門家会議は、よい意味で、いままでとは様子が異なりました。
まず冒頭で、「こどもたちを放射能から守る関東ネット」の方々が、長瀧座長の解任を求めて、環境省の浮島政務官に要望書を提出。(ママレボ編集部も、賛同団体として名を連ねています)

 また、これまでの会議では、「被ばくはたいしたことがない」「よって健康調査もする必要がない」という一方的な長瀧座長の誘導に反論する委員はほとんどいなかったのですが、この日は委員のなかから、はじめて “ノー” が突きつけられました。
 会議のはじめに、環境省の事務方から、これまで8回にわたって議論されてきた 「被ばく線量の評価」や「健康影響の評価」などに関する 中間とりまとめに向けた線量評価部分の要点(案) ” の文章が説明されたときのこと。

「これでは国民をミスリーディングしてしまう」と、委員たちから疑問の声が上がったのです。

長瀧座長の意向をくんで、内容を簡素にしてしまったために、前回提出されてた“まとめ案”と、今回のものを比べてみると、線量評価の“不確実性”を記した箇所が削られ、断定的な言い方になっています。

たとえば、下線部分。


『旧警戒区域であっても甲状腺被ばく線量が100mSvを超える被ばくを受けた住民がいたとは考えられず、50mSvを超える被ばくを受けた住民も少ないと考えられる』

上記の表記に関して、この日欠席だった春日委員(日本学術会議副会長)からは、

「『考えられず』という表記はいかがなものか。断定はできない。『考えにくく』などの表記にしたほうがよい」 という意見が文書で提出されたほか、本間委員(日本原子力研究開発機構 安全研究センター長)からも、
「『100mSvを超える被ばくを受けた住民がいたとは考えられず』と記している一方で、下段には100mSv以上の被ばくを受けた者がいる可能性を否定するものではない』と書かれており、科学的にあり得ない文章だ。不確実性の多いなかで、100mSvの被ばくを受けた集団がいないとは言い切れない。少なくとも私は自信がない」と、厳しい意見が出されました。

 これに対して長瀧座長は、「では本間先生に、ご意見を書いていただいて、次回はそれをみなさんに読んでいただきましょうか……」と、お茶をにごそうとしましたが、本間委員はさらに、「記述の内容についでだけ言っているわけではない。この専門家会議の目的から考えて、どのようなまとめが必要なのか、そこから議論する必要があるのではないか」と、まさにちゃぶ台をひっくり返す勢いで疑問を呈したのです。

 また、石川委員(日本医師会常任理事)も、「この専門家会議は、あと2回しかないと聞いている。健康管理や、医療の施策のあり方などを早く議論しないと、私たちの任務が果たせない。いまも悩んでいる親御さんがたくさんいるのだから、そちらの議論をしたほうがいい」と、もっともな意見を展開。環境省の事務方があわてて、「あと2回とは決まっていない。必要に応じてやっていく」と、長瀧座長と目配せしながら弁明する一幕がありました。

さらに本間委員は、「線量把握や健康リスクの把握もたいせつだが、それらが厳密になされないと、健康管理のあり方が議論できないわけではないはずだ」と、述べ、長瀧座長の進め方を批判しました。 長瀧座長も、しぶしぶこの意見に賛成。線量評価や健康リスクの「まとめ」は、事務方と相談しつつ進めることとし、今後の専門家会議では、健康管理のあり方について議論を進めていくことを、やっと了承したのです。

■すでに手術した51人は、過剰診療ではなかった!?

  続いてこの日は、甲状腺疾患の第一人者のひとりでもある宮内昭氏(隈病院・院長)と、国立がん研究センターの津金昌一氏が、参考人として招かれ、意見を述べました。

  とくに興味深かったのは宮内氏。
 宮内氏は、「小児のデータはないが……」と断ったうえで、隈病院で蓄積している成人女性のデータを示しながら、次のような点について指摘。

・米国でも日本でも、甲状腺がんが急増しているが、死亡率は一定である。
・香川県のがんセンターで乳がん検診をした成人女性を対象に甲状腺エコー検査をしたところ、3.5%にがんが見つかった。
・しかし、1センチ以下の微小がんで、かつリンパ節転移や
遠隔転移のないものは、がん細胞が成長せず、健康に害をおよぼさないものが多い。

・よって隈病院では、21年前から「リンパ節転移」や「遠隔転移」などのない1センチ以下の微小がんの患者には、手術をしないで経過観察をすすめている。

・経過観察の頻度としては、最初は半年後。3ミリ以上大きくなっていなければ一年後に診るという具合。
 ・ただし、あくまでもこれらは成人のデータであって小児のものではないので、小児についても同じことが当てはまるかどうかはわからない。

 こうした一連の説明に対して長瀧座長は、「スクリーニング検査をすれば、(甲状腺がんは)見つかる。これを続けていたら、最終的には、福島県の10人にひとりは甲状腺を摘出しているといったことになるかもしれないが、それでも検査をすれば安心なのだから、すればいいんじゃないかという意見がある。それについてはどう思うか?」と、宮内氏に質問。

 あきらかに、検査を要望している石川委員に対する当てつけととれる内容ですが、宮内氏は、「それは極端な数字だ」と、長瀧氏の質問を一蹴しました。

 また、宮内氏は、福島県県民健康調査の甲状腺部会の委員なども務めていることから、その実情にも言及。

「鈴木先生の説明によると、福島県で甲状腺がんの手術を受けた51人の子どものうち、少なくとも7割以上は大きさが1センチ以上とか、リンパ節転移や遠隔転移があるなどの症例も含まれていたということだ。残りの1割程度は1センチ以下だが、鈴木先生の説明では、反回神経に近かったりと、我々もハイリスクとしているような患者に対して手術を行っている」 と述べ、過剰診療ではなく、適切な判断で手術が行われているとの見解を示しました。  つまり、すでに手術している51人に関しては、スクリーニング効果とは言い切れない可能性があるということではないでしょうか。 
 また、宮内氏によると、ハイリスクでない患者の場合は、小児においても経過観察が有効であろうということです。 
しかし一方で、経過観察をするには、患者と十分に話し合いをする必要があるとのこと。医師が患者との信頼関係を十分に築き、患者が“経過観察”という選択肢も選びやすいようすべきなのでしょうが、県立医大に対する不審は増大する一方。改善が急がれます。

 今回のレポートはここまでです。 なぜ、いままで反論しなかった本間委員が、あれほど長瀧氏にかみついたのか――。真意はわかりません。しかし、しろうと目に見ても、“非科学的”な議論を推し進める長瀧座長に危機感を覚えたのかもしれません。いずれにしても、この第9回の会議から、大きく流れが変わっていくことはまちがいないと思います。次回からの、健康管理のあり方についての議論に注目しましょう。

 詳しくは、Our PlanetTV さんの動画をご覧ください。

ホットスポットの母親「座長解任」直訴〜環境省専門家会議




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