震災から3年半たっても、いまだホットスポットが多く点在する福島県郡山市。
本日、この郡山市で、大人たちの経済活動のために、子どもの健康がまた踏みにじられてしまいました。
「子どもたちが安心して遊べる屋内遊び場をつくろう」ということで計画されていた郡山市の屋内施設建設4か所のうち3か所が、なんと屋外施設に変更されるという決議が本日の郡山市議会にて、賛成多数で可決されてしまったのです。
なぜ、屋内施設から、屋外施設の建設に変更になってしまったのか――。
郡山市議から入手した資料によると、その理由には驚くべきことが書かれていました。
赤線部分の③をご覧ください。
(クリックで拡大します)
「屋内運動施設4か所を整備することで、『郡山は危険だから屋内の遊び場をつくった」などと間違った情報発信になる可能性がある」と記してあります。
間違った情報発信??
郡山市はほんとうに、子どもが被ばくを気にせず外で思いっきり遊べるほど安全な場所なのでしょうか?
「子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト」が今年5月に、屋外施設の建設予定地のひとつとなった「旧行健第二小学校跡地」の周辺をホットスポットファインダーで測定したところ、いまだ放射線量の高いホットスポットが点在していることがわかります。
赤丸の部分が、屋外遊戯施設の建設予定地。この周辺の除染は、いまだ手つかず。 |
測定者によりますと、「周辺を車で通りすぎるついでに測定したものなので、歩いて測定すれば、もっとホットスポットが見つかるはずだ」ということです。
なのに、現状を調査もせず、上記のような意見をまとめたのは、有識者や専門家で構成されている「郡山市の屋内運動施設用の整備に関する検討委員会」です。
記者は2013年10月に、この検討委員会の一員である菊池信太郎医師(郡山市在住・小児科医/NPO法人ペップ子育てネットワーク)に、子どもの外遊びについてインタビューしました。
そのときに菊池氏は、次のように答えています。
「福島の子どもたちが安心して外遊びができるように、郡山市に対して『公園のリニューアルをすべきだ』と提唱している。“リニューアル”というのは、たんに除染をするだけではなく、遊具もすべて取り換え、芝も張り替え、かつ子どもが思わずゲーム機を取り出して遊びに行きたくなるような楽しい仕掛けが施された公園を位置からつくりなおすことだ。たとえ公園を除染して、空間線量がじゅうぶんに下がったとしても、その地域で『この公園は安全だ』という共通認識をもてなければ、お母さんは自分の子どもを遊ばせにくい。公園をリニューアルすれば、地域一帯で『この公園は安心だ。遊ばせてもよい』という共通認識が得られる」
おそらく、こうした検討委員たちの意見にもとづいて、屋外の遊び場が整備されることになったのだろうと推測します。
今回の件について、事実確認をしようと、ふたたび菊池氏にコメントを求めましたが、「公式コメントは差し控えたい」との返答。その代わり、「日ごろの持論ですが…」という前置きのもと、下記のようなご意見をいただきました。
「郡山にかぎらず全県下にいえることですが、外遊びをしたい子(させたい保護者)、外遊びを控えたい子(させたい保護者)のどちらにも、子どもたちが健やかに育つための例えば遊び場や、運動場をそれぞれに用意し、そして、どちらの子どもたちにも彼らが一生健康に育つための土台(体力や運動能力、気力、コミュニケーション能力など)を保障しなくてはいけないといういうことだと思います」
もちろん、原発事故がない状態であれば、菊池氏のおっしゃる通りでしょう。しかし、原発事故が起きて、大量の放射性物質が降り注いでしまった現在において、果たしてこの理屈が通用するのかどうかはおおいに疑問です。
まず、「被ばくのリスクがふえている」ということを共通認識として、施策を考える必要があるのではないでしょうか?
こうした事態に対して郡山市在住の主婦・塾講師の根本淑栄さんは、「本来は、子どもたちが被ばくを避けて運動できるように屋内施設をつくる目的だったはず。それが、なぜ屋外施設に変更されるのか理解できない。こんな施設を4つもつくるなら、そのお金を子どもたちの保養にまわして、ウクライナやベラルーシのようにすべての子どもが保養に行けるようにすべきです」
と憤りをあらわにしていました。
また、郡山市議で、一児の母でもある滝田春奈さんも、以下のような不信感を示しています。
「当局の報告では、平成25年度にNPO法人郡山ペップ子育てネットワークの実施したアンケート結果で、事故後3年半が経過し除染が進んだことで、放射線の影響を心配し、外出を控えることが『全くない』『あまりない』と回答する保護者が、多数を占めるようになったことを理由に挙げて、屋内だけにこだわらず屋外遊び場も視野にいれるようになったとのことですが、果たしてそうでしょうか?
NPO法人郡山ペップ子育てネットワークの実施したアンケートの原本をよく読んでみると、幼稚園と保育園の保護者に対して、『この1か月のお子さまの様子を思い浮かべ、一番近いものをぬりつぶしてください』とあり、その回答の選択肢として、『放射線のために外出することを心配する』『まったくない』『あまりない』『ときどきある』『よくある』とありました。これでは、心配する主語が幼稚園児と保育園児であるわけだから『まったくない』『あまりない』との回答が多いのもうなずけますが、議員への配付資料には、心配する主語は保護者に変えられており、保護者が外出を控えることがなくなったかのように記されていました。このようにアンケートの主語を変え、都合よく読み取っていることに、不信感と怒りを覚えます」
これでは、大人の経済活動のために事実をねじまげ、子どもの健康がおざなりにしていると受け止められてもしかたありません。
また、滝田市議は、「屋外で遊んでほしいのであれば、すでに各公園で屋外遊具を新しいものに交換したのだから、そこの除染を徹底的にするなどの対策を講じるべきであり、新たな屋外遊び場はいらないはず」とも述べています。
原発事故が起こってしまった以上、残念ながらリスクは増加しているのです。
「リスクはある。それをいかにして軽減するか」という共通認識に立って施策を講じなければ、住民は安心して暮らせませんし、避難している方は戻ってこないでしょう。また、今後も移住する人は減らないでしょう。
これは福島県の自治体や近隣県、そして政府に訴えたいことですが、もう一度、保護者の声に耳を傾け、“リスクありき”の政策を考えてほしいと強く思います。
ママレボ@和田
子どもの外遊びについての記事は、ママレボ6号に掲載されています。
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