【「ママレボ通信No3」あなたの街の公園はだいじょうぶ? ~浜松城公園の芝生から750Bq超/kgの放射性セシウム検出~】
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■市民の独自調査で汚染が判明
今回は、原発事故が起きた「福島」で起こっていることではなく、あなたの街の公園にもあるかもしれない「芝生」の汚染についてのお話しです。
まずは、静岡県浜松市在住「きれいな緑地を守る会・浜松」代表・山田俊明さんからの投稿をお読みください。(ママレボ編集部にて一部編集)
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【全国に広がる、汚染芝生への危惧】
ことの発端は、平成24年4月25日、新潟県胎内市にある樽ヶ橋河川公園の芝生地帯から1,270ベクレル/kgの放射性セシウムが検出された、というニュースを聞いたことがはじまりです。
新潟県はここを立ち入り禁止とし、その後、この芝生を撤去しました。産地は、茨城県だったそうです。
このニュースを知った当会のメンバーが、「浜松市内の公園の芝は大丈夫なの?」と、浜松市役所の公園課へ確認しました。 公園課からは、「地上1メートルでの空間線量が国の除染基準を下回っているので問題ない」との回答があったそうです。
しかし、空間線量(sv/h)シーベルトでの数値に納得ができないということで、芝生地帯の土壌の放射能量(Bq/kg)ベクレルでの測定を独自に行うことにしたのです。
土壌採取地は浜松市の浜松城公園・中央芝生広場です。
採取に先立ち、浜松市役所の公園課で芝の産地を公文書で確認したところ、新潟県胎内市の樽ヶ橋河川公園に敷かれていた芝と同じ茨城県産のものが使われている公園が数か所あり、その中に浜松城公園も含まれていました。
浜松城公園・中央芝生広場内の5か所の土壌採取を行い、表層5㎝をとって測定したところ、470~1,050ベクレル/kg(NaIシンチレーション検出器による)の数値を確認しました。さらに、ゲルマニウム半導体検出器での測定で、1地点750~770ベクレル/kg(2回計測)も確認しました。
これは「チェルノブイリ原発事故の際の汚染区分」による「第4区分・放射線管理区域」に相当することがわかりました。
ここを訪れるたびに、野外活動の子どもたちが元気に遊びまわっています。親御さんが、食材に気を付けたお弁当を用意してくれても、この芝生広場で食事しては元も子もありません。
芝生に寝転がったり、走り回ることで舞い上がった土埃を、呼気により吸い込んでしまう内部被ばくの危険も十分に考えられます。
このように、危険をはらんだ公園の芝生地帯は浜松市に限ったことではないように想像します。
全国でも有志の方による、公園などの芝の調査がなされることを切に願います。
「規制値以下だから大丈夫」で片づけるのではなく、危険なものから「子どもたちを守る」という愛情と良心があれば、芝に限らず放射能汚染のさまざまな問題は解決の方向に進むのではないでしょうか。
平成25年6月19日
「きれいな緑地を守る会・浜松」 山田俊明
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■浜松市内の平均的な土壌汚染度の数十倍
筆者は今年5月、静岡在住の知人からこの話しを聞き、山田さんの元へ取材に行きました。
そして実際に、山田さんとともに浜松城公園を訪れ、750ベクレル/㎏を超える放射性セシウムが検出された付近で、空間線量を測ってみました。
すると、地上付近で0.2マイクロシーベルト毎時を超える放射線量が確認されました。ちなみに、平成24年5月の測定では、浜松市内の土壌汚染度は、ほとんどが1キロあたり数ベクレルから、高くても35ベクレルの範囲。(市民測定所「てぃーだ」調べ) 空間線量では、0.04~0.08マイクロシーベルト毎時くらいです。浜松城公園の750ベクレル/㎏、地上付近の空間線量0.2マイクロシーベルト毎時が突出して高い数値であるかが分かります。
(※浜松城公園のすべての場所で数値が高いわけではない)
浜松城公園・中央芝生広場にて。
地表での測定(RADEX1503)
同公園でお弁当を広げる子どもたち
筆者が訪れた日は、小学生たちが遠足に訪れ、まさにホットスポットの付近でお弁当を広げて食べていました。
山田さんが、「ここは放射能がいっぱいだから、できるだけ早くここを離れてね」というと、「え? 知らなかった!」と言って、あわてて移動していきました。
■なにが汚染の原因か?
山田さんが浜松市に情報公開請求をして入手した資料によると、福島第一原子力発電所の事故後に、浜松市が茨城県の造園業者から購入した芝は、浜松城公園をはじめ馬込川公園、西都中央公園など数か所に敷かれてることがわかりました。
しかし、山田さんはじめ「きれいな緑地を守る会・浜松」のメンバーが、市内の公園を調査したところ、かならずしも茨城県産の芝生が敷かれている場所がすべて汚染されているわけではなく、「浜松城公園中央芝生広場」と「馬込川公園南浅田地区」の芝生広場の一部エリアから400~750ベクレル/㎏超の放射性セシウムが検出されたということです。
なぜ、芝生がスポット的に汚染されてしまったのでしょうか―。
「きれいな緑地を守る会・浜松」から依頼を受け、公園の芝を測定してきた市民測定所「てぃーだ」(静岡県浜松市)代表の近藤正宏さんは、「芝生を公園に植える際に使用された土や肥料が汚染されていた可能性もある。まずは子どもが被ばくしないよう注意喚起し、そのうえで、放射性物質の汚染が全国に広がらないよう、原因解明のうえ規制を設けてほしい。放射能ガレキよりも深刻な事態になる可能性がある」と指摘しています。
造園が専門で、現在は福島大学うつくしまふくしま未来支援センターで農業復興を担当している石井秀樹特任准教授は、「おそらく、芝を育てるときの“土”が汚染されており、そのまま運んでしまったことが原因ではないか。風評被害を助長することになるので、まずはきちんと原因を調べることが重要だ」とコメントを寄せてくれました。
さらに筆者は、農林水産省に問い合わせてみました。なぜなら、新潟県胎内市の樽ヶ橋河川公園で汚染された芝が見つかったとき、新潟県は農林水産省に対して汚染原因の調査を求めていたからです。
しかし、農林水産省の返答は、「とくに調査はしていないので原因はわからない」という心もとないものでした。
筆者が調査をしなかった理由を尋ねると、「人体に影響を及ぼすほどの値ではない」ことと、「すでに新潟県は、茨城県の業者に芝を返還しており、業者からは『今後、地上1㍍の高さで芝の空間線量を測って0.19マイクロシーベルト毎時を超えた場合は自主的に出荷を自粛する』という報告を受けているから」との返答がありました。
ちなみに「0.19マイクロシーベルト毎時」の根拠は、「自治体が独自に定めている除線基準に沿っているのだろう」とのこと。
しかし、浜松城公園から見つかった750ベクレル/㎏の汚染芝は、地表付近で空間線量を測って0.2マイクロシーベルト毎時ですから、「地上1㍍の高さで0.19マイクロシーベルト毎時を超えない」という自主規制基準を設けてもスルーしてしまうでしょう。
これでは意味がありません。
震災前なら、100ベクレル/㎏を超えるものは放射性廃棄物として厳重に管理しなければならなかったわけですから、空間線量だけ測り、「安全」と判断すること自体ナンセンスではいでしょうか。
■全国に汚染が広がる可能性
「きれいな緑地を守る会・浜松」のメンバーで、2011年夏に関東のホットスポット千葉県柏市から、当時5歳の娘を連れてに浜松市へと母子避難した加藤悦子さん(仮名)は、「せっかく子どもを思いっきり外で遊ばせてやれると思ったのに……」と肩を落としています。しかも、加藤さんの娘が通う小学校の、春の遠足の行き先は、浜松城公園でした。
加藤さんは、校長先生に汚染の事実を伝え、行き先を変更してもらえるよう依頼しましたが、「すでに決まっていることなので」と、変更してもらうことはできませんでした。しかし、校長先生も理解を示してくれ、かろうじて「お弁当は中央芝生広場では食べない」という約束をしてくれたと言います。
国や自治体が対策を取らない限り、母親たちのこうした神経をすり減らす戦いがまた続くのです。
現在、食品の「放射性物質に対する規制値」は、設定されていますが、流通している植物などに対する規制値はありません。
「肥料・土壌改良資材・培土中に含まれる放射性物質の規制値」が、400ベクレル/kgまでと決められているだけです。
問題提起をしてくれた「きれいな緑地を守る会・浜松」の代表・山田さんは、「原発から遠く離れていても、汚染された芝が近くの公園に運び込まれている可能性は否定できない。全国の有志に呼びかけ、近所の公園に敷かれている芝を計測するムーヴメントを起こしたい」と話してくれました。
子どもの健康を守り、かつむやみに放射能汚染を広げないためにも、原因究明と対策が急がれます。
ママレボ編集長@和田秀子
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これに関する記事は、朝日新聞その他で報じられ、「きれいな緑地を守る会・浜松」のメンバーは記者会見を開かれたそうです。
詳細は、「きれいな緑地を守る会・浜松」のブログをご覧ください。
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