原発事故さえなければ、住まいを替える必要のなかった避難者が、なぜ、家賃を支払わなくてはならないのか。
埼玉県だけでも、1000人単位で、家賃を自己負担している避難者がいるという状況が明らかになったいま、この問題を、このままにしていいのだろうか。
大震災:埼玉県内の避難者数は5639人 把握漏れで調査
――新たに避難者として集計されたのは、自己負担で民間賃貸住宅に避難している人(1148人)▽親戚や知人宅に避難している人(324人)など。その他に居住形態は不明だが、避難者向けの水道料金の減免制度適用や自治体の戸別訪問などで居住が確認できた避難者も1149人に上った。多くは自主避難者とみられる。
そもそも、この問題の発端は、7月30日毎日新聞の朝刊で明らかになった、埼玉県の避難者数のもれ。2400人、把握していないと発表された。埼玉県はその指摘をうけて、1か月かけて避難者数の調査を行った。
(「原発避難2400人把握せず 埼玉県集計 国の基準なく(毎日新聞)」)
じつは、それ以前にも、埼玉県内の避難支援を行う民間団体が発行する『福玉便り』の調査で、2013年、2014年の調査ともに、埼玉県が発表する避難者数の1,7~2倍の人数であることは、すでに指摘されている。
『福玉便り号外』2014年
この問題は、8月4日にも報道され(「クローズアップ2014:埼玉県ずさん集計 原発避難把握、丸投げ(毎日新聞)」)、8月5日は、埼玉県知事のコメントも記事になっている(「避難者把握ミス:埼玉知事「未登録の一人一人追跡は困難(毎日新聞)」)。
知事は、
――「復興庁が(集計)基準を示さなかった」と国の対応を批判したうえで、「これでは正確な集計にならないのではと、県の立場で(復興庁に)物を言うべきだった。
と述べた。
原発事故直後の混乱の中、自分で住宅を借りた、という話はよく耳にする。特に、自主避難者への住宅支援については、事故直後に方針が決まっていなかったため、急いで契約をして住み始める、というケースも多かった。
たとえば、埼玉県でいえば、県営住宅の入居の告知がはじまったのは2011年6月13日、借上げ住宅入居者募集要項が告知されたのは2011年7月15日。
事故から3か月経っている。
もちろん、それまでにも、市町村が住宅を用意したり、ボランティア住宅(空き家提供)を紹介したり、雇用促進住宅・UR住宅など、さまざまな住宅支援がなされていたようだが、借上げ住宅の募集が正式にはじまった7月までに、自分で住宅を借りた人がいた、ということは想像に難くない。
運よく「借上げ制度」ができたことを知り(かつ、自分にも適用されることがわかり)、そちらに移行する手続きを行った人も多いが、実際は、その手続きを知らず、そのまま継続して自己負担で家賃を支払い続けている人も、報道で明らかになった「1148人」の中にはいるはずだ。
実際に、2012年12月、新規受付が終了したあとに「借り上げ住宅制度を知った」という、いわき市から避難していた女性は、2011年11月に避難をしているが、避難当時、借上げ住宅の情報は得られていなかった。
埼玉県内で自主避難者のADRを手掛ける、小林玲子弁護士は、
「家賃を自己負担してきた方は、避難してきた時期にもよるけれど、原発ADRを行えば、今まで支払った家賃を回収できる可能性はゼロではない。ぜひ相談してみてほしい」
と話す。
今回、明るみに出た人数は、あまりにも大きい。
原発ADRで支払う必要のなかった家賃を回収しつつ、今後、新たに借上げ住宅への入居を可能にする、あるいは、避難生活の長期化で多くの要望がある、借り換えを可能にするという、行政によるメニューを用意すべきではないだろうか。
ママレボ@伊藤千亜
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『ママレボ7号』では避難住宅について
『ママレボ8号』では避難者数について特集記事を掲載しています。
ぜひ、ご一読ください。
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