福島原発事故後の人権状況を調査した国連調査報告が5月27日、国連の特別報告者アナンド・グローバー氏によってジュネーブで発表されました。
アナンド・グローバー氏は昨年10月に来日し、原発事故によって多大な被害を受けた福島などを訪れ、被災者や支援団体に対して、ていねいに聞き取り調査を実施しました。
そのうえで発表になった今回の報告書は、原発事故の被害者の人権を著しく侵害している日本政府に対して、強く改善を求めるものでした。
とくに強く批判しているのは、日本政府が現在、「年間20mSv以下の場所に人々を帰還させよう」としていることについてです。
日本政府は、「年間100mSvまでなら明確なガンの増加は認められないため、年間20mSv以下なら居住しても安心であるとアナウンスしているが、ICRP(国際放射線防護委員会)も、被ばく線量と比例して発がんや遺伝的疾患の発生率が上昇すると認めている」と指摘したうえで、「年間被ばく線量を1mSv以下に低減してはじめて、帰還を奨励すべきだ」と強調しています。
また、現在行われている「福島県民健康管理調査」では、検討委員の能力不足によって調査自体が信頼を得られていないことを指摘。すみやかに改善を求めました。
そのうえで、「甲状腺エコー検査でA2判定を受けた子どもたちに、次の検査を2年後まで待たせるのではなく、検査を受けたいときにセカンドオピニオンを含めて受診できる体制を整えること」、さらには、個人情報開示請求をしないと子どもの甲状腺エコー画像が入手できないことに対して、「親が子どもの検査結果にアクセスしやすくすべき」と、批判しています。
そのうえで、「甲状腺エコー検査でA2判定を受けた子どもたちに、次の検査を2年後まで待たせるのではなく、検査を受けたいときにセカンドオピニオンを含めて受診できる体制を整えること」、さらには、個人情報開示請求をしないと子どもの甲状腺エコー画像が入手できないことに対して、「親が子どもの検査結果にアクセスしやすくすべき」と、批判しています。
また、現在の健康調査内容は不十分で、チェルノブイリ原発事故後に行われたような血液検査や尿検査など、被ばくの影響がわかるような検査項目を追加すること。そのうえで、「放射性降下物は福島県を超えて広がっているのだから、年間の追加被ばく線量が1mSvを超える地域にまで健康調査を実施するよう勧告しました。
さらには、昨年6月に成立したものの、まだ基本方針すら出ていない「原発・子ども被災者支援法」についても触れ、「政府はすみやかに基本方針を策定し、支援対象地域を年間1mSv以上の被ばくが予想される地域と定め、移住・居住・帰還のいずれを選択しても適切な支援が受けられるように」と求めています。
こうした勧告に対し日本政府は、「年間20mSvまでの地域なら安全に居住できる、とは言っていない」などと反論しています。しかし現実は、年間20mSv以下になる区域には、どんどん人を帰還させようとしており、賠償なども打ち切られつつあるのです。
また、追加被ばく線量が年間1mSv以上の地域にまで健康調査を拡大することに対しては、「科学的でない」と述べています。しかし、ICRPでも、一般人の年間追加被ばく線量は1mSvを基準にしており、日本政府もこの考えに依拠しているのです。
これまでずっと原発被災者の“避難の権利”を求めてきたFoeJapanの満田さんは、「日本政府がここまで支離滅裂な反論をするということは、この勧告を気にしているという証拠。この勧告文を多くの人に知らしめて、日本政府がすみやかにこれを実行するようプレッシャーをかけていきましょう」と呼びかけています。
現在、支援団体らが、「共同アピール」をおこない署名を募集中です。ぜひみなさんも、この共同アピールに賛同いただき、まわりの方々にこの国連の調査報告内容を伝えていきましょう。
★支援団体による共同アピール(署名募集中)
★ヒューマンライツ・ナウによるグローバー氏の調査報告書仮訳はこちらhttp://hrn.or.jp/activity/area/cat32/post-199/)
★調査報告書に対する日本政府の反論(英文)
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