「福島県民健康管理調査 第11回検討委員会」が6月5日、福島市で開催された。
さんざん不信をかった山下俊一氏(福島県立医科大学副学長)が検討会の座長を退任し、今回からは星北斗氏(福島県医師会常任理事)が新たに座長となった。
また、委員会にも新たな専門家を加え、福島県としては〝県民に開かれた健康調査〟をアピールしたいねらいだ。
しかし、肝心の中身はどうだろうか――。
■甲状腺ガンが12名に増加
今年2月に行われた前回の検討委員会では、平成23年度に甲状腺エコー検査を受けた約38,000人のうち、甲状腺ガンと確定した子どもが3名、悪性疑いが7名だと発表された。
今回の検討委員会では、平成23~24年度に検査を受けた子どものうち、平成25年5月27日時点で「悪性ないし、悪性疑い」が28例。うち手術を行った子どもは13名。手術の結果、「良性結節」と判明した子どもが1名。乳頭ガンと確定した子どもが12名という発表となった。
つまり、「甲状腺ガン」の確定者が、3名から12名へと4倍にふえたわけだ。
この結果を、新しくなった検討委員たちはどう分析しているのだろうか。
委員たちのやり取りは、「またこれか……」と落胆せざるを得ないような、相変わらずの内容だった。
■被ばくの影響だとは考えにくい?
今回から新たに座長となった星氏は、「現段階で、放射線被ばくの影響だとは考えにくい」とし、新たに検討委員に加わった清水一雄氏(日本甲状腺外科学会理事長)も、「被ばく線量やヨウ度の環境が異なるので、チェルノブイリとは単純に比較できない」としながらも、「今は、チェルノブイリのころより格段にエコー検査機器が発達している。これほど大規模に子どもの甲状腺検査をすれば、これくらいガンが見つかっても不思議ではない」という趣旨の発言をした。
さらに、チェルノブイリでは、事故から4~5年後に甲状腺ガンが多発したことや、年齢が幼いほど甲状腺ガンの罹患率が高かったことを理由にあげて、「福島の場合は、まだ事故から2年しか経っていない。今、甲状腺ガンになっている子どもは15歳以上のハイティーンが多いので、現在のところ放射線被ばくの影響だとは考えにくい。何年も調査をしてみないとわからない」と述べ、これまでの検討委員会と同じ見解であることを示した。
しかし記者から、「チェルノブイリでは事故から4~5年後に甲状腺ガンが見つかったが、福島では検査機器の性能が向上したことによって早く見つかっているという可能性も考えられる。そうなれば、放射線由来の小児甲状腺ガンは4~5年後に多発するという現在までの前提がくつがえることになると思うが」という質問が出ると、「それはその通りだ」と、あっさり認めた。
つまり、福島県は躍起になって放射線との関係を否定しようとしているが、「正確にいえば、まだわからない。被ばくの可能性もある」ということだ。
以前、私は、疫学調査を専門にしている岡山大学の津田教授に話しをうかがったことがあるのだが、津田教授によると「有病期間(検査でガンが見つかるまでの期間)を7年として計算した場合でも、現在福島で見つかっている甲状腺ガンの割合は、有意に増加している」と述べ、「それが放射線由来でないなら、何が原因なのかを至急探るべきだ」と警鐘を鳴らしていた。
現在、福島県で見つかっている甲状腺ガンが、「もともとあったものが検査によって早く見つかっているだけ」なのか、「放射線被ばくによって発症したもの」なのかを見極めるためには、
放射線の影響を受けていない地域の子どもたちを検査し、B判定が出た子どもに対しては細胞診を行うなどして、甲状腺ガンの発生率を調べる必要があるという。
すでに環境省は、「長崎・山梨・青森」の子どもたち4,500名を対象に甲状腺エコー検査を実施しているが、細胞診までは行っていない。
検討委員会のオブザーバーとして参加している環境省の桐生氏は、「今後、長崎・山梨・青森でB判定が出た子どもに対しても、細胞診を行うかどうか今後調整する」と述べた。
刷新したはずの検討委員会だが、結論としては「放射線被ばくの影響はない(あるいは少ない)」というスタンスは変わっておらず、これまでと同じ悠長な議論が繰り返されているだけだった。
放射線のリスクに対してまったく見解の異なる専門家も加えるなどして、予防原則に基づいた議論ができるようにしなければ、永遠に県民からの信頼は得られないのではないだろうか。
ママレボ@和田秀子
ママレボ@和田秀子
※ 第11回福島県「県民健康管理調査」検討委員会資料はこちら
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